小雨ぇとユウ
賑やかな二体が揃います。格としては小雨の方が上なんだけれども、そう簡単に落ち着くのかな?
腹ぺこの小雨を従えて皆で階下に降りたところ、玄関で丁度七瀬が母さんに挨拶しているところだった。
「今晩はって…何その可愛いの?」
七瀬が目の色を変えて葉子ねえの所に向かう。葉子ねえは身も蓋もない七瀬の様子に思わず苦笑している。
小雨は肩にちょこなんと乗っかって葉子ねえにスリスリしているところだった。
「小雨ぇは小雨ぇと言いますよぅ」
「きゃ~~~かわいい~~」
見ると同様に肩に乗ったユウがぶんむくれて七瀬の耳を引っ張っている。
「痛い痛い!」
そりゃあそうだろう。僕にだってユウの気持ちは痛いくらい分かるように思う。
「ところで七瀬、今日は何しに?」
「何にしにじゃないわよ、あ、おばさま失礼します」
そう言うと七瀬はさっさと上がり込んでリビングへと向かった。
勝手知ったる我が家である、葉子ねえを引っ張っていってソファーに座らせると自分もちゃっかりその横に腰掛けている。
「あなたも雨子さんも二人揃って風邪で熱出して寝込んでいるって言うから、お見舞いがてらにプリント持ってきて上げたのじゃ無い」
そう言うと七瀬ははいとばかりに菓子箱を突き出してきた。
「これプリン、多めに買ってきたから皆さんでどうぞ」
「おっ、ありがとな。まあ、色々あってな。細かいことはおいおい話すよ」
だが七瀬の目はずっと小雨のことを追っている。僕の話聞いているのかな?
「「プリン♪プリン♪」」
念のために説明しておくとこれは僕では無い。加えて言うならプリンが大好きな雨子様でも無い。当の雨子様は苦笑いの最中だ。
いつの間に肩から降りたのか、テーブルの上に載せられたプリンの箱の周りをユウと小雨が嬉しそうに踊りながらぐるぐる回っている。
そんな彼らのことをじっと見ているのは七瀬だけじゃ無かった。
「祐ちゃん?あゆみちゃんのユウちゃんは知っているの。とっても可愛いクマさんだから一度見たら忘れないわ。でもこの可愛いお人形さんみたいな子、一体誰なの?何だか見たことが有るように思うんだけれども…」
小首を傾げて小雨のことをじっと見つめる母さん。
「母さんも覚えているだろう?葉子ねえが昔イベントに出かけていった時に、とんでもなく高い人形を買ってきたことを?」
母さんも思い出したらしい、目に光が入った。
「そう言えばそんなこと有ったような?家族全員でのけぞるような値段だったわよね」
そう言いながら母さんは、ユウと小雨がぐるぐるとテーブルの上で回り続けている姿をニコニコしながら見つめている。バターに成らなければ良いのだけれども。
「小雨ぇ(こしゃめ)ちゃんて言うのかぁ」
七瀬はぼうっとその姿を見つめたまま、目をハートにしている。大概にしないとユウが可愛そうだぞ?
「あの人形に雨子様が力を与えて、小雨を作られたんだよ」
「あらまあまあ、でもどうして作られることに成られたのかしら?」
「そのことについては色々あってね、ご飯の時にでもまた話すよ」
そう言えばどうして僕が雨子様の心?を迎えに行って大変なことに成ったのかとか、そう言うことも一切話していなかったっけ?
にもかかわらず僕が話すのを待っていてくれる母さんに、心の中でしっかりと頭を下げた。
もっとも某かの話はおそらくは和香様がしてくれているのだろうけれども。
「あらそうそう、ご飯の支度しなくっちゃね」
そう言うと母さんは慌ててキッチンの方に向かっていく。だが途中で何か思い出したのか振り返る。
「あゆみちゃんも食べて行きなさいね」
僕はしっかりと見ても逃さなかった。七瀬がしっかりと拳を固めてよっしゃしたのを。
「なあ七瀬、ところであいつの名前なんだけれども小雨ぇじゃあ無くて小雨だからな?」
それを聞いた七瀬は顔を赤くしていた。
「え?え?私そんな事言っていた?勿論小雨よね、小雨」
目が泳いでいるのが明らかだったが、そこは情けで知らない振りをして上げることにした。
小雨はモデルがいます。こう言うのがあるとキャラって作りやすいですよね




