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 仕事の全貌を明かすことはできない。


 でも、そう、少しならば。


 ほんの一部ならば。




 慎重に、ティナは口を開いた。




「……わたしはここで、あることを調査しているの」




 かすかに顎を引くと、それまでのどかに見えていた湖が、その下になにか底知れぬものを秘めている魔境のように見える。




「このホテルには、ある道具を閉じ込めている場所があるかもしれなくて。それは人々にとって、かけがえのないものを奪って閉じ込める道具なの」




「それを探し出すのが、わたしの仕事」





「……」




 じっと耳を傾けていたジャクリーンは、ティナの言葉を反芻するように呟く。




「禁忌の神器を隠し、閉じ込めておく場所――」




 自身のそれよりはるかにぴったりくる表現に、閃光のようななにかを感じて、ティナが面を上げる。




「ジャクリーン?」


 木陰から立ち上がり、湖のほうへ数歩歩んで立ち止まると、ジャクリーンは告げた。




「一か所だけ、気になる場所を知っているの。もしかしたら、力になれるかも――」


「えっ」


 思わずつんのめりそうになりながら、ティナも続いて立ち上がる。




「それ、ほんとうなの?」




 頷くと、ジャクリーンはボートの妹たちに呼びかける。


「白波が目立ってきたわ。二人とも、早めに帰航しなさい!」




 相変わらず些細なことにお腹を抱えて笑っていた妹たちが返事をする声が、深い碧の上を通り抜けた。

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