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天露の神  作者: ライトさん
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「夜半の出来事」

お待たせしました。


 風呂から上がって少し後、自室でのんびり本を読んでいた雨子様は、遠慮がちに部屋の扉が叩かれるのを耳にした。


「どうぞなのじゃ」


 雨子様がそう言うと、ゆっくり開いた扉の向こうから現れたのは節子だった。


「珍しいの、お母さんがこの時間に我の部屋に来るというのは」


 そう言う雨子様に小さく笑いながら節子が言う。


「あら、そうだったかしら?」


 対して雨子様、大いに苦笑しながら言うのだった。


「うむ、殆どの場合は我の方が、相談事を抱えてお母さんを尋ねておったからの?」


「そうだったかしらねえ…」


「うむ、それでお母さん、何か有ったのかえ?」


 そう問う雨子様に、ゆっくりと頷きながら節子は言うのだった。


「そうね、まず一つは、報告って言うほどのことでも無いのだけれども、ニノちゃんが、ちゃんとした女性になりたいみたいなことを言って頭を下げてきたの」


 それを聞いた雨子様は面白そうな顔をしながら節子に聞く。


「それでお母さんはどう対応してやるつもりなのじゃ?言葉通りに料理や家庭の切り盛りを教えてやるつもりなのかえ?」


 対して節子は苦笑しながら言う。


「呆れた雨子ちゃん、まさかあなたそれを本気で言っている訳じゃ無いわよね?」


「くっくっく、まあお母さんならそう言うはの」


「彼女がまず何を選ぶのか?それは彼女自身に決めて貰うわ。その上で、もし私に何か学ぶところがあるというのなら、喜んで教えて上げたい、そう考えているのだけれども、良いわよね?」


「じゃな、我はそれで良いと思うの。しかしそれはいずれにしても、このような時間に尋ねてくるほどの大事とは思えぬのじゃが…」


 そう言う雨子様に笑いながら節子は言うのだった。


「あら、だからまず一つはっていったじゃ無い?」


「確かにそうであったな…。それで何が有ったのかや?」


 すると節子はそれまでとは違って、笑みの消えた顔をしながら話し始める。


「ええ、正確に言うなら、私自身に何かがあった訳では無くって、この子になのだけれどもね」


 そう言うと節子は、すっと左腕を前に突き出すのだった。

するとその腕に填まっていた青龍の腕輪がふっと霧散し、節子と雨子様の丁度中間に、ぐるりととぐろを巻いた小さな龍が姿を現すのだった。


「むっ、無尽かえ?何があったというのかえ?」


 丁寧に頭を下げる無尽の顔を覗き込みながらそう問う雨子様。

そんな雨子様に、申し訳無さそうに言う無尽。


「夜分遅く、このような時間にお尋ねして申し訳御座いません、雨子様。そして節子様におかれましても、我が願いの為にご足労をお掛けして申し訳ありません」


 そう言うと無尽は、節子に対してもきちんと頭を下げきるのだった。

そんな無尽の後ろ姿を見ながら、礼をし終えるのを待って雨子様が口を開く。


「それで…?」


 今一度雨子様の方へ向き直った無尽は、落ち着いた声で言うのだった。


「はい、それが、お預かりしておりました小龍の意識が、どうやら目覚めまして御座います」


「何?それは本当か?」


 思わず雨子様は身を乗り出す様にして聞く。勿論無尽の言葉を疑った訳では無い、ある意味それだけ雨子様にとって、気がかりなことで有ったと言うことなのだった。


「はい、間違いなく」


 その言葉を聞いた雨子様は暫時考え込む。

そんな雨子様に遠慮がちに声を掛ける節子。


「あの、雨子ちゃん?」


 ふっと意識を浮かび上がらせた雨子様が返事をする。


「済まぬお母さん、なんであろうか?」


 すると申し訳無さそうに言う節子。


「この先のことは雨子ちゃんに任せても良いかしら?さすがに今日はもう眠くって…」


 その言葉を聞いた雨子様は慌てて言うのだった。


「これはなんと気が利かぬことを、ごめんなさいなのじゃ。ここから先は我の領域のこと故、お母さんはもう休んでたもう」


 そこまで言うと雨子様は無尽を一瞥しながら言う。


「暫し待つのじゃ」


 無尽は黙って頷いて見せる。

そんな無尽に微かに頷いて見せると、節子を見送る様に雨子様は廊下に出る。


「色々済まぬの、お母さん」


 そう言いながら雨子様はしゅんとした表情をする。

そんな雨子様に笑いかけながら節子は言う。


「なあに雨子ちゃん、さっきから何だか謝ってばかりじゃ無いの?」


「そうは言うがな、あれもこれもと殆どどれも、我の身内話の様なものでは無いか?」


 そう言いながら申し訳無さそうにしている雨子様に節子は言う。


「馬鹿ねえ雨子ちゃん、あなたは一体私の何?」


 その問いにおずおずと口ごもる様に言う雨子様。


「…娘?」


「自信を持って言いなさい!」


「娘なのじゃ…」


「なら気にせず頼りなさい、ね?」


「うむ…」


 そう言う雨子様を軽く抱きしめると、静かな足取りで階下へと姿を消す節子。

後を見送りながら呟く様に雨子様は言うのだった。


「はぁ、いつになったら我はお母さんに敵う様になるのじゃろうな…」


 暫し物思った後、気を取り直した雨子様は、祐二の部屋の前に立つと、そっと扉をノックする。


「どうぞ…」


 中から応える声が聞こえてくる。どうやら部屋の主はまだ起きていた様だった。


「すまぬ祐二、少し来てもらえるかの?」


 扉を開けつつそう言いながら中に入る雨子様。

中では祐二が静かな、でも嬉しそうな笑みを浮かべて迎えてくれるのだった。






また話が一つ進んでいきます






















いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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