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 純粋で賢い子どもの、健気な眼差し。


 半面の仮面を全面のものにつけかえたい心地で、ヒューは黙ったままミルクティーを含む。


「お兄さん」


 カップを下げて自由になった視界には、少女の笑顔がある。





「お姉ちゃんを助けてくれてありがとう。これからも、守ってね」


「……」


 うつむいて、しばらくヘーゼルナッツ風味の紅茶を転がし。





「……僕にとって、出会いのときに誰かにかけられる挨拶というのは、『有名な作曲家イシャーウッド氏の息子さんですよね』とか、『半面のピアニストで有名な方』とかだったんだ」





「ん?」


 いきなりなんの話かと、チュチュがりすのような目を開く。





「だがね。父の劇団のオーケストラでピアニストをしているとき、そこの歌姫――きみのお姉さんと出会ったときだけは違った。ティナが僕に最初にかけた言葉は、『楽譜にカバーをかけられるんですね』だったんだ」





「……」





 少女の真摯な想いに引きずられ。


 この身から出てきたのは、他愛もない、昔語り。


「僕についている肩書や名前ではなく、僕自身に初めてスポットライトをあててもらった気がした」

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