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「キャスにミュージカリー・カップを送りつけた犯人がわかったわ、ヒュー!」
青空に向かい翼を広げる天使の像の下、高らかにティナは宣言した。
シティーホールかた徒歩五分ほど歩いたトラファルガー広場で。ワゴンのスコッチエッグをつまみながら、休憩中である。
エッグの包みをのんびりと開きながら、ヒューは応じる。
「優雅なランチタイムに大声を響かすなんて無粋だなぁ」
姿を現したまん丸いミンチカツをまずは視覚的に堪能しながら、彼は促した。
「で、きみの思う犯人は?」
愛嬌のあるファストフードを顔に掲げてもち、ティナは宣言する。
「ジャスパー・ブレイディ。ブリリアント楽団のトランペット奏者よ」
「――ふむ」
さきほど、キャスのフルートケースの鍵を開けてやっていた、ジャスパー。
「主旋律を担当することの多いトランペット奏者は華やかな社交家が多いと言われているけれど、彼はまったく逆のタイプね」
「そのようだね。彼はあまり愛想がよさそうなタイプではなかった」
我が意を得たりとばかりに、ティナは大きく頷く。
「とげとげしかったでしょ? 特に、キャスに対して。もう、みててムカムカしてきちゃったわ」
哀れなスコッチエッグを握りつぶさんばかりに、ティナは憤慨する。
一方でヒューは卵のとろりとした食感を堪能しているようだ。




