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『――グッド・イブニング。ティナ。……よい晩だと言ったが、こちらはあいにくの霧雨だ』




「そう。湖水地方の今宵は快晴よ。そちらの首尾はどう?」




『いまいちかなぁ。こんな寂しい夜には、きみの不在がなおのこと想われるよ』




 ホテルの一階の部屋。スマホを片手に持ったティナは、壁際にかかったグラスミア湖の写真をなんとはなしに見上げる。


 ベッドでは遊び疲れ、夕食のビュッフェをたらふくたいらげたチュチュがすやすやと寝息を立てている。




「わたしが訊いたのは、仕事のことよ。あなたの心理状態のことではなくて」




 どうしても回収したいミュージカリー・カップの所在を掴みかけていると、ヒューは言っていた。




『……つれないなぁ』




 あんな飄々とした男だが、ティナに出張を任せてまで追いにいくあたり、どうもその一点にだけはこだわりがあるらしいと踏んでいる。




『少し手間取りそうだ。カップがあるというエディンバラまでたどり着いたんだが、一足違いでずいぶん遠方まで売り飛ばされてしまったようでね』




「そう……」




 相当貴重な品なのか。





『それで、きみのほうは?』




「それで、じゃないわ。よくもかわいい妹に一人旅なんかさせてくれたわね」




『悪く思わないでくれ。かわいらしい護衛を差し向けたのもひとえに、きみの身を心配するがゆえ。それに』




 電話越しの声が深みを増す。


 ほんとうにふざけていると思う。が。




『あの手の社会性に優れた道連れの存在は、現地の人に聞き込みをするのには、効果的だったと思うけれど?』




「――っ」




 図星をついているところもあるので、ティナはこのへんで小言を切り上げ、報告に入った。

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