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㉛
「ティナ。ほんとうに、ごめんなさい。こんなことになるとは、思わなかったの」
理性的な女性のその目尻には光るものがある。
「信じてもらえなくて当然だと思ってる。けど――」
真面目すぎる彼女が自ら拭えぬその粒を、ティナは拭った。
「お姉ちゃんにだって、涙を拭ってもらう人は必要よ?」
どこかおどけたように首を傾げ、ティナは言う。
「エイプリルちゃんへのあなたの気持ち。信念すら破る想い。見せてもらったわ。――だから信じる」
「ティナ……」
驚きに瞠られたその瞳と、唇がわなわなと震え出し――。
「エイプリルちゃんがよくなること、祈ってるわ」
貞淑そのものの姉はついに泣き崩れた。