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最終幕 きみに歌声をもう一度 ①

「キスしなさい」


「――ん?」


 




 それはロンドンの夏にしては気温が高く過ごしづらい七月の半ば過ぎのこと。


 パーヴェル音楽学校を終えたその足でやってきたチュチュの第一声に、ヒューは笑顔のまま固まった。




「虹色ブローチ事件が解決した途端、お兄さんときたらいきなり一人でトルコにひと月もバカンスにでかけて。仕事はぜんぶ任せきりということで、お姉ちゃんは今ひっじょうに怒っています。つまり」


 執務机の前に仁王立ちになり、吸うと鼻から息を吸うと、


「ファントムお兄さんにとって圧倒的に不利な状態です!」


 舞台上での主役のごとく、チュチュは高らかに宣告する。





「だってねぇチュチュくん。急にモスクのブルードームを拝みたくなったんだから仕方ないだろう」


 このうえなく切実なヒューのさすらい欲を華麗に無視したチュチュは、ごそごそとスクールバッグを漁りだす。


「ってわけで! じゃじゃん! あたしが、ダメ男ファントムお兄さんのためにとっておきのプランを考えました! 名付けて」


 とここで、ご丁寧に広告の裏を掲げ、サインペンで長々と書かれたその文面を読み上げる。


「『ワインとロンドンの夜景を駆使しておねえちゃんの怒りを沈め、うまいこと仲直りまで持っていこう作戦』!」


 ぺしぺしと広告を手の甲で叩きながら、チュチュは絶叫する。


「ロンドンの夜景スポット、ウエストミンスター寺院の前で! おねえちゃんにキスして、ファントムお兄さんっ!」

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