表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
780/804

「相談事」

お待たせ致しました(^^ゞ

 大きな欠伸をしながら今朝は食堂へと案内された祐二。


 いつも祐二達が食事していた広間は、餅つきの功労者達の倒れ伏した姿で、未だ散々たる状況なのだった。


 そのせいもあって、普段は家族専用の場所となっているこの部屋に案内されたらしい。


 食堂には大きなテーブルがあって、先に居た者達が少しぼんやりしながら、何やらぼそぼそと話をしているのだった。


「「おはよう…」」


 祐二の姿を目にとめた七瀬と令子が、少しばかり眠そうに挨拶してくる。

傍らではその令子に寄りかかりながら、うつらうつらしている瀬織姫様の姿が、何とも幼気いたいけで可愛らしかった。


 皆から少し離れた席では、笹姫と次郎太が寄り添うように席に着き、彼らもまた祐二の姿を見つけると声を掛けてくるのだった。


「「おはようございます」」


「おはよう」


 挨拶を受けた祐二、皆に向かってそう返しながら無意識の内に周りを見回している。そう、未だ見かけない雨子様の姿を探しているのだった。


 あの雨子様のこと、一人だけ寝坊をしているなど考えられないので、七瀬に向かい問いかけるのだった。


「雨子さんは?」


 するとその七瀬、にっと笑みを浮かべると、丁度その時開いた扉の方を指差すのだった。


「お待たせ~」


 そう言いながら出入り口から入ってきたのは、沙喜と雨子様なのだった。二人して朝食を山盛り載せたワゴンを押すのだった。


 祐二には一体何があったのか分からない内に、沙喜と雨子様の手によって皿が次々と皆の下へと配膳されていく。


「何をして居る祐二、早う席につかんか?」


 促されるままに席に着く祐二。

その目の前に、雨子様自身が色々と配膳していく。


「えっと、これは?」


 すると雨子様が答えるより前に、沙喜が話しかけてくるのだった。


「こちらの料理は、特に祐二君の分は、雨子様が手ずから作られたものなのよ」


 普段から時折雨子様も朝食を作るので、それを供されること自体はそう珍しいことでも無かった。けれども吉村家の朝は大体に於いてパン食なのだった。


 しかし今、目の前にあるのは純和食、何とも新鮮さを感じるのだった。直ぐに雨子様の視線の先に気が付いた祐二は、早速箸を付けるのだった。


「うん、美味い!」


 そう言う祐二に、嬉しそうにしながらも叱責の言葉を飛ばす雨子様。


「こら祐二、頂きますを言わぬか?」


 そう小言を言う雨子様のことを、まあまあと宥めながら沙喜が言うのだった。


「その卵焼きは雨子様が、特に腕によりを掛けて作られたものなのですよ!」


 沙喜のその言葉を、何ともくすぐったそうに聞きながら雨子様は言うのだった。


「何を言うて居る、我は沙喜の指図通りに調理しただけぞ」


 だが沙喜は笑いながら言うのだった。


「何を仰るのです雨子様。沙喜はあくまで見ていただけ、混ぜるも足すも間合いを計るも全て雨子様のなさったこと、胸をお張り下さい」


「む…」


 雨子様は見事沙喜に諭されると、言葉少なにそう言いながら可愛く照れるのだった。


「でも朝からどうして?」


 雨子様がただ沙喜の下で料理を習っていたとも思えない祐二、その先を考えつつ尋ねる。

すると雨子様、祐二の耳元に口を寄せるというのだった。


「なに、少しばかり笹姫達のことを頼んで居ったのじゃ」


 そうやって話す間にも、ワゴンの料理は沙喜の手によって皆に供されていく。


「この卵焼き、雨子さんが作ったって本当?」


 目を丸くした七瀬が悔しそうに沙喜に言う。


「くぅ~~、これは帰ったら絶対に享受して貰わなくっちゃ」


 その隣では令子が同様に丁寧に味わいながら言うのだった。


「ほんとねえ、これはちょっと凄いわね?」


 その言葉を耳にした雨子様、違う違うと首を横に振りながら言うのだった。


「其方ら、言っておくが凄いのはこの沙喜じゃ。あくまで我は沙喜に習って作ったに過ぎんのじゃ」


 だがそう謙遜する雨子様に、ぷるぷるとほっぺたを震わせながら、すっかり目を覚ました瀬織姫様が言うのだった。


「でも雨子様、これは本当に美味しいですよ?とてもとても美味しいのです」


 そう言って無上の言葉で褒めそやす瀬織姫様。


 だが彼女の目の前に既に卵焼きの姿はない。当たり前のことながら食べれば無くなってしまうのだった。


 空っぽになってしまった皿の上を、意気消沈しながら何とも悲しそうに見つめている瀬織姫様。尾羽打ち枯らしたとはまさにこの状態を言うのか?


 その余りに打ち萎れた様子が気の毒だったのか、見るに見かねた皆から、ぞくぞくと卵焼きが集まってくる。


「どうぞ」


 そう言って一切れを瀬織姫様の皿の上にそっと載せる令子。それを見た七瀬が「私も!」と言って一切れ。それを追いかけるようにして祐二までもが載せて上げる。


 途端にさっき鳴いていたカラスじゃないけれども、喜びを身体中に溢れさせながら、皿を持った瀬織姫様が沙喜の処へと走る。


「沙喜沙喜沙喜、見て見て、皆さんから頂いたの!」


 その様子を全て目に納めていた沙喜は、我がことのように喜びながら、皆に向かって丁寧に頭を下げるのだった。


 と、それを見ていた瀬織姫様、自分が未だ皆に礼を言っていないことに気が付き、急ぎ沙喜同様に頭を下げるのだった。


 だが、下げられたのは頭だけではないのだった。

三切れの卵焼きが載った皿も斜めに成り、挙げ句中身がずり落ちていく。


「「あああっ!」」


 っと悲鳴のような声を上げる令子と七瀬。

一瞬万事休すと思っていたのだが、其処へ皿を持った祐二が滑り込む、運良くそれはぎりぎりセーフのはずだった。


 いや、卵焼き自体はセーフだったのだ。しかし祐二自身はそうはいかなかった。

卵焼きの危機を悟った雨子様もまた、同様に滑り込んできていたのだった。


「がつんっ!」


 二人は猛烈な勢いで頭をぶつけ合わせてしまう。

その余りの衝撃と痛さに、二人とも頭を抱えて蹲ってしまうのだった。


 傍らに居た者達皆に聞こえるくらいなのだから、その勢いがどれだけのものだったか想像がつくだろう。


 さすがの雨子様も予期せぬ痛みのせいで、直ぐには手を打てずにただ頭を抱えるしかないのだった。


 と、其処へその全てを見ていた笹姫が駆け込んでくる。

そして二人のおつむにそっと手を当てると、優しく白い光を発するのだった。


「「ふわぁ…」」


 お陰で何とか痛みから解放された二人、ぺたんと尻餅をつくのだった。


「祐二、其方がそのように石頭とは知らなんだのじゃ、全くどれだけ固いのやら…」


「それは雨子さんもだよ、さすが神様?」


「そんなこと有るか!じゃがそれでも卵焼きを死守したのは褒めて遣わす。それと笹姫、本当に助かったのじゃ、感謝する」


 雨子様の言葉に嬉しそうに微笑む笹姫。


「飛んでも御座いません雨子様、こんなことでもお役に立てたこと、本当に嬉しゅう御座います」


 そうやって喜ぶ笹姫の言葉を受けた雨子様、無事だった卵焼きを受け取り、大喜びする瀬織姫の姿を見ながら、沙喜に言うのだった。


「そうじゃ忘れて居った沙喜、そう言えば笹姫にはこの様な治癒の力があるのじゃ。この村に滞在して居る間、皆の病を治して貰うが良いよ」


 すると沙喜、少し考え込みながら言うのだった。


「そのような特別なことをお願いしても、果たしてよろしいので御座いますでしょうか?」


 すると雨子様はにっこりと微笑みながら言うのだった。


「確かに永続的なことで有ったなら、笹姫の余力の問題もあるであろうし、公平性の問題もあったかもしれん。しかし此度に限って言うならば、暫し笹姫らの面倒を見る駄賃じゃ」


 すると沙喜、口元に手を当て可笑しそうに笑いながら言う。


「これもお駄賃なので御座いますか?」


 それを聞いた雨子様、つい先程までのことを思い起こしながら、自らも可笑しそうに言うのだった。


「くふふ、そうじゃ、駄賃じゃ」


 そこまで言うと雨子様、笹姫に向かう。


「我は今日にて一旦帰宅する。以前も話した通り、戻り次第、和香に其方らの処遇について相談するつもりじゃ。それで其方と次郎太なのじゃが、あちらで対応が決まり次第呼び寄せるつもりなので、しばらくの間沙喜の下で世話になってくれ」


 それを聞いた笹姫、しっかりとした口調で「はい」と言いながら頷いて見せる。

それを見た雨子様、更に笹姫に向かって言葉を継ぐのだった。


「ついてはその間のことなのじゃが、今ほど沙喜に話して居ったのを聞いて居たであろう?良ければ其方のその治癒の力、この土地の者達の為に使ってはもらえんかの?」


 雨子様の言葉を聞いた笹姫は直ぐにも答えを返す。


「勿論否やの言葉は御座いません。喜んで力を使わせて頂きます」


「沙喜、聞いた通りじゃ」


 雨子様の言葉を聞くと同時に、沙喜は笹姫の前に膝をつこうとするのだが、即効で笹姫に止められる。そして「笹姫様…」と尊称を付けかけると、これまた忽ちの内に訂正されるのだった。


「どうかどうか沙喜さん、様付けは勘弁して下さいませ」


 そう言う笹姫にそっと並ぶと雨子様も言う。


「そうじゃぞ沙喜、序でに我も様付けは…」


 だがそれだけはと沙喜に、強力に反論を喰らうのだった。


「雨子様!沙喜はそれだけは絶対に飲めません」


 そうきっぱりと拒絶の言葉を述べた後、沙喜は笹姫に言うのだった。


「この村には何かと体調不良の者も多く居ります。笹姫さん、どうかよろしくお願い致しますね?」


 そう言う沙喜に向かい、笹姫は丁寧に頭を下げながら言う。


「こちらこそ改めてお願い致します、どうか暫しの間よろしくお願い致します」


「もちろんで御座います」


 沙喜がそう言うと笹姫と二人にっこり微笑み合うのだった。

その笹姫、少し声を落とすと密かに次郎太のことを見ながら言うのだった。


「ついては沙喜さん、先程の卵焼きの作り方、私にもご教授頂けますか?」


 それを聞いた沙喜、目を丸くしながら即座に答えを返すのだった。


「勿論ですとも…」





非日常と日常の繰り返し、それは普段でも同じことだと思いますが

少しでも楽しいことが一杯有ると、良いですよねえ(^^ゞ










いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ