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 感謝ついでにふらりと立ち寄ったらしい青年はやはり、さわやかに店をあとにした。


 軽やかな足取りを見送ったヒューはほう、と顎に白い手袋の指先をあてる。


「今の青年のようなケースは、よくあるのかな」


 常連客の役に立てた歓びから我に返ったジュリアはどこか戸惑ったように相槌を打つ。


「え、えぇ、そうね。商売柄、お客様は音楽関係者が多いから」


 言いながら、折り曲げた指を何本か、頬にあてがう。


「今みたいなはっきりしたケースははじめてだけど、商品を買ってから、調子がいいって話はよく聞くかも……」


 思い返すようにそう言葉を落としたあと、若き女性店主はきゅっと口元を結んだ。


「でも、うちの商品は魔法具なんて怪しいものじゃないわ。ぜったいよ」


 仕事に対する誇りが見え隠れするその姿に、ヒューがかすかな笑みを零した。


「だろうね。それだけ、質のいい品を提供しているということだろう」


 細められた菫色の瞳はさりげなく店内を見渡す。


 その視線が、ある場所で止まった。




 チューリップを刻印したレースがかかっているカウンター奥に段ボールの箱が一つ。


 あえて陳列棚からよけられている品々が三つほど。


 装飾のついた小さな小箱。どれもオルゴールのようだ。




「あちらの品々は? 破損品には見えないが」




 差し向けるとあぁ、とジュリアが苦笑した。




「ちょっと困ったことが起きてね。お昼休憩のときに窓を閉め忘れた日」




 口元に手をあて、内緒話のように囁く。





「盗難事件」

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