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 小雨がぱらぱらと振ったりやんだりを繰り返す七月初旬のロンドン・ピカデリーサーカス。


 いつにない緊迫した空気が『音楽魔法具店』に漂っていた。


 ティナは雑誌『ミューズ』かじりついている。


 その前で執務机に肘をつき、黙り込むヒュー。





 記事にキャスが昨日出場したアポロニア国際音楽コンクールの本選結果が記されているのだ。


 キャスは自身のスランプをミュージカリー・カップを言い訳にするまいとカップをヒューたちに預けて必死で努力を続けた。


 息を呑んで待つヒューに、ティナが文面を告げる。





「『フルート部門、一位はミレリー・キャンベル。有力候補ケイト・ダーエは当日体調を崩し棄権、あえなく一位を譲った』 ……!?」





 執務机のヒューの表情が、凍りついた。


「おかしい。どうして? 前日に応援メッセージを送ったときは、キャス、ぜったいに優勝するって……」


 何気なく視界に入ってきたそのすぐ下の記事は、前の記事の衝撃の余韻をティナに許さなかった。





「これは……」


「どうしたんだい?」


 努めて冷静に、ティナはその記事を読み上げる。





「『電撃発表。人気ヴァイオリニストクラレンス・ケアードがヴァイオリンのCD発売。フランスパリ発ヨーロッパツアーも実施。ちょうどこの雑誌の発行日くらいに、みなさんを驚かせることができると思います、と意味深な発言』」


 椅子を滑らせ、ヒューが立ち上がる。


「まずいぞ」


「え?」


「くそ。予測は立てていたが、まさかこんなに大胆なタイミングを選ぶとは」


 コートを羽織るのももどかしく、走り出しながらヒューはティナに告げた。


「ティナ、急ごう。キングスクロス駅だ!」

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