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天露の神  作者: ライトさん
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分霊作成

毎回いつもお読み頂いている方々、本当にありがとうございます。そのことがとてもとても励みに成っております。これからもどうかよろしくお願い致します。

 少しばかり経つと雨子様が、受け取ったパソコンを手に部屋に入ってきた。


「あ、そうか。葉子ねえのパソコンはノートだったんだな」


 雨子様に引き続き葉子ねえも入ってくる。僕は急いで葉子ねえの部屋に椅子を取りに行った。戻ると既に葉子ねえは僕のベッドに、雨子様は僕の椅子に座っていたので仕方なく持ってきた椅子に座ることにした。


「ではこの機械をばらしてしまうが良いかの?」


念のために雨子様は葉子ねえに返事を聞く。


「!」


葉子ねえは黙って頷いた。


 その返事を確認した雨子様はノートの筐体をそっと撫でる。するとその部分から部品が光となって消えていく。


「?どうなっているのこれ?」


驚いた葉子ねえが聞く。


「いや、僕にも分からないよ。雨子様?」


すると雨子様は引き続き作業して、不必要な物を次々と消し去りながら説明してくれた。


「今我がやって居るのは、これから使う部品を取得する際に邪魔な物をほんの少しだけ位相を変えた空間に収納すると言う作業じゃ。こうすることでこのノートパソコンとやらの部品に、最小限のダメージしか与えること無く取り外していくことが可能になる」


「成る程」


 そう言いつつ僕の頭の中に浮かんだのは最近読んでいる小説の中に出てくる、ストレージやアイテムボックスだった。

物は使いようと言うが、こう言う使い方も出来るのか、ちょっと感心してしまった。


 しかし部品が微かに光ると音も無く中に消えていくのを見ると、ちょっと不気味な思いもしてしまう。


「あの、雨子様。その位相を変えた空間って言う奴は、生物が入っても問題ないのですか?」


僕がそう聞くと雨子様はにっと笑った。


「祐二よ、入ってみるかえ?」


 雨子様がそう言うってことは大丈夫なのだろうけれども、あの笑い。どうにも気になって仕方が無いのでご遠慮申し上げることにした。


「いいえ、遠慮しておきます」


雨子様はパソコンの分解を進めながら微かに口をとがらせた。


「なんじゃつまらんの。まあもっとも入ったところでそなたの主観にとっての時間は経過せぬから、入っていないのと同じなのじゃがな」


「おおおお、ステイシスフィールド(停滞空間)なんだ!」


きょとんとする雨子様。


「なんじゃそのステイシスフィールドとやらは?」


「僕が好きなSF小説の中に良く出てくる設定で、その中に入れた物は全て停滞、つまり時間が停止するって言うことになるんです」


「なんと!人と言う物は面白い物じゃな。自身では全く作ることが出来ないものでも考え、話の中で使うとな?何ともびっくりじゃ!」


 そうやってまじめに驚く雨子様に、僕は今度色々そう言った本を読ませて上げようと思った。


「さて、どうやら目的の物がとれたのであるが、因みにこれはおそらく葉子の言って居るハードディスクとやらじゃな?」


そう言うと雨子様はノート用の薄いハードディスクを葉子ねえに手渡した。


「え?え?渡されても困っちゃうんだけど?」


葉子ねえが戸惑っている。そりゃそうだよなあ。


「何々?困るとな?別に我が預かっても良いのじゃが…。成る程誠司様と書いてあるの」


 葉子ねえはそれを聞くや否や、真顔に成って慌て始めた。


「何それ?何言っているの?まさか雨子様…?このままでも読めるって言うの?」


僕は笑いながら葉子ねえに説明して上げる。


「そうなんだよ葉子ねえ。雨子様の方がそこいらのコンピューターよりよっぽど優秀だから、きっと暗号化されたファイルでもすらすら読めちゃうと…」


僕の説明に慌てた葉子ねえがぶんぶん手を振り回す。


「だめぇ~雨子さんだめぇ~~」


それを見た雨子様はそれこそ腹を抱えて笑っている。


「葉子よ、先ほどの仕返しじゃな?くっくっく…」


だがそれも葉子ねえが降参のポーズを取るまでだった。こういう所雨子様は、葉子ねえに凄い甘いというか、優しい。


「冗談じゃよ。中を読んだりはしとらん、鎌をかけただけじゃ」


「なんですって?」


 葉子ねえは手を振り上げてぽかぽかと雨子様に殴りかかる。あ、字面通りには取らないように。およそ見た感じ丸で漫画のワンシーンみたいだから。


 こうやって見ていると雨子様と葉子ねえは仲の良い本当の姉妹のようにも思えてしまう。いつの間にこんなに仲良くなったんだろう?一頻りわぁわぁやった後雨子様は真面目な顔に成った。


「じゃれ合うのはこれ位にして、少し集中させて貰うの」


 そう言う雨子様の右手には取り外されたCPUが載せられている。

雨子様は目を瞑るとそれに向かって意識を集中させた。


 銀色したそれが手の平の上十㎝くらいの所にふっと浮かび上がり、ラジアル方向にゆっくりと回転し始める。時が経つうちに徐々にそれは速度を速め、やがてには目にも留まらないような高速度で回転した。


 だが動きはそれだけに留まらないようで、物体の重心らしき位置を中心にランダムにも回転し始め、何時しか銀色した球状に成る。


 雨子様はその球の上にもう片方の手の平をかざし、白い光りの霧のような物を振りかけていく。その工程が進むにつれ次第に球は虹色を帯びていく。そして完全に虹色と成ったところで雨子様は目を開いた。


「完成じゃ」


 そう言うと雨子様はその虹色した球体をひょいと僕に手渡してきた。

かつて同じような物を作った時には丸々一晩かかり、加えるなら雨子様自身バテバテに成っていたのだが、今回は実にスムースだ。和香様から貰った精が仕事をしているって言うことなんだろうなと思った。


 ところでこの球体、手に触れた途端に暖かいと感じる。そしてつるつるなんだけれども柔らかい?軽いような重いような?手にただ持っているだけなら然程重さを感じないのだが、その位置から動かそうとすると妙に抵抗が生じて重いように感じてしまう。何とも不可思議な球体だった。


「葉子よ、そなたの人形を取ってくれぬか?」


雨子様がそう言うと、葉子ねえはベッドの上の棚に置いてあった人形を手渡した。


「何とも可愛らしい人形じゃの。これは一体何を模して居るのじゃ?」

 

お気に入りの人形のことを可愛いと言われて嬉しそうにしている葉子ねえ。


「それはねジーニーなの」


「ジーニー?」


聞き慣れない単語だったので思わず聞き返してしまった。


「アラビアンナイトとかに出てくるランプの魔神知っている?」


僕はかつて見たデステニーの映画に出てくるコミカルな魔神のことを思い出した。


「確かアニメのアラジンに出てくる奴だよね?」


そう言うと葉子ねえは顔をほころばせた。


「そうそう、あれの女性形がジーニーなのよ」


「そうなんだ。ポニーテールが可愛いし、薄衣を纏っているところなんか何だか神秘的だね?」


「でしょでしょ?何だか本当に可愛くって一目惚れして買っちゃったのよ」


「因みにおいくら万円?」


ああ言う所で出品されている物で。出来の良い物はそれなりのお値段がすることを知っているので思わず聞いてしまった。


「両手には少し足りなかったかなあ?」


「げっ!」


確かにこの人形はとっても可愛くて出来が良い。しかしそのお値段は脅威だ!


 僕達がそんな話をしながらワイワイやっている間に雨子様は次の段階へとプロセスを進めていた。


 人形の眉間にとんと人差し指を押しつけ、光る点のような印を付ける。


「祐二、その球体を葉子に渡すが良い」


 僕は言われるがままに球体を葉子ねえに渡した。

葉子ねえは不思議な球体の感触に眉根を寄せている。雨子様にそのことを聞こうとしつつ、今はその時では無いと思ったのか何も声を発さずに口をつぐんだ。


「葉子よ、その球体をこの光る点の部分にゆっくりと押しつけるのじゃ」


葉子ねえは言われるがままに球を押しつける。最初少し抵抗があったようだが、途中からはスムースにめり込み、消えていった。


「良かろう、完成じゃ」


そう言うと雨子様は人形を葉子ねえに引き渡した。



分霊作成までが長かったなあ

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