彼女の話が、衝撃で頭に入ってこない。
「という事なのよ。ヤバイジャン様ってひどいと思わない?」
目の前の友人、ハイカロリーナが何か言っているのだけども。
先程の光景があまりに衝撃的過ぎて内容が脳を素通りしていく。
わたしマキコマレーナは、友人のハイカロリーナより相談される。
「婚約者のヤバイジャンと会話がかみ合わずどうにかしたい」と。
腰を落ち着けてお話しましょ、とハイカロリーナの屋敷に呼ばれて。
現在お茶を頂きながら、相談内容を聞いている最中である。
席に着くと、側仕えがティーカップひとつとティーポット、
ミルクポーションと砂糖壺をお菓子の皿と一緒に運んできた。
この子は飲まないの?とちょっとした疑問を感じていたのだけど。
わたしの目の前にティーカップが置かれ、お茶が注がれる。
「お砂糖はおいくつ?」
とハイカロリーナが聞いてきたので、ひとつでいいわと答えた。
ハイカロリーナが自ら角砂糖をつまんでお茶へと入れる。
その後。
残りのお茶が砂糖壺へと注がれた。注いだ側仕えは表情も変えず。
一体何を?と驚いていると、ハイカロリーナは砂糖壺を手に取る。
ミルクポーションから砂糖壺へ注ぎ入れ、そのまま口にした。
えっ?
ハイカロリーナはお茶入りの砂糖を飲んでいる。不自然さもなく。
「早速なんだけど」
彼女は婚約者の事を話し始めた。
◆
「という事なのよ。ヤバイジャン様ってひどいと思わない?」
そして冒頭に戻る。話は半分も脳に残らなかったけど。
要は彼女が「甘いものを摂り過ぎではないか?」と忠告されて、
「そんな事ありませんわ」と言い争いになってしまったらしい。
ふと気づけばお菓子の皿はからっぽになっていた。
わたしは一口も食べてない。というかお茶も飲むのを忘れていた。
うん。多分婚約者さんは至極真っ当な事を言っていると思う。
そう口を開こうとしたら。
「あら、お菓子が足りなかったみたいね。お腹すいてたの?
もうっ、言ってくれればいいのに。
お菓子とお茶のお代わりをお願いね」
ハイカロリーナが指示し、側仕えは頭を下げて取りに向かう。
いやお菓子は貴女が全部食べ尽くしてしまっていてよ?
貴女はわたしが食べたみたいにクスクス笑ってるけども。
指摘しようか迷っているとお代わりがもうやって来た。
これがこの家の日常茶飯事なのかしら。
お代わりって。お菓子はともかく、また新たな砂糖壺が。
そして砂糖壺へとお茶が注がれていく。ごく自然に。
ハイカロリーナは砂糖壺二杯目を口にしている。
普段、学園で食事する時はわたしや他の友人と同じ食事なのに。
自宅ではこうなの?そりゃ婚約者の方も止めるわよ。
いや、側仕えの貴女もお嬢様のこの暴走を止めなさいよ。
友人としては止めるようどう切り出したものだろうか。
きっと止まらないんだろうな。
大学時代、英語の客員講師の方が里帰りのお土産くれたんですが、
食感が「食べられる歯磨き粉」のキャンディーだったんですわ。
ミントとおそらく糖分が材料の大半を占めてるんじゃなかろうかと。
あちらの方の味覚はどうなっているのか不安になりました。




