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 キャスが赤いブローチを手にとった瞬間――ヒューは目を見開いた。


 それはまっぷたつに割れたのだ。


 ブローチはぱかりと二つに開くようになっている造りのようだ。




 そこから、小さな音がする。




 曲のメロディーではない。鉄琴のような愛らしい音でただ、一音だけ。




 橙、黄と続けてキャスがブローチを開けていくと、どれも一音だけの音を奏でるのだった。




 音の階名を送られてきた順に並べると、





 ド ソ♯ レ ラ ラ ミ





「並べても有名な曲のメロディーになるわけじゃない」


「うん。ただの音の羅列みたいだよね」




 分析するティナとチュチュに、キャスは頷く。




「えぇ。とくに意味はない、お飾りのようなものだと思うのだけど。楽譜上の音を成しているってことから、気になって」




「なるほど」


 白い手袋に包まれた手を顎に当て、しばらくじっと考えこむと、ヒューは口を開いた。




「ダーエ嬢。このところなにか音楽以外で、困っていることはないかな」


「えっ?」




 一瞬驚きに目を瞠ったあと、キャスはうつむきもごもごと口にする。




「それは……。まぁ、ないこともないけど。この一件とは関係のないことだし……」




 込み入った話を切り出すのを躊躇する彼女のティーカップにミルクを注ぎながら、ティナがゆったりと囁く。




「ミュージカリー・カップにまつわる謎は、その人の抱えている問題と関わっていることが多いの。安心して話して。ここで聴いたことは、他言しないと誓えるから」


 ティナの視線を受けとめ、一つ、頷くと、キャスは語り出した。




「……同じ楽団で、つきあっている人がいるんだけど」




 とたんに、チュチュの丸い頬がぱっと赤くなり、ティナの瞳のライムグリーンがきらめいた。



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