小雨誕生
ゆっくりのんびりでありますが、段々紙面が賑やかになって来ています
新たに登場したキャラ小雨、どうかご愛顧の程よろしくお願い致します
「これどうしたら良いの?」
渡された人形を抱きしめながら葉子ねえが問う。
「そうじゃな、人形のことを意識しながらその名前を決めてやってくれ。後どんな子になってほしいかと言うこと等、強くイメージしてやるとそれに見合ったものと成り居る」
そう言われて人形のことを抱きしめたまま目をつぶる葉子ねえ、笑みが顔に張り付いていて随分楽しそうだ。
見ていると人形から微かな発光があり、その光がゆっくりと葉子ねえを包み込んでいく。
「雨子様これは?」
七瀨に上げたユウの時には見られない現象だった。
「ユウの時は元々七瀨の思いの凝縮されたものが付喪神になったもので有ったから、態々何もする必要が無かったのじゃが、葉子の場合は未だ両者になんの繋がりも無い。じゃからそれを接続同調するようになっておるのじゃ」
「成る程そう言うことなんだ…」
葉子ねえが人形を抱きしめてからそろそろ十分くらい経過しただろうか?
体を包み込んでいた薄い光の膜が薄れ、それによって何かを感じたのだろうか?葉子ねえがぱちりと目を開けた。
「出来たのかな?」
「少し待つが良い、そなたらの言葉に寄れば最終的なインストールと調整が終わるところじゃ」
雨子様は葉子ねえの手の中から人形をそっと受け取ると、ベッドの上に一人で座らせた。
「…ん」
言葉にならない音を発したかとゆっくりと瞼を開いた。
そしてきょろきょろと辺りを見回し、葉子ねえを見つけると…
「ご主人しゃま」
と言うなり飛びついた。
「ご主人しゃまじゃと?」
雨子様が何とも言い難い顔をしている。ぐるりと頭を巡らせて葉子ねえを見る。
「葉子ねえ、こんな時にテヘペロなんか要らないから…」
僕が言うと葉子ねえは頭をかいた。
「はぁ~~~」
雨子様が盛大にため息をつく。
「まあ良い、して葉子よ、そやつの名はなんと言うのじゃ?」
「名前…名前ね、雨子さんから雨の一文字を頂いて、小雨って決めたの」
「小雨ぇ(こしゃめぇ)小雨ぇ」
そのちび助は立ち上がるとトンボを打ちながら喜びはしゃいでいる。
一体何だってこんな舌っ足らずな奴が生まれたのか、僕も雨子様もあきれ顔で葉子ねえを見ていた。
多分僕達の視線が葉子ねえには非常に刺激的だったのだと思う。何も言わない内から弁解し始めていた。
「あのね、違うの、って、違わないんだけど。家の近所に綾ちゃんていうそれは可愛い女の子が居るんだけど、その子の舌っ足らずのしゃべり方がそれは可愛くて可愛くて…あんなのが良いなあって思っていたら、こうなっちゃった」
「なっちゃったじゃないだろうに」
僕は思わずそうぼやく。
雨子様は丸で嫌々でもしているように頭を横に振り、正体不明の言葉をぶつぶつ呟いている。大丈夫か雨子様?
「まあ良い、葉子がそう望んだのならそれも在りじゃろう」
また大きなため息。
「これ小雨」
「ハイな、雨子しゃま」
雨子様は眉間に皺を寄せ天を仰ぎ見た。
「どうにもこうにもなんと言うか、きりっとせんと言うか、ええい、どう言えば良いんじゃ」
雨子様にしてみたら、葉子ねえが敬意を表して小雨と名付けているだけに何とも痛し痒しと言ったところなのかな?
「まあ良い、小雨よ」
「ハイな、雨子しゃま」
「我がそなたに与える仕事は、これなる葉子とその子を万難を排して守ることじゃ。しかと申しつける」
「はい、分かりましゅた雨子しゃま」
そんな舌足らずな返事をする小雨を見ながら雨子様の眉がとろんとへの字に下がる。
「大丈夫なのかや?自分で生んでおいて言うのも何なんじゃが、我はなんだか自信がのうなった」
そう言うと雨子様はベッドにうっぷしてしまった。
かく言う僕もそれに対して一体なんと言えば良いのやら。
だが小雨と葉子ねえは早くも完全に意気投合して、実にワイワイと楽しげだ。
「ところでご主人しゃま、小雨ぇはお腹が空いたのでございましゅ。何か食べたいのでありましゅ」
その台詞を聞いたとたん雨子様はがバリと身を起こした。
「なんじゃと?小雨もなのか?」
雨子様曰く、付喪神やら分霊やらは普通は物を食したりすることは無いそうな。
形式として食べることは偶にあるが、腹が空いたと自ら食べることなど考えられないとのこと。
「ユウの時と言い一体どうなって居るのじゃ?」
雨子様はしきりに首を傾げ、思い悩むのだった。
最近思うのですが、物を書くに当たって少しでも前進しようと思うと、良い眠りが大切ですねえ
ここのところ痛感しています




