幕間 ヒューとチュチュのTea Break ~音楽魔法具店はお金のため?~ ①
昼下がりの『音楽魔法具店』。
中央の応接スペースには、三段重ねのアフタヌーンティーセットが女王のごとく構え、アールグレイのティーカップが誇らしげに湯気を立てている。
「わー。おいしそうなレモンケーキ。クッキーにフロランタンも」
「大事なお客様に差し出すものとしては当然さ」
第一所感としては素直な感嘆を著したチュチュは、早くもじとっと目をすがめた。
「っていってもぜんぶ、お姉ちゃんが退勤前に用意してったんでしょ」
「ティナ……なぜにネタバラシを……」
「でもま、お招きいただきありがとうございます」
緩急緩のソナタ形式のような反応のあと、リズムよくぺこりと頭を下げ、チュチュは手をあわせた。
「いっただっきまーす!」
一口目にフロランタンを手にとると、もぐもぐとリスのようにかじりだす。
「でも真面目な話、このさき男一人で生きてくこと考えるとさぁ、お兄さんも料理くらいできるようにならないとあとあとまずいよ?」
アールグレイのほのかな香りを楽しみながら、ヒューが答える。
「残念ながら、この才能は呪いのミュージカリー・カップから人々を解放することに集約されてしまっていてね」
「定職にもつかずにわけのわからない鑑定屋もどき。そんな怪しい人のところにお嫁にきてくれる人なんて皆無なんだから」
「……」
涙とともにレモンを絞ったアールグレイを飲み干すヒュー。
「僕のことはいいから、チュチュくんのことを話そうじゃないか。カレシのレインくんとはその後どうだい?」
ごっほごっほと、同じくティーカップに口をつけていたチュチュが咳込む。