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天露の神  作者: ライトさん
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ランチタイムラプソディー

お昼休みの賑やかな出来事です。彼らの思いの行く末って、一体どうなるんだろう?

 元より本当のところは病気で休んだ訳では無かったので、休み明けの学校への復帰は何ら苦労することは無かった。


 当たり前のように授業を受け、当たり前のようにお昼を食べる。

日常の中に居ると、ここ暫くの間に起こったことがまるで嘘のように感じられる。それこそ生き死にに繋がるようなことがあったなど、夢のまた夢のような感じがしてしまっていた。


「ねえねえ、その卵焼き分けてくれない?」


と祐二の弁当のおかずに集っているのは七瀬だった。


「え~~自分だってちゃんとお弁当持ってきてるじゃ無いか?」


 僕は卵焼きが好物だっただけじゃ無く、母さんの作った出汁入りのものが大好きだっただけに大いに渋った。


「私のと交換して良いから~」


 なおも食い下がる。実は七瀬も母さんの作ったこの卵焼きが大好きなのだ。

油断するとさっと鳶のようにかすめ取っていきそうなので体で庇う。


「ああ、ずるいぃ」


「何だそのずるいって言うのは?」


「私もおばさまの卵焼きファンなんだから一つくらい頂戴よ?」


なおも強請って引き下がらないのだが、思いもしないところから救いの手が入った。


「あゆみ、我のを分けてやるからそう騒ぐ出ない」


同じく横で弁当を開いていた雨子様だった。


「神様仏様雨子様!」


 七瀬は大喜びで手を合わせ、早速雨子様の弁当から卵焼きを一つ略奪していく。

それを見て雨子様はきょとんとしているが僕は渋い顔をしながらいった。


「仏様まで混ぜるな!」


「え?そこ?」


今度は七瀬がきょとんとしている。しまった追求するところを間違えた。


 そうやって騒いでいると周りからヤジが飛ぶ。


「お前ら本当に仲が良いな、いつもそうやってじゃれあってんなあ」


「ほんとほんと、前は七瀬と吉村君の間が怪しいって睨んでいたんだけど、そこに雨子さんが混じってもう何が何やら分からない事になってるし…」


「えっ?」


「はぁ?」


「ん?」


 目を丸くした僕が問う。


「どうしてそう言うことになってるんだ?」

 

「だってなあ?」


「だってねえ?」


そうやって話しかけてくるのは樫村と三郷だった。


「そう言うお前らこそくっついてんじゃ無いのか?」


僕がそう言い返すと二人はきょとんした後目を合わせ、笑い出した。


「お前には言っていなかったかぁ。俺たちもう付き合い始めて三ヶ月は経つぜ?」


「何ですって?」


と目を剥いたのは七瀬だった。


「あなたたちいつの間に?」


「何時の間にって、別にこう言うの報告し合うもんじゃ無いじゃない」


「それはそうなんだけど」


「で、どうなのよ?七瀬、あなた祐二君のこと…もがぁ」


慌てて三郷の口元を押さえる七瀬。


「え?七瀬ってもしかして僕の…もがぁ」


そう話しかけている僕の口元を今度は雨子様が押さえ込んだ。


「祐二よ、ちと黙っておこうかの?」


 見ると七瀬は下を向いた顔を真っ赤にさせている。

何となくその有様を見れば大体のことは分かるような気がするのだが、そんな僕の耳元に雨子様が口を寄せると小声で言ってきた。


「今暫し要らぬことを言うで無い。あゆみにはもう少し時間の猶予を与えてやるのじゃ」


 僕は黙って頷いた。しかし僕自身戸惑っていた。

実際僕としては、七瀬の存在は今のところ幼なじみの女の子としての存在でしか無いのだ。

 それをいきなり好いた惚れたという話を持ってこられてもどうして良いのか分からなくなりそうだ。


 そんな僕の様子を見ていた雨子様がはぁッと盛大にため息をつきながら言った。


「だと思うたのじゃ。そもそも祐二は大人のような心を持っているように見えて実は本質は幼さを持って居る。こやつが色恋云々を語り出すのはもうちと先のことじゃろう」


 雨子様のその言葉を聞いたその場の三人。何だかもの凄く感心しながら僕のことを見つめている。何だろう、そんなに納得されると気分が悪いんだけれども?


「そうだった、祐二君はそう言う奴だった。知ってたはずなのに最近何故だか忘れてた」


僕のことをまじまじと見つめながらそんな事を言い出す七瀬。


「じゃろ?でなかったら我の風呂上がりの艶姿を見て、褒め言葉の一つも述べん等あり得ぬことじゃ」


 雨子様からの衝撃発言があると、途端に三対プラスアルファーの目がきっと僕の元に注がれた。


「なあ吉村、少し話聞こうか?」


そう言いながら樫村が肩を組んでくる。


「そうね、私達もしっかり話をお聞きしたいものね」


そんな事を言いながら詰め寄ってくる三郷と七瀬。更にその周りには野次馬大勢。


 何だか知らないが、大変なピンチに陥ったような気がする。


「雨子様?」


 ピンチの元凶に情けない声で問いかけるも、当人は素知らぬ顔で明後日の方向を向いている。


 後はもう散々だった。僕が部屋で普通に過ごしていたところに、バスタオル一枚の雨子様が勝手に来るんだから、僕に一体何が出来ると言うんだい?

 だが誰も僕の弁明を聞いてはくれなかった。みんなで口々にワーワー言いながら僕を責め立てている?なんでそんなに笑っているんだ?


 結局みんなは僕をからかって楽しんでいるってことが分かった。そしてそれは昼休みが終わるまで続いたのだった。

やれやれとんでもないランチタイムだったよ。



時にお話の未来を作るのって、本当にめちゃくちゃ苦しいことがあります

こう言う苦しみを知ればこそ、世の多くのクリエイターの皆さんが作り出されたものに、大いに敬意を表したいものだと思いますね

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