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鏡の呪文

呪文というと皆さんはどんなものを思いつかれます?鏡と言えばテクマクマ…げふんげふん

 翌日学校に行った僕達は、教室に着くなりいきなり七瀬に引っ張り出された。

クラスメイトの面々が興味深い視線を送ってくる中、連れ出されていく僕の後を雨子様が追いかけている時点で、何故か興味を失っている。何故に?


「ねえ、昨日なんか有ったの?」


 思わず僕と雨子様は顔を見合わせた。


「何で?何かあったの?」


 僕がそう聞くと、穏身を使って肩に乗っていたユウをむんずと捕まえて僕達の目の前に突きつけた。


「この子が何だか昨日の夜中に大騒ぎしたのよ」


「大騒ぎ?」


「そうよ、何故だか知らないけれども、何か起こっているってそれはもうワイワイ大騒ぎ」


 そこまで言うと七瀬は雨子様の方を向いた。


「これって雨子さんがらみのことなんでしょう?」


「むう、そう言われたらそうじゃと言わざるを得んな」


「やっぱり~」


 そう言いながら七瀬は少し膨れた、自分だけ蚊帳の外に置かれたのが気に入らなかったらしい。

その様を見ながら雨子様は苦笑した。


「あゆみ、そなたに連絡せなんだのは、適うなら悪しき影響が及ぶことを避けたかったからなのじゃ。そうで無くとも今回の相手はまだ何者かとんと得体が知れて居らん。そんな状況ではあゆみの所まで完全に管轄下に置くには難しいものがある」


そう言いながら雨子様はあゆみにがっつり掴まれて藻掻いているユウの頭をそっと撫でた。


「勿論こやつにはそなたを守る力を持たせて居るから、いざと言う時にはきちんと対応できるであろう。じゃが適うならばそれは避けたいのじゃ。今暫くは我慢してはもらえぬかの?」


雨子様の説得を受けた七瀬は、ユウを肩に戻しながら眉をしかめた。


「う~~ん、どうしても仕方の無い部分については分かった。でも何も分からない状態に置いておかれることだけは嫌。ちゃんと何が起こっているのか分かるようにだけはして欲しい」


七瀬の言葉に暫し雨子様は物思いに耽った。


「確かにあゆみの言うことも分からんでも無い。ユウには我の力を与えて居るが故、必要なときには情報をやりとりすることは可能になって居るのじゃが、時にユウを通じてのやりとりのみではもどかしいこともあるじゃろう。かと言って携帯などを使うと、敵方に知られてしまうことにもなり兼ねん。はてさて…」


そこで雨子様はふと何かに気が付いたらしい。


「そうじゃあゆみ、そなたいつも小さな手鏡を持ち歩いて居るじゃろう?」


 確かに七瀬はいつも小さな鏡を持ち歩いていた。昔はそんなものを持ち歩いていた覚えは無いのだが、中学三年になったくらいの頃からだろうか?可愛らしいものを持ち歩くようになっていた。


「これのことよね、雨子さん」


 そう言うと七瀬はスカートのポケットから小ぶりのコンパクトらしき鏡を出してきた。

それを見た僕はふと思い当たって声を上げた。


「そう言えばそれってプルキュアのだよね?今思いだしたよ」


「そう、プルキュアのよ、お気になの。なんか文句有る?」


突っかかってくる七瀬に僕は慌てて否定した。桑原桑原。


「無い無い、文句なんか一つも無い!」


そんな僕の慌て様を見ていた雨子様は膝を叩いて笑っている。


「そなた等は本当に仲が良いのじゃな?」


「「ええっ?」」


「ほれ、そういうところじゃ」


「「!」」


顔を見合わせて互いに赤くなりながらそれ以上何も言えないで居ると、雨子様は笑いを収めて七瀬に言った。


「ともあれあゆみよ、まずはその鏡を寄越すが良い」


言われるままに七瀬は小さな手鏡を雨子様に手渡した。


 すると雨子様は鏡の上部にとんと人差し指を突き、その後七瀬の眉間にも突いた。


「これで良い」


「何なの?これ?どうしたの?」


不思議に思った七瀬が雨子様に問うと、雨子様は笑いながら説明してくれた。


「そう急くで無い。今行ったのは、我や和香の使用する鏡との同期じゃ。じゃがそなた等はきちんと明確な思考をすることが苦手故、思わぬ時に相手と繋がってしまうことにもなり兼ねんの。さてどうしたもかの」


寸時何かを考える雨子様。


「何か鍵になる言葉を決められたら良いのじゃが、そなた等そう言った類いのものを知らぬか?」


 キーワードというか、合い言葉というか、僕の頭の中にはとある言葉が思い浮かぶ。嫌々、それは無いだろう。一人頭を振って苦笑しているとそれが目に付いたのか、雨子様が聞いてくる。


「何じゃ祐二、何か思いついたのかえ?」


「嫌別に、そう言う訳でも無いのですが、ふと童話の中の言葉を思い出したんです」


 僕はそれ以上言うつもりは無かったのだけれども、更に雨子様の追撃を受けてしまった。


「ほれ、黙って居るのでは無い、その言葉口にしてみよ」


なおも渋っていると今度は七瀬からも求められてしまった。


「ほらほら、もう授業が始まっちゃうんだから早くして!」


「え~~~」


「はようせい」


 仕方なく僕はその言葉を口にした。


「開けごま」


「ぷっ!クハハハハハハ…」


腹を掛けて笑う七瀬、きょとんとする雨子様。


「とまれ、今はそれで良いは。良いかあゆみ」


七瀬は必死になって笑いを収めて雨子様の言葉を聞いた。


「はい。雨子さん…プッ」


笑いを抑えきることが出来ずに居る七瀬のことを半ば呆れた顔をしながら見る雨子様。


「まあ良い…ではのあゆみ『開けごま』と鏡の前で唱えた後、話したい相手の名を唱えよ。残念ながら今ここに我は鏡を持って居らぬが故、試しは帰宅後ぞ?」


「うん、分かった」


 そうやってかろうじて一つ新たな決めごとを決め、僕達は鳴り始めた鐘の音に追われるようにして教室に戻ったのだった。


と言うことで呪文としてはもう一つの有名なものでした。

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