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「茄子胡瓜」

世間では色々とやっかいなことが持ち上がっていますが、せめても物語の中で位は、穏やかに楽しんで下さいませ

 三々五々、それぞれ風呂から上がっていったのだが、結局もう少し話をしようと、今一度、女の子達が使っている広い方の部屋で集まることになった。


 祐二などは今までの経験もあったので、風呂上がりの女性達に混じったと言っても(瀬織姫様を除くと皆手軽なスエットなのだった)、だからどうと言うことも無いのだが、こと次郎太については、怪しいくらいに動揺しているのだった。


「何じゃ次郎太、其方本地が龍であるのに、何故にそのように固うなっておる?今更人の姿に絆されることもあるまいに?」


 下を向いて赤くなっている次郎太に、雨子様がそう尋ねると、それに応えるべく束の間顔を上げるのだが、一瞬笹姫に視線が及ぶと、慌てて直ぐに目を伏せるのだった。


 それを目にした雨子様、両者の交互に視線を向け、成る程と頷くのだった。

そして彼の有り様の意味を理解した雨子様は、それ以上次郎太に話題を向けようとはしないのだった。


 眠くなるまでの間にと言うことで、留守番だった七瀨や令子、瀬織姫様に向け雨子様が、今日有ったことを掻い摘まんで説明している。


 本当に極簡単に説明しているのだけれども、それでも現場でどれほどの苦労があったのか、十分に想像出来る内容なのだった。


 それは助け出された笹姫にとっても、自身がどうやって救い出されたのか、と言うことを知る、良い機会でも有ったのだが、知れば知るほど掛けた迷惑の大きさを思い、次第に悄げていくのだった。


 そんな笹姫の側には既に令子が寄り、なんだかんだと一生懸命に言葉を掛けている。

そして令子の言葉に支えられ、何とか浮上してくるのであった。


 実際笹姫は黒龍と対峙した時だけで無く、今回もと言うことで都合二回も次郎太に命を助けられていることになるのだった。


 そのことを改めて考えると、自然次郎太への感謝の思いが募り、お礼の言葉を何とか述べなくてはと思う笹姫。


 けれども周りで何を言われようとも、赤くなって俯いている次郎太のことを見てしまうと、皆の前でなかなか思いを伝えられないのだった。


 さて、そんな二龍のそれぞれの有り様を目にしながら、全ての説明を終えた雨子様、一肌脱ごうとでも思ったのだろうか?一際大きな声で次郎太の名を呼ぶのだった。


「次郎太!」


 さすがの次郎太も神の呼ぶ声に、ただ赤くなって俯いているばかりではいけないと思ったのか、すっくと顔を上げると返事するのだった。


「何で御座いますでしょうか雨子様?」


 そんな次郎太に雨子様は、優しい笑みを向けながら言うのだった。


「其方黒龍という難敵を前にして、一歩も引かず、笹姫を無事守り抜いたばかりか、その覚醒にも再び己を掛け居ったことまっこと美事。実に見上げたものじゃと褒めなくては成らんと思って居る」


 そう言って自身のことを持ち上げてくれる雨子様に、次郎太は小さく頭を横に振りながら言うのだった。


「おえは当たり前のことをしただけで御座います、雨子様」


 訥々とそう語る次郎太の言葉を聞きながら、笹姫は静かに頭を横に振っている。


「笹姫様をお起こしする時も、おえがしたのは無尽殿から龍気を分けて頂き、雨子様のお指図によって動いただけのことで御座います」


 そんな次郎太に雨子様は苦笑しながら言うのだった。


「其方がどう考えて居るかは分からぬが、いずれの場合も、余人であれば普通に尻込みするようなこと。それを其方は一瞬も躊躇すること無く、真っ直ぐに挑んだのじゃ、これを褒めずしてどうする?」


 そう言うと雨子様は、今度は祐二のことを見ながら言う。


「此処に居る祐二もそうじゃ、一拍も置かずにそう言う危機の中に飛び込んでいく気構えを持って居る。勿論それが蛮勇であっては成らぬ。じゃがな、そうやって計算では無く立ち上がれる存在というのは希有であり、、時に世の中を大きく変えることもあるのじゃ。そして場合によっては人の心をもの」


 そう静かに言い放つ雨子様のことを、真剣な表情で見つめる瀬織姫様。

もしかすると雨子様には、この年若い神に何か言い聞かせる思いでも有ったのだろうか?


「でもさ、雨子さん。それを言うなら雨子さんもじゃないか…」


 祐二がそう言いながら笑みを浮かべる。


 まさかこんなところで自身のことが話題になるとは思っても見なかった雨子様、一瞬ぽかりと口を開けたかと思うと、顔を赤くする。


「止めぬか、我は神ぞ。我は其方らを守護する立場にあるのじゃからして当然のことじゃ」


「でもそんなことを誰も当然とは思っていないよ?」


「むぅ、全く以て良う言いおるの?いつの間にそのように弁が立つようになり居ったのやら…。じゃがそれはさておき、そうやって誰かの為に力を尽くした者は、ちゃんとその礼を受けるべきなのじゃよ、そうでは無いか笹姫?」


 皆の視線が一斉に笹姫の方へ向けられる、その中には次郎太の視線もしっかりと入っていた。


 その笹姫、皆の注目を受けて一瞬気後れするが、折角こうやって雨子様が機会を設けてくれたことを思い、顔を真っ赤にしながらも気丈に胸を張りながら言うのだった。


「仰る通りで御座います」


 そう言うと笹姫は美しい所作で次郎太の前に進み、改めて正座をすると、澄んだ目で次郎太のことをじっと見つめる。そして丁寧に頭を下げ、目を潤ませながら言上するのだった。


「次郎太様、私に龍の道を教え、竜神として生きる道を教えて頂いただけでなく、災悪たる黒龍からこの身をお守り下さり、剰え私の再救出にまでお力をお貸し頂き、本当に、本当にありがとう御座います…。本来であればもっと前に御礼申し上げるべき処、その…なかなか機会を得ることが出来ず、今になってしまいました、まことに申し訳御座いません」


 震える声で言葉を詰まらせながらそう言う笹姫。序でその笹姫をまるで庇うかのように言葉を述べる雨子様。


「笹姫が悪いのではない、我が次々と其方らを引き回し、その時を与えなかったが故のことじゃ、我もまた笹姫同様頭を下げる、この通りじゃ」


 そう言いながら雨子様は滑るように笹姫達の近くに行くと、凜とした所作で正座をし、すいっとばかりに頭を下げてみせるのだった。


 その動きに思わず息を飲む笹姫、そして次郎太、更には瀬織姫様なのだった。


「雨子様…」


 瀬織姫様が声を震わせながら小さな声でそう呟く。

そんな瀬織姫様の側に令子が進み出ると、きゅっとその手を握りしめる、そして何も言わずに頷いて見せるのだった。


 ふと顔を上げ、そんな瀬織姫様と令子の様子を目にした雨子様は、さすが令子と思いつつ嬉しそうに笑みを浮かべる。


「其方らまるで金蘭の契りのようじゃの…」


「金蘭の契り?」


 令子が不思議そうな顔をする。すると笑いながら雨子様は言うのだった。


「中華の故事で、仲の良いことを意味する言葉じゃ」


 するとそれを横で聞いていた祐二が小さな声で言う。


「まるで茄子と胡瓜みたいだなあ…」


 それを聞いていた七瀬が吹き出しながら言うのだった。


「何それ、まるでお婆ちゃんみたいなことを言うのね?」


 それを聞いた途端に思いっきり吹き出す雨子様。

暫く笑いを収められずに、大いに難儀する雨子様なのだった。



今日は難産でありました(^^ゞ














いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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