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「ただの風邪とかじゃないのかい?」

 ヒューの確認に、ゆっくりとチュチュは首をふる。

 担任の先生にレインの欠席の原因を尋ねても、詳しくは教えてもらえなかったのだという。

 なんでも、詳細は学校のみんなに伏せると、本人からかたく約束させられているのだと、個人を尊重する性質のその教師は言ったのだそうだ。


「ね? そんなのよけい怪しくない?」


 困惑に眉根を寄せ、チュチュは必死に訴える。


「きっとレイン、このバロタン・ボックスに才能を吸い取られて、学校に来られなくなっちゃったんだ。これを買ったあたしに気を遣って黙ってるんだと思う!」


 すべてを飲み下すように頷き、ヒューはテーブルの上のバロタン・ボックスをそっと覆う。


「わかった。このバロタン・ボックスはしばらくあずかろう。さっそく、究明に乗り出させてもらうよ、小さな踊り子さん」


 件の品を保管しつつ、菫色の瞳がひたと、依頼人に向けられる。

 それからもう一つ、とヒューは言葉を継ぐ。


「第一に、ミュージカリー・カップに関して悪いのはそれを創り出した人間と、悪用しようとする輩。それがすべてだ。これがもし本物だとして、きみの咎ではない。第二に、奪われた才能は必ず僕が取り戻す」


 決然とそう響かせたあと、ふわりと小さな依頼人の頭に手を乗せ、その右の半面は笑った。


「だからそんなふうに、一人きりで自分を責め苛むのはもうやめなさい」


 幼いながらもう人前で泣く年齢ではないと自覚しているのだろう。

 それでも、しゃっくりとともに、チュチュの肩は上下する。


「うん。うん。……ありがとう」


 頭をティナに撫でられながら、そう返事したものの、なおもチュチュはすまなそうに顔を上げる。


「あの。……あたし、お金、そんなに持ってなくて」



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