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 ホテルで出会い、親しくなったジャクリーンとエイプリル姉妹のこと。


 昼間妹たちがボート遊びを楽しんだこと。


 チュチュとエイプリルが見たという湖を滑る火の玉。


 不審な道具が閉じ込められている場所に心当たりのある姉のジャクリーンが協力を申し出てくれたこと。




「慎重な女性だから、詳しくは語らなかったけど。もしかして、ミュージカリー・カップを高額で買わされそうになったり、最悪の場合現場を目撃したことで命を狙われたり、なにか被害に遭っているのかもしれない。今夜その怪しい場所に案内してくれる約束になっているの。きっと行って確かめなくては」




『――ふむ』




 電話越しのヒューの声が、思慮深げな色を帯びる。




『ボートに乗る前後、ジャクリーンというその女性に変わった点はなかったかい?』


「――?」




 妙なことを訊く。




「別にこれといっては」


『よく思い出してもらえないかな』




 そう言われて思い当たることといえば、強いていえば。




 今日妹たちをボートに乗せる際、彼女は一晩で多くのことを調べてきたように見えた。




 防水パックを準備したり、どっさり人形を乗せようとするエイプリルを転覆の原因になるからと止めたり……。


 白波が立ってきたら早めに帰航したほうがいいという知識も仕入れていて。




 前日に妹が滝に流されそうになったことを考えれば極めて自然なことだろう。


 綿密で、妹想いなのだと感心したものだが。




『なるほど。――そうか。そういうことか』




 電話の向こうでヒューは一人勝手に納得しているが、いったいなにがななるほどなのか、ティナには皆目わからない。




「それがどうかしたの?」




 だから素直に疑問を口にすると、返ってきたのはどこか未熟な幼子を愛おしむような声だった。




『ずいぶん健闘したことは認めるが、きみの推理は、はっきり言えばなっちゃない』




 ぴしり、と、スマホを握る手に力が入るのがわかる。




『ティナ。彼女について、その場所へ行ってはいけない』

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