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⑮
高らかな笑いが、部屋を駆け巡る。
勝利の笑い。
「すてきだわ。――じゃぁ」
劇音楽界の現女王は、ヒューの手をとった。
「パパと仲直りね。おめでとう。あなたは一生、イシャーウッド劇団のピアノ弾きとしてミュージカリー・カップを生産しつづけるの。そしてね」
圧倒的な美貌。
興奮にわきたつ彼女は艶やかである。
だがどこかぼんやりとヒューは思う。
高圧的に過ぎて、美しくはない。
「あたしと結婚しましょ、ヒュー」
その胸元のエメラルドが一縷揺れ、動かなくなった。