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 婚約パーティー会場はパリの劇場ガルニエをも思わせる華やかさだった。


 なるほど舞台までしつらえられている。


 その天井には、古今東西の音楽の神が描かれていて、それぞれが中心部に向けて手を伸ばしている。


 中心には、ガラスと真珠が三重の輪を描くシャンデリアが燦然と君臨している。


 そしてなにより目を弾くのが、シャンデリアの真下に異を構える、壮大な天文時計だ。




 星座盤を模った巨大な時計の中心に、紅いドレスを着た人形が固定されている。


 その下の棚はオルゴールになっており、曲を奏でるとき、人形が踊るのだろうか。





 舞台の下は宴会場になっていて、テーブルにきらびやかな料理とそれに舌つづみをうつ人々がひしめいている。




 舞台上手のマイクの前に立ち、オリーブはすらすらと話し出す。




「みな様、ここで一つ、余興がございます――元歌姫の声を聴きたくありません?」




 愛嬌たっぷりに小首を傾げ、会場に問いかければ、




「尊敬する先輩のティナ・チェルシー嬢が、わたしたちの祝福のため歌ってくださるそうです」




 割れんばかりの拍手が巻き起こり、袖へとはけるさなか、彼女のマゼンダの口元がほくそえんだ。




 過去の伝説の歌姫と絶えず比較され、酷評されてきた恨みが黒煙のように美しい胸に立ち込める。


 ――恥をかかせてやる。そのうえで死んでもらうわ。




 その歌姫と、舞台を変わる際に、ごく小さく、彼女は呟く。




「ごめんなさいね。古い器はいらないの」

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