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「ええ!? そうだったの? オーケストラとか? 劇場とか?」


 首元のネクタイを直しつつ、彼はびしりと言った。


「あぁ。パブ『ビール劇場』や、カフェ『パフェ・パフェ・シンフォニー』とかね」


「……おねえちゃん。もっと甲斐性ある人とつきあったほうがよかったんじゃない?」


 がっくりと鍵盤の前にうな垂れるヒューに、思わぬ助け船が到来した。


「……あのさ」


それまで黙っていたレインが、話の風向きを変えたのだ。


「そうやって文句つけてるチュチュは。……どういうやつがいいんだよ」


「へ?」


 打って変わって間抜けに目を見張るチュチュに、一同の注目が集まる。


「うーん。考えたことないや。なんでそんなこと訊くの?」


「えっ」


 そう言ったきり黙り込み、顔を赤らめるレインに、ヒューは笑いを噛み殺した。


「うーん、青春だね。僕らも負けてはいられないなぁ」


 同じく笑いをこらえるティナが、チュチュの背中を叩く。


「さぁ、そろそろ音楽学校の時間でしょ。行ってらっしゃい」


「僕らも店の支度にかかろうか、ティナ」


「えぇ」




 そしてティナは頷き、給湯室に向かう。




 歌姫を降板してから出会った『音楽魔法具店』。


 ミュージカリー・カップの鑑定と回収。


 それが店の業務だけれど。


 ここでの仕事を通じて、多くの人たちに出会ってから。


 厳しいプロの道に疲れた旅路で、ときに重すぎる夢という荷物を持ち、大都会ロンドンを旅する人々が、止まり木のように紅茶を飲んでいく。


 そんな店になれたらいいと、今は思う。




 同じようにたやすくはない道を歩んだ自分と。


 そんな自分を認め包んでくれる彼となら、できる気がする。






 そんなふうに思いながら、ティナは、ヒューに差し伸べられた手をとった。




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