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㉗
「……え」
「お詫びに新しいドレスをプレゼントするから、それで。どうかしら?」
「ごめんなさい! 今おねえちゃんはプライベートなので!」
両手を広げて立ちふさがるチュチュをあっけなくすり抜け、オリーブが甘やかに言う。
無邪気にかつ、妖艶に。
「堅いこと言わないで。ね、行きましょう。あなたにきっと似合う衣装があるの――」
「いえ、でも、わたしは――」
例えるなら、それまで弾むグロッケンのようだった声音は。
「歌えないなんて言わないわよね?」
がらりと、パイプオルガンの重圧を帯びる。
「かつては一世を風靡したミュージカル女優さんが。まさかそんなみじめなこと」
くっと唇を噛み締めたティナに向けられたのは、一瞬前の邪気のない笑み。
「さ、行きましょ」
連れ出される傍ら、ちらりと見ると、チュチュが悔しさをいっぱいに湛えた瞳で、こちらを見つめていた。