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閑話「団欒」

現実に絡んだような難しいお話を書いていると、頭が痛くなってしまいます

なのでそんなお話の後にはゆるゆるのお話を・・・

 小雨は食べることが好きだ。特に好きなのは夕飯で、その次は三時のおやつ。

時々雨子様から、何故にお前は食べるのだと聞かれるのだけれども、お腹が空くから食べるし、美味しいから食べる。

 そう答えるのだけれども、すると雨子様は首を傾げる。良く分からんとブツブツと言う。でもそんな事はどうでも良い、小雨は美味しい物を食べている時が一番幸せなのだから。


「もうすぐ晩ご飯よ、みんな手を洗ってらっしゃい」


 お母さんがキッチンから皆に声を掛ける。大抵皆その時間はリビングに居るから、そんなに声を張り上げなくても十分に聞こえる。


 でも時には聞こえない場所に人が居ることもある。その時は聞こえた人が呼びに行く。それがこの家のルールなのだ。


 今リビングには自分と、小雨の主人の葉子しかいない。父さんは今日は仕事で遅くなるって言っていたから呼びに行く必要は無いんだって。

 

 だから小雨は祐二の部屋に声を掛けに行った。


「祐二しゃん、雨子しゃま、母しゃんがご飯と仰っておりましゅ」


 部屋では祐二と雨子様が何やら真剣に話し合っていた。一部内容は聞こえていたのだけれども、小雨には難しい話は分からない。


「ありがとう小雨、直ぐに行くよ」


 そう言う祐二は笑顔を浮かべながら小雨の頭を優しく撫でてくれる。

小雨はそうやって頭を撫でてくれるのが大好きだった。


 雨子様はと言うと黙ってにこにこしながら祐二の次に撫でてくれる。

雨子様は小雨を作ってくれた創造主だ。時折小雨を叱ることがあるので怖いと思ってしまう。でもこうして撫でてくれるのでやっぱり好きだなと思ってしまう。


 もっとも、一番好きなのは葉子なのだった。

いつも撫でてくれるし、色々なお話をしてくれる。それだけじゃ無くてお風呂にも入れてくれるし、一緒に寝てもくれる。

 側に居ると良い匂いがしてくるし、美味しいお菓子なんかが有ったらいつも分けてくれる。


 だから小雨は葉子のことが大好きだった。

小雨はその葉子のことを何よりも大切にしなくてはならないことを、これは創造主である雨子様から命じられていた。でも小雨は、命じられていなくても絶対守ろうと思う、それくらい葉子のことが好きだったから。


 最初に祐二が部屋を出て階段を降りていく、次に雨子様が続き最後に小雨がぴょんぴょんと身軽に降りていく。


 まず祐二が最初に洗面所に立つ、でもそれは彼が真っ先に手を洗うからでは無かった。

二階から小雨が降りてくるのを待って居てくれるのだ。


「おいで小雨」


 祐二がそう言って待っていてくれるのが嬉しくて、小雨はスキップしながらその元に向かう。すると祐二が脇に腕を差し込む、洗面台へと持ち上げてくれる。


「ありがとうございましゅ祐二しゃん」


「どういたしまして」


 そう言いながら破顔する祐二。そんな祐二の優しさが嬉しいのか雨子様までにこにこしている。自然小雨も嬉しくて声を上げながら笑ってしまう。


「そう言えば昔、雨子様がこの家に来られてまだ間が無い頃、こんな風にして手を洗うお手伝いをしたことがありましたね」


「む、むぅ」


 そう言う雨子様はほんの少し顔を赤らめた。最近の雨子様はとても表情豊かだ。

小雨はそんな雨子様の方が、以前の雨子様よりずっと好きだなって思ってしまう。


「いっしょいっしょ、雨子しゃまといっしょ!」


小雨はそう歌うように言う。


 蛇口から流れる水で手を湿し、にゅるにゅるする石鹸を手で掴む。手で弄ぶ内に白い泡が一杯生まれてくる。これはとっても気持ち良い、良いから何時までもいじっていたい。


「あわあわきれい、どんどんきれい」


 うっかりすると手を洗うことより、石鹸の泡で遊ぶことに夢中に成ってしまう。でも祐二のお手伝いがあるのでそう言う訳には行かない。流れ落ちる水流であっと言う間に洗い落とされてしまう。


「あ~ああ」


 そう言うが、直ぐに本来の目的を思い出す。乾いたタオルできれいに水気を拭い、満面の笑顔を浮かべて雨子様に問う。雨子様、褒めてくれるかな?


「きれいになった?」


「むぅ、とてもきれいに成ったの、小雨は本当にええ子じゃの」


 祐二に床に降ろされた小雨は、つま先でくるくる回りながらまた歌うように言う。

嬉しいと思う心が自然と溢れてしまう。


「ほめられた、ほめられた、あっま子様にほめられた!」


 そうやって小雨は嬉しそうにくるくる回っている。そんな小雨を見ながら雨子様は苦笑した。


「我はの、些か不安になるのじゃ」


 そう言いながら今度は雨子様が手を洗っている。どうしてかな?どうして雨子様は不安になるんだろう?


「何か不安に思うことがありました?」


 小雨のついでに手を洗ってしまっていた祐二は、自分もしっかりタオルで手を拭いながら雨子様にそう聞くのだった。


「あのようにおちゃらけて幼さの抜けぬ分霊に、はたして葉子を守れるのか?と思うてしまうのじゃ」


「え~~、雨子様がそんな事を言ってしまわれると、もの凄く不安になるじゃ無いですか?」


 祐二が呆れたようにそう言うと雨子様は苦笑した。


「勿論、あやつを作り上げる時に、ちゃんと基本の部分で人を守り抜けるようにしておるから、何も心配は要らぬのであるぞ?じゃがあやつの言動がのう…」


  何だか雨子様が、小雨に問題があるようなことを言っている。小雨自身は何も問題は無いと思っている。

 だって小雨は何があっても葉子のことは守りたいと思っているし、そう出来ると思っているから。でも皆はそう思っては居ない?


 小雨の言葉遣いをこのように定めた張本人は、母さんと話をしながら大笑いしている。

雨子様や祐二があんなことを話したなんて全然知らずに楽しそうにしている。


 だから小雨は気にしない。葉子が楽しそうにして居さえすれば、それが小雨の幸せだったから。


「早く席について」


 母さんが皆に急くように言う。ダイニングに満ちるとても香ばしい香り。今日は皆の好物の唐揚げだ。

 

 葉子が自分の隣に小雨を座らせる。テーブルにちょこんと引っかけて使う椅子。本来は赤ちゃん用のものだ。もしかすると目の前にそろえられている食器なんかも赤ちゃん用?


 本当のところは小雨にも分からなかった。でもそうやって皆と同じものが目の前にあると言うことが何よりも嬉しかった。


 皆が席に着く、皆が声をそろえて言う。


「「「「「「いただきます」」」」」」


 小雨はフォークに刺して真っ先に唐揚げを口に運ぶ。


「おいしい!」


 そう言いながら小雨を目をキラキラとさせる。母さんがその姿を見ながらもの凄く嬉しそうにする。


「何だか早くも子供が一人増えちゃったみたいね」


「ほんとね、小雨、もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだけれども、可愛がってくれる?」


 葉子が小雨に尋ねる。すると小雨はフォークに唐揚げを刺したまま、ぐいんぐいん振り回しながら言う。


「もちろんでありましゅ、小雨ぇは赤ちゃんのお姉さんなんでしゅ。だから一杯お守りしましゅし、一杯可愛がって上げるのでしゅ」


 そのお喋りの可愛さに感極まったのか、葉子は小雨のことを抱き上げ、むぎゅうって言うほど抱きしめた。


「やれやれ、葉子があれじゃからのう」


 そう言う雨子様の両方の頬が、唐揚げでぷっくりと膨れ上がっていたことは小雨だけが知っている。

 そう、雨子様もまた唐揚げが大好物なのだった。



一家に一人小雨ぇはいかがですか?

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