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 少女とあなどるなかれ、その貫禄、まるで太陽神のごとしである。


「……チュチュくん」


 だが、天上界ではなく一応現実世界に生きる大人であると自覚しているヒューは、冷静にかつ威厳を持ってチュチュをなだめにかかる。


「自分で言うのもなんだが、ティナの日頃の僕への応対を見たら、その難易度がいかばかりか、わかってもらえるのではないだろうか」


 堂々と、堂々とは言えない論拠をついでに披露する。





「だいじょぶ! そうすると復縁の願いが叶うって、音楽学校の子から聞いたの!」


 ぴくりと、理性的な大人を自負するヒューの耳が動く。


「――だがね」


「今度、公演をがんばったごほうびにお姉ちゃんがレストラン予約してくれたの! 音楽学校が終わったあと、お仕事終わりのお姉ちゃんとビッグ・ベンの前で待ち合わせ!」


「ほほう、姉妹水入らずだね」


「ところが! お邪魔なあたしはとんずらして、そこへファントムお兄さんが来ちゃうの!」





「……そ、そんなチュチュくん」


 意志の堅い大人を自覚するヒューの目元が、右に左に、激しく蠢く。


「みくびってもらったら困るなぁ」


 堅い自律の心をひた隠しにするためだろうか、その顔はこのうえもなく柔和に緩んでいる。





「いくらこの僕といえど、自らの恋路のために姉妹の美しい交流の機会を奪うなんて、そのうえロンドンの夜のいい雰囲気に乗じてティナを口説こうなんて、しかもレストランでアルコールも入っている中、僕の完璧なエスコートぶりをもってすれば彼女の頑なな心もほどけるなんて、そんなよこしまな考えいだけるはずないじゃないか」


「うん、そういうことはにやけないで真面目な顔で言おう?」


 渡された予約の確認メモを握り込みつつ、堅牢な自制心を持つヒューは思う。いやときには、他者のアドバイスを聞き入れる柔軟性も必要であると。

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