130/138
㉛
自分があの鋭い秒針で貫かれたのかと、本気でティナは思った。
つんざくような激しい苦痛が、全身を串刺しにしている。
否。――わたしは今、舞台の外で、チュチュちゃんに抱き留められている。
呆然とその足で、チュチュの腕を離れ、ティナは再び舞台に上がる。
まっぷたつに折れた秒針。
その下に倒れているのは。
「……やれやれ。やはり、直撃は、避けられなかったか……」
いつだって安らぎを与えてくれたおどけた口調が、今は全身を凍りつかせる。
頭から血を流したヒューは、おどけて笑うと、ティナにあるものを差し出した。
「これをお返しするよ」
少しだけすまなそうな、けれど完璧な笑顔で。
彼の白い手袋から垂れ下がっているのは、涙型のエメラルド。
たしかに、一年前、ノアがティナの歌声を閉じ込めた、ネックレスだ。
「なぜ。……なぜあなたが」