「爺様の嘆き」
お待たせしました
さて、爺様が令子のたっての願いを聞き届けた形になったのだが、実のところ、先程のビール吹きかけ事件の汚名返上、名誉挽回の意味も有るのだった。
だが令子としては先の事件などもうとっくに忘れ去っており、ただもうひたすらニノの為を思って大喜びしているのだった。
そしてもう一人、令子以上に大喜びしている者が居る。
それは今回ニノの改造を一手に引き受けようとしていた雨子様なのだった。
いくら雨子様が爺様から頂いた小宝珠を使って、自らをバージョンアップさせていたとは言っても、ニノのようなアンドロイドを、ほとんど人間同様にまで変容させるのは、並大抵の苦労では無いのだった。
「雨子ちゃん、思わぬ展開やったな?」
にこにこ顔で雨子様にそう言う和香様。
対して、苦笑しながら返事をする雨子様。
「まあそれは確かにそうなのじゃが…。果たして爺様に丸投げしてしまって良いのじゃろうか?我としてはどうしても一抹の不安が残ってしまうのじゃ。しかも加えて言うならニノは女性として存在して居るからの?」
雨子様のその言葉を聞いた和香様、言われてみれば成る程と、少し顔を顰めながらニノと爺様、その二人を交互に見るのだった。
「うわぁ…確かに言われてみたらそうやなあ…。大本を辿ればうちらはある意味無性では有るんやけど、実際顕現するのにどちらかの性を使っとるからなぁ。どうしたもんやろ?」
傍らで二柱の会話を聞いている小和香様も、とても心配そうな顔をしているのだった。
と、そこへ爺様から声が掛かる。
「お前達は一体何をぐちゃぐちゃと言って居るのじゃ?」
「いや、そうは言うたかて…」
そう言う和香様に、爺様は物凄く厭そうな顔をしながら言うのだった。
「お前は一体儂のことを何じゃと思うて居るのじゃ?いくら儂とてそれ位のデリカシーは持って居るわ」
和香様は、爺様の口からデリカシーという言葉が出たことに大きく目を見開くが、何とか踏みとどまって、何も言うこと無く開きかけた口を閉じることに成功した。
尤も爺様は、そんな和香様の動きの詳細を何一つとして見逃すことは無かった。
そして実に不機嫌そうな表情をしながら口を開くのだった。
「和香よ、物凄く失礼なことを言いそうな顔をして居るが、実際には言わずと置いたことは評価してやるのじゃ。じゃがそれでも見逃す為の物を要求させて貰うが良いか?」
爺様の突然の言葉に思わず青ざめてしまう和香様。
一体爺様は何を言おうとしているのか?不安な思いが無限大に膨らんでしまう。だが聞かない訳にも行かず、小さく頷くようにするのだが。
そんな和香様を見た爺様が苦笑する。
「お前は儂のことを一体どの様な存在だと思って居るのじゃ?それほど理不尽なことを言うと思って居るのか?」
ぐっと顔を前に突き出して、至近距離で睨むようにして言う爺様の迫力に負けたのか、思わず素直にこくりと頷いてしまう和香様。
それを見た爺様、禿頭を手でぴしゃりと叩いたかと思うと、雨子様に向かって言うのだった。
「雨子よ、儂はそんなに怖いのか?」
その問いに対して雨子様は真面目な顔をしながら答える。
「我は爺様のことをある程度知って居るから、そうは思わぬが、しかし爺様、爺様は自覚して居らぬのかもしれんが、えげつない圧を発して居るぞ?」
そう言って爺様に注意を促す雨子様。
雨子様の言葉に目をぱちくりとさせた爺様、またも頭頂部をぴしゃり。
「これは済まんことをした」
そう言いながら和香はと見ると、何と節子の後ろに隠れて居る。
「一体何をして居るのじゃ和香は?神が人の後ろに隠れてどうするのじゃ?」
「そんなん言うたかて、現状爺様に対する最強は節子さんやんか?」
和香様のその言葉に、爺様を始めとした、その場に居た者全てが吹き出してしまう。
「まあ確かにそうじゃの?」
雨子様もその言葉を肯定して、共に笑い声を上げるのだった。
一頻りの笑いの後、爺様は和香様に向かって言う。
「それで和香、相談なのじゃが、今晩一晩で良いので小和香を貸してはくれぬかの?」
妙なことを言い出す爺様に、怖々と言った感じで和香様が問う。
「そら、事と次第によっては貸さんでもあらへんけど、そやけど小和香に変なことせんといてや?」
「何度も言うようじゃが、和香は一体儂のことを何じゃと思うて居るのやら…。まあ良い、要は先程の話しの続きじゃ。ニノの身体、大まかなところは我が作るが、その、何だ、女として係わるような微妙なところは小和香に任そうと思うのじゃよ」
「ああ、そう言うことかいな」
そう言うと和香様、ようやっと安心したのか節子の後ろから出て来るのだった。
その節子、まさか和香様に盾にされるとは思ってもみなかったようで、何とも言えない表情で笑っているのだった。
「と、言う話しなんやけど、小和香、かまへんか?」
和香様がそう尋ねると、小和香様は一も二も無く頷いて見せるのだった。
「もちろんでございます和香様、ニノもそれでよろしゅう御座いますよね?」
一応頷くニノなのだが、実のところ、今一良く分かっていないのだった。だがそれでも何故頷けたかというと、そこに自身が信用信頼している小和香が介在してくれるからに他ならないのだった。
さてこの頃になると、さすがに山のように有った料理も食べ終え、皆が満足してお腹をさすっている状態なのだったが、そんな様子を見ながらにんまりと笑う節子。
「皆さん十分お腹いっぱいになった?」
節子のその言葉に、その場に居る者達は皆お腹をさすりながら回答する。
「はい、ごちそうさまです」
「節子さん、お腹はち切れそうや、おおきにな」
「もう下を向けぬのでは無いかと思うてしまうな」
「おなかいっぱぁ~い」
それぞれがそれぞれに、お腹がくちくなったことをアッピールするのだった。
節子はそれを確りと聞き届けると、頤に人差し指を押し当てながら、思案顔をしつつ言うのだった。
「じゃあこの後、ロムシアノのケーキ出そうかと思ったのだけれども、無理かしらねぇ」
だがその言葉を聞いた途端に女性陣の目の色が変わる。
「聞いたかや?」
「聞いたで?」
「はい、聞きました」
「ロムシアノ言うてたな?」
「うむ」
「間違い御座いません」
「ロムシアノ…」
そんな女性達の何だか怪しい有り様を目にしていた爺様、怪訝な顔をしながら祐二の手を引き小声で質問する。
「祐二よ、あやつらは一体何を言うておるのじゃ?」
祐二は苦笑しながら答える。
「爺様、ロムシアノって言うのは、この辺りで美味しいので有名なケーキ店なんです。そして凡そ女性はそう言った甘味に目が無いことが多いのです」
だが相変わらず爺様の目は異様な物を見る目つきをしている。
「しかし先程節子が問うた時に、確か皆お腹一杯とか言うておらなんだかな?」
「言っていましたね…」
「なのにどうしてあやつらは食う気満々なのじゃ?」
そう聞いてくる爺様に、祐二は思わず吹き出さないように気をつけながら言うのだった。
「あの、主に女性の場合、別腹というのが有りまして…」
爺様の目が思わず丸くなる。
「しかし胃袋は一つで有ろう?」
「それはそうなんですが…」
一体どう説明したものかと頭を抱える祐二。
「けれども女性達は、ことデザートを食べる時、それを収める余裕を作り出すらしいのです」
祐二のその言葉に、呆れた目つきで女性達を見つめる爺様、そして天を仰ぎ見ながら実に情けなさそうにぼやくのだった。
「まさかニノの身体を構成するときに、そのようなギミックまで付けねばならぬとは…。これはうっかり安請け合いしてしもうたかも知れぬなぁ…」
勿論この後、部屋の中に笑いが満ち満ちたのは言うまでも無いことなのだった。
書けば書くほどに爺様に茶目っ気が溢れてくる?
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