【カルテ1-③】新田まゆ(17) 足の骨折
看護師に押されてまゆの乗った車椅子は待合室へとたどり着いた。
病院とはいえ、健康な高校生が車椅子に乗せられる姿は珍しいのだろうか。たくさんの視線が彼女に向けられている。
(恥ずかしいよう)
そう思うのはまゆだけではないだろう。特に年頃の女の子にとっては非常につらいものがある。
「ではこちらでお待ちくださいね。」
そう言い残し、看護師は去っていった。
1人になったまゆの元に小さな男の子が駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん。車椅子だぁ!どしたの?あははは」
無邪気な子供の発言でも、それに耐えれる程の余裕は今の彼女にはなかった。
彼女の目から涙が溢れる。そして叫んだ。
「やめてよ!あっちに行って!あんたに構ってられないの!」
待合室中の視線がまゆに集められた事は言うまでもない。
静かな室内に彼女のすすり泣く声だけがいつまでも響き渡った。
その後彼女は松葉杖の使い方、日常生活を送る上での注意点などを教えてもらい、帰路についた。
まゆの学校は進学校でありながらもスポーツに熱心でいわゆる強豪校と呼ばれるものである。
全校生徒の3分の1は寮生活を送っており、まゆもその1人だ。
夏休み中は多くの生徒が実家に帰る中、まゆのバスケ部は週6日、朝から晩まで練習に明け暮れていた。
まゆが運び込まれた病院と寮はバスで30分程離れており、これからは通院の為に週2回は往復する事となる。
病院からは車椅子の貸し出しを提案されたが、車椅子=大怪我と考える彼女は必死になって断った。
バスはそれ程混んではいない。優先席に座り、ふと窓の外を眺めると、先程の男の子が母親と病院から出てくるところだった。
誰かのお見舞いだったのかな?大声を上げてしまって申し訳ないな....そんな事を考えていると、バスは発車し親子の姿もすぐに見えなくなった。
「○○高校前〜」
バスを降りたまゆの元に、まどかを始めバスケ部の部員が集まってきた。
みんなまゆを心配してバス停まで迎えに来てくれたのだ。
「まゆ〜心配したんだよ!話聞いた......県大会の事.....」まどかが残念そうな表情を浮かべる。
「やっちった〜全治4ヶ月の骨折で〜す。」
周りを心配させまいと気丈に振る舞う彼女に、部員らにも笑顔が戻っていく。
「元気そうでよかっよ!」
「少しばかりの休憩だと思ってさ。ゆっくりしなよ〜!」
部員らの励ましを嬉しく感じながら、彼女は皆と寮に帰っていった。




