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じゅう ぷらす ろく。

 






温かな感触がゆっくりと背中を撫でて行きます。


優しく、包み込むような温かさはとても心地が良いのです。


もっと眠っていたい気持ちを押して目を開けますと、目の前には布が広がっていました。


潮の匂いのするそれから顔を離せば見慣れた黄金色の瞳が私を見下ろしています。




「おはようございます、ヴェルノさん。」


「やっと起きたか。もう着くぞ。」




着く、とは一体どこなのでしょうか?


…あ、海賊達の孤島という場所なのでしょうか?


ヴェルノさんは甲板にいたようで風がぶわりと吹き付けてきます。


真っ青な空にヴェルノさんの青い髪が不思議と映えて見えて、思わず見惚れてしまいかけたのは内緒にしておきましょう。


風で飛ばされないよう服を掴ませていただきますと大きな手がしっかり支えてくださいます。


温か過ぎてまた眠ってしまいそうになる私を見てニヤリと笑い、頬を抓られてしまいました。




「もう着くって言ってんだろ。寝るな。」


「ヴェルノさんが温かすぎるのがいけないのですよ。」


「おーい、イチャつくんなら部屋でやれよ。」




ルイスさんが苦笑交じりにそう言いながらヴェルノさんの隣りに並びます。


こうして揃っているところを見ますと、本当にご兄弟なのだなぁと思えるくらいよく似ていらっしゃいます。


横から伸びてきたルイスさんの手がワシワシと頭を撫でてきます。痛くはないですが視界がブレるのでもう少しお手柔らかにお願いしたいのです。


そこでふと船が向かっている先に島のようなものが見えました。


ルイスさんの手を両手でガードしながらヴェルノさんを見上げます。




「あれが海賊達の孤島なのですか?」


「そうだ。船から下りたら、俺から離れんじゃねェぞ。」


「?」


「お前みたいなのは捕まって売り飛ばされんのがオチだ。」




そんなに危険な場所なのですか。


思わず手から力が抜けてしまい、ルイスさんの手が顔に落ちてきてしまいました。


もしも漫画のように背景が描けるのでしたらきっと私の後ろには雷が落ちていることと思います。


もちろん、ヴェルノさんを信用していない訳ではありません。


ですが前置きもなくそのように危険な場所へ行くとなると心の準備といいますか、色々と準備をせねばならないのです。


ルイスさんからもらった短剣はしっかり服の中に隠してありますので何かあった際にはそれで対処することとしましょう。


それでも出来る限りヴェルノさんから離れないようにするのが一番なのですね。


段々と近付いて来る島を見ながら、一応服を握らせてもらう約束もしておきました。


いつもと違い今日はきちんと自分の足で歩くようにとアイヴィーさんから言われます。…普段から歩きたいのですが、皆さんがすぐに抱っこしてしまうのが良くないのですよ。


なんて心の中で言ってみます。


このドキドキが治まらなくてヌイグルミの身の上なのに口から心臓が飛び出てくるのではと冷や冷やしてしまいます。


島だと思っていた海賊達の孤島はかなり近くまで行って漸くそれが船なのだと気付きました。


いくつもの大きな船を繋ぎ合わせて作られていまして、その周りにまた様々な旗を掲げた船がくっついています。




「髑髏ばかり…もしかして全部海賊船なのですか?」


「そうよぉ。よく見てるのね真白ちゃん!偉いわぁ。」




よしよしとアイヴィーさんが頭を撫でてくださいます。


それでも胸のドキドキは治まりません。緊張と興奮で少々おかしくなってしまいそうなのです。




「ヴェルノさん、ヴェルノさんっ。ドキドキしてますっ。このまま上陸したら緊張のあまり気絶してしまうかもしれませんっ。」




少しでもこの気持ちをお伝えしたくてそう言ったのですが何故だかヴェルノさんは笑ってらっしゃいます。


オマケに手の平を胸元に当てて、わざわざ心音を確かめようとするのです。


その手を叩きましたら「心音なんか感じねェな。」と悪戯っ子のように意地の悪い笑みを浮べました。


けれど大きな手が背を軽く叩いてくださりました。


そんな些細なことで私の心臓のうるささは少しだけ落ち着いてしまうのですからヴェルノさんはすごいのです。


そろそろ島に着くからと床に下ろされましたがヴェルノさんの服のヒラヒラとした裾部分を掴ませてもらいます。


まだ着いてないと笑っていましたが私の心の安寧のためにはもう必要なのですよ。


ガタンと船が揺れたかと思うと船員の方々が数人がかりで錨を下ろします。それから何やら縄を投げて、下にいる方が傍にあった杭か何かにしっかり縄を縛り付けます。


そうして縄梯子が下ろされますとアイヴィーさんが素早く船から下りました。


ヴェルノさんに抱えてもらおうかとも思いましたが何事も挑戦してみなければ分かりませんので、私も頑張って縄梯子を降りて行きます。


下では先に下りたヴェルノさんとアイヴィーさんがいて、上を見ますとルイスさんや船員の方々が心配そうに見下ろしています。


意気込んで縄梯子に手をかけましたが、想像よりも高く、とても滑るので怖いのです。


そっと足を伸ばしましたが下の梯子がずれて足が滑ってしまいました。


あ、落ちますね。


腕だけで体重を支えられるほど筋肉もないので私の柔らかな体が梯子から落ちます。


さすがにこの高さからでは痛いのでは、と思いましたが下にいらっしゃいましたヴェルノさんがキャッチしてくださいました。


まさに危機一髪なのです。




「ありがとうございます。ナイスタイミングでさすがなのです。」


「お前にもう梯子は使わせねェ。」


「そうですね。その方がいいと私も思いました。」




地面に下ろしてもらい、乱れたスカートを整えていますと下りてきたルイスさんが呆れた顔で私を見下ろします。


目が離せないとおっしゃっていました。それは危なっかしいと言いたいのでしょうか?


確かに先ほどのことは危険でしたが常日頃から危険に突っ込んで行く訳ではないのですよ。


結局船から下りたのは幹部のヴェルノさん、アイヴィーさん、幹部の方々、ルイスさん…それから買出し組の方々だけでした。


そういえばお野菜などは新鮮でしたが一体どうやって鮮度を保っていらしたのでしょう?


後ほどヴェルノさんに聞いてみようと思います。





 

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