表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/138

 店の奥、一面の黄金の枠にしきつめられたシャンパン。


 白いテーブルクロス。青と黄色の薔薇の花が飾られたテーブル。


 ガラス張りの外にはビック・ベンやタワーブリッジ、そして、壮大なウエストミンスター寺院。


 テムズ川沿いの夜景が楽しめる高級レストラン『ラグジュリアス』の特等席で、ヒューはグラスを掲げた。


 乾杯、と一言、そのシャンパンは宙を滑る。





「……そろそろ機嫌を治してくれないかい?」


 正面にはクリーム色のドレスで着飾ったティナがむすっと夜景の方角に顔を背けている。


 彼女とのディナー権を寛大にもチュチュが譲ってくれたことを申し出てからずっとである。




「こんな豪華なレストランでディナーだよ。ほら、ごらん。宝石をちりばめた夜景の都市に暮らせる幸せを噛み締めようじゃないか」


「そんな気分じゃないの。どちらかというと、怒りに任せてあなたを粉々に嚙み砕きたい気分」


「……ティナ」





 鳴らすあてのないグラスをしおしおとヒューがテーブルの上に戻したとき、ティナの声がその黄金の水面を震わせる。





「……あなたの行先。――トルコで銃の発砲が起きたってニュースを見たとき、わたしがどんな思いでいたかわかる?」





 静かに息を呑み、ヒューは顔を上げた。


 そこにある、ライムグリーンの瞳は、怒りと悔しさと、そして、もう一つ――なにかをたっぷりと湛えている。


「いつだってふらりとどこかへ旅に出て。わたしは置いてけぼり。もう二度と帰ってこないんじゃないかって」


「……心配してくれていたのかい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ