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天露の神  作者: ライトさん
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「ニノと節子」

お待たせいたしました


 賑々しくも華やかに歓迎会を終え、ざっと片付けをした後、順を待って風呂に入り、寝るばかりとなる。


 だが、一番風呂をどうぞと言ったところ、口ごもりながら何故か渋るニノ。どうしてと話を聞くと、神社の温泉に放り込まれた経験こそ有るものの、一般家庭のお風呂には入ったことが無く、手順を踏んで入ることが出来るのか不安なんだとのこと。


 まさかそんなことで不安を感じるものなのかと、皆苦笑を禁じ得ないのだが、それはあくまで当人がどう思うかなのだ。ならばどうするかと言うことになるのだが、対応策となると自ずと決まってくる。


 と言うことで、家族の内で最も面倒見の良い女性、つまりは節子が手伝いながら共に風呂に入ると言うことになるのだった。


 ニノとしてはまさか節子に、そんな労を執ってもらえるとは思いもしなかった様で、恐縮することしきり。


 しかしそうやってかちんこちんになったニノでは有ったが、風呂場に入ってから数分もしない内に、明るい笑い声を響かせたところを見ると、心も体もすっかりとリラックスできている様だった。


 それは風呂上がりの麦茶を頂きに、節子とキッチンへ向かう時の様子を見ても分かるのだった。


「ニノよ、楽しかったようじゃな?」


 リビングのソファーにてお風呂の順番待ちをしながら、祐二や令子と歓談していた雨子様が声を掛ける。


 するとニノは頬を紅潮させながら、間髪入れずに頷いて見せるのだった。


「はい、雨子様、人の身での風呂が、あれほど心地よいものとは知りませんでした。以前の私にとっては、ただ身体の表面を身ぎれいにする、その程度の意味しか御座いませんでしたから」


 人の身を得ることの意味を知りつつあるニノのその様子に、それは良かったとばかりに笑みを湛える。


「それから雨子様、私はその、女性なのでありますよね?」


「む?未だそのようなことに疑問を持っておったのかや?」


 雨子様はそう問い返すのだったが、実のところニノが何を意図してそう言ったのか?それについては推し量りかねていた。


「いえその、女性の分類にあることは知っておりました。それはもうただのメイドロイドであった頃から…」


 そこまで言うと僅かに言い淀むニノ、だが雨子様は黙って彼女が口を開くのを待つのだった。


「けれどもこうして実際に女性として人の身を頂くと、女性というのがただの性の区切りだけでは無い様な、そんな気がしてきております」


「ほう…」


「ただ、ではその定義はと問われますと、私にはまだ語るべきものが何なのか全くはっきりしておりません。一体どう表現すればよろしいのでしょうか?厳然とそこにあるにも拘わらず、境目になるところが限りなく薄く広がり、丸でオールトの雲のようです」


 その言葉を聞いた雨子様、目を丸くしたかと思うと笑う。


「くふふ、オールトの雲かや…」


 と、それを聞いていた令子が不思議そうな顔をしながら問う。


「ねえねえ雨子さん、その、オールトの雲って何なの?」


 問われた雨子様、にこにこしながら出来るだけ噛み砕いて、分かり易く教えようとするのだった。


「そも、オールトの雲とは、恒星系形成初期、惑星を生成するのに使用されなかった微小天体等が、外周巨大惑星の重力によりはじき出され、星系外縁部に集うた、境目もはっきりしないほどうっすらと広がる、正に雲の様な存在じゃ」


「ふ~~ん、そうなんだ…」


 令子はそう言うものの、全く分かっている風で無い。仕方無しと苦笑しながら雨子様は言う。


「パソコンを使って仮想的なものを見せてやるが故、部屋に来るが良い」


 そう言うと雨子様は立ち上がり、令子を連れ立って部屋に向かいながら祐二に言う。


「そう言うことじゃから、風呂には祐二が先に入っておいてくれるかや?」


 祐二としては雨子様達に順番を先に譲るつもりだったのだ。しかしその話を受けて早速入浴の準備に部屋に向かう。


 そんな祐二や雨子様達のことを見送っていたニノ、静かな声で節子に言うのだった。


「私は元々仕事の都合に合わせて…つまりはメイドロイドという発想に合わせて、女性の形態を取りました。そしてその形態故、私は自身が女性なのだと思っていました。けれども…」


 そこまで言うとニノは、暫し物思う様に口ごもった。


 静かに時が流れていく、けれども節子はニノが再び話し出すまで、じっと黙ったまま、辛抱強く待っているのだった。


「私はこの身体を得て、形としては真に女性になったのではありますが、でも…、節子さんや令子さん、はたまた既に女性と成られております神々のことを見ますに、自分が、まだまだなんだなって思えて仕方有りません。それでその、節子さん。これからしばらくの間ですが、どうかよろしくお願いいたします」


 そう言うと丁寧に頭を下げるニノなのだった。

そうやって真摯に向かい合ってくるニノに対して、節子はゆっくりと頷きながら、厳かに言うのだった。


「はい、承りました、一緒に頑張りましょうね?」


「はい!」


 そう言って嬉しそうに笑みを浮かべるニノ。その笑顔はおそらくそれまで浮かべた笑みの中で、最高に分類されるものなのだった。







またもいいねをありがとうございました^^




はてさて、文の長短と、書きやすいか否かというのは

実は本当に一致しない、今回はそのことを痛感しました

短くはありますが、マジ苦労した今作品であります












いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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