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 ケンジントン・ガーデンズとハイド・パークの間は南北に長いサーペンタイン池が横断している。


 ヒューがティナを誘ったのはイタリアン・ガーデンズから池を南下した、有名なピーターパン像があるあたりだった。




「こらぁ! スコットっ!」




 ピーターパン少年の視線を柵越しに受ける道。


 男性が誰かを叱りつける声が聞こえる。




「まぁたやらかしやがったな。人様のもんを盗むたぁどういう了見だっ! オレはお前をそんなふうに育てた覚えはねえっ」




 昼下がりのうららかな公園で、なにやら複雑な家庭の事情に触れてしまったのか。


 否。




 キーっと、答えたのは鳥の声だった。




 


 真っ白い羽。まん丸い水色の目は愛嬌があるが、大きな黄色いくちばしは鋭く、獲物をひとのみにできそうだ。




 数分前自分を襲った犯人を悟り、ティナはぶるると悪寒に身を震わせた。


「きみ、気持ちはわかるが、それはいささか理不尽じゃないかい?」




 ペリカンを叱っているその彼に、苦笑ぎみにヒューが話しかけた。




 男性は、黒い髪を編んでいて、タトゥーをしている。シャツにむき出しの腕の筋肉がもりあがっていて、耳にはピアス。派手はユニオンジャックが描かれた背中にジーンズ。


 イケイケの外見だ。




「あ、ああすまねぇ。わかっちゃいるんだがな」




 イケイケの頭をかきながら、どこか困ったように言う。




「でもここでしつけとかねーと、あとあとこいつのためになんねぇから」




 叱ったあとのフォローなのか、くちばしを撫でる男性に、ペリカンは威勢のいい鳴き声を上げる。




 思わず身を竦めたティナをかばいながら、どこかおかしそうにヒューが微笑んだ。




「人のものを盗むのが仕事。だがプライベートでは盗んではならない。ペリカンくんにはなかなか難儀な理論だ」

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