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 テムズ川のほとり、ビック・ベンやタワーブリッジが見渡せる界隈で、ヒューはふと足を止めた。


 狭い空間にいると息が詰まりそうで、出てきてはみたが。




 ティナとこの場所を見たのはもう三日前――レストランでは美しく見えた夜景。


 光の密度が濃すぎて、窒息しそうな心地になる。




 小さく嘆息し、ヒューは胸元から帯状の紙を取り出す。




 握手の際、父から盗んだもの。 


 ロンドンにあるオルゴール専門店『ノクターン』で売られている、オルゴールの曲を奏でるシートである。


 シートに穴を空けることで、音符を刻んでいくそれは今はきれいな白紙。


 一曲分――それも長い曲が作曲できる。




 契約のためにやってきたノアがその身に持っていたもの。


 作曲家としての単なる仕事道具には思えなかった。




 心境を落ち着け考えたかったのだが、今夜はどうも頭が回りそうにない。


 再び光の園へと視線を投じ――ヒューは息を呑んだ。




 数歩先で、テムズ川にかかる桟橋にもたれる姿――思いがけないものに出会った。




 シニヨンにまとめた蜂蜜色の髪。


 仕事用のモスグレイのワンピースを着て。




 考える前に、その名が口をついて出た。




「――ティナ」

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