「帰宅」
お待たせしました
「ただいま!」
の元気な声と共に、リビングに居た節子の下へ、まるで駆け込むようにやって来る雨子様。
「あらあらお帰りなさい、ちゃんと帰ってこれたのね?」
にこにこしながらそう言って向かえてくれる節子に、次に部屋に入ってきた祐二が吹き出しながら言葉を返す。
「ちゃんと帰ってこれたって、なんだよそれ?」
「だって出掛ける時は、何も見通しが立たないみたいなこと言っていたじゃ無い?はい、お帰りなさい。令子ちゃん、あゆみちゃん」
廊下の方から次々と部屋に入ってくる令子達を見た節子は、同じく優しい声で向かえる。
「「ただいま戻りました」」
「それで…あなた達の顔を見れば大体分かるのだけれども、首尾良く行ったのね?」
そう言う節子に対して口元がゆるみ、目尻の下がった恵比寿顔の雨子様が言う。
「うむ、無事解決することが出来た…と言っても良いじゃろう」
「それはよかったわね、お疲れ様」
節子のねぎらいが何とも嬉しそうな雨子様。
「後は和香の所で、此度救い出した二龍をどう扱うか?それが決まれば言うこと無しじゃな。それはそうとお母さん、沙喜や他の処から、大量の土産を貰ってきて居る。玄関に置いてあるのじゃが、見て貰えるかの?その内のいくらかは、あゆみに持って帰って貰うつもりなのじゃが…」
雨子様に請われるがまま早速腰を上げる節子、その足で玄関へと向かう。
「なんなのこれは?本当に随分大きな木箱ね?特大の風呂敷包みに大きな袋詰めの米?…、お相撲さんでも居らしたのかしら?」
「お相撲さん?」
七瀨がツボに填まったらしく、転げ回って笑っている。
「こっちの樽はお漬け物ね?良い香り、とっても美味しそうね?」
「うむ、本当に美味いのじゃ。赤いカブラの漬け物なのじゃが、美味い美味いと褒めたら二樽も貰ってしもうた。内一樽は和香の所に渡してきたのじゃ、食い切れんと思うたので餅も大量に渡してきたのじゃ」
「成る程ね、それは良い考えだったと思うわ。それで…丸餅が二種類に角餅が一種類?」
それぞれ中味を覗き込みながら言う節子。そしてその内の一つが三方に乗っているのを見て首を傾げるのだった。
「この角餅は沙喜さんのところからね?あちらのお米は美味しいからとても嬉しいわ。多分あちらの餅米で作ったお餅も素晴らしいのでしょうね?頂くのが楽しみだわ。後丸餅が二種類?多分三方に乗っているのは和香様の所からの頂き物ね?でもこの木箱のはどこからなのかしら?」
そんなことを密かに呟いている節子のことを、呆れた顔をしながら見つめている雨子様。
だが直ぐに諦めたかのように頭をふりふり言うのだった。
「その木箱の中身は咲花の処から、三方に乗った物は和香の処からじゃ。いずれも加護が込められておる縁起物じゃ」
すると節子は目を丸くしながら言うのだった。
「あらまあまあ、でしたらそのお餅はお雑煮に入れさせて頂いて、有り難く頂かなくてはね?そして沙喜さんのところのは、お餅パーティーかしら?」
すると七瀬が目をきらりと光らせながら問うのだった。
「何々?何なのそのお餅パーティーって?」
「確か関西では砂糖醤油やきな粉餅、磯辺焼きなんかが主流なのだと思うのだけれども、あちらではくるみ餅とか、納豆餅、胡麻餅、ふすべ餅とかが有名なんでしょう?色々作って試してみなくっちゃね?後、家でならピザ餅とかあん餅も追加しちゃおうかしら?」
それを聞いた七瀬、涎を垂らさんばかりの顔をしながら言うのだった。
「ねえおばさま、それお正月になさるのですか?」
その問いににっこりと笑みを浮かべながら言う節子。
「ええ、三日くらいにやろうかなって考えているところ…」
「あのう…、来ても良いですか?」
そうやって必死になって問いかける七瀬のことを、令子と雨子様はにやにやしながら見ているのだった。
「勿論よ、あゆみちゃんならいつでも大歓迎だし、お母さんも一緒にね?」
もう大喜びで、両手を握りしめて天に突き上げている七瀬なのだった。
それを見ていた祐二が呆れた風に言う。
「なあお前さ、沙喜さんのところでも散々つきたて餅を食べてきたんだろう?」
だが祐二のその問いに対して、毅然とした面持ちで七瀬は言うのだった。
「それはそれ、これはこれなのよ。それにね、おばさまは絶対に奇抜なお餅を出してくるのに違いないのですもの…」
それを聞いていた雨子様と令子がぐっと節子の方を見つめる。
「これは聞き捨てならんの」
「ほんとよね?お母さんが一体どんな奇抜な餅料理を出してくるのか?ちょっと楽しみかも?」
令子もわくわくした顔で言うのだった。
「それでお母さん、年末の忙しい時に抜けてしまったのじゃが、我は何をすれば良いのじゃろうな?」
雨子様のその台詞に、少し驚いた顔をする節子。
「今帰ったばかりでもう?」
「言うても時間が無いのであろ?」
「まあ確かにそれはそうなんだけれども、ちょっと待っててね…」
そう言うと節子は奥に下がり、直ぐに紙袋と、ジッパー付きのビニール袋を持ってくるのだった。そして手早く餅を分けると七瀬に渡す。
「やっぱりいくら雨子様と一緒とは言っても、聡美が心配していたから早く帰って上げなさい」
そう言われた七瀬は、ほんの少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべると、ぺこりと頭を下げるなりそそくさと帰っていくのだった。
それを見送った節子が改めて雨子様に言うのだった。
「家のことを手伝ってくれる思いは分かるのだけれども、まず自分のお社の掃除をしてらっしゃいな。あなた達や近所の方達が時々綺麗にして下さっているけれども、やっぱり新しい年を迎えるんだもの、綺麗にね?」
節子のその言葉に納得したように頷きながら言う雨子様。
「むぅ、確かにそうじゃな。今はもう殆ど向こうに居ることは無いのじゃが、言うても我の本拠でもあるからの…」
「でも神様本人が掃除って言うのもなあ…」
苦笑いしながら祐二がそう言うと、節子にこつんと頭を小突かれるのだった。
「要らないことは言わないの。それと後でで良いからお米を、あゆみちゃんの家に持って行って上げてね?いくら何でもお米までは持たせられなかったから」
そう言うと今度は雨子様に向かう節子。
「それとね雨子ちゃん、あのお社だって雨子ちゃんの為に存在してくれていると思ったら、掃除して上げるのも良いことだと思うわよ?」
そんな節子の言うことを、目を丸くしながら聞く雨子様。
早速に掃除道具を取りに庭の倉庫へと走るのだった。
昨今はそんなに量が食べられなくなりましたが、
嘗ては色々な方法でお餅を食べるのが楽しみでした……
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