和香様のお強請り
筆者も唐揚げが大好きなのですが、一口に唐揚げと言っても色々な調理法があるのですねえ
「なあ、それ何やったかいな?」
夕食を囲んで大人数でワイワイしているところ、和香様も大喜びでご相伴している。いや、今回は和香様こそお客様なのでご相伴では無いな。でも何故かその言葉が似合ってしまう。
何故だろう?あ、分かってしまった。葉子ねえのせいだ。お腹が大きい葉子ねえがで~~んと座っているのが一番偉そうに見えるので、それでそんな風に見えてしまうのだ。
「和香様これですか?」
と葉子ねえが指すのはマヨネーズ。
「そうそう、それマヨネーズ言うんや。なんや知らんけどめっちゃ美味いなそれ。今まで経験したこと無い味の一つやな」
そう言いながら和香様は、自分の皿に取った唐揚げの上に、マヨネーズをどちゃりと掛ける。
「「「「「…!」」」」」
その余りのハードぶりに言葉を無くす人四人と神様一柱。
「のう、和香よ。それはいくら何でも行き過ぎじゃと思うぞ?」
見かねた雨子様が言う。
「でもこれ凄い美味しいんやで?」
雨子様は緩やかに首を横に振りながら応える。
「まあ確かに本来は好き好きで良いものでは有るとは思う。思うのじゃがな、唐揚げは母御が丁寧に上げることによって、からりと香ばしゅう調理した料理なのじゃ。それを斯様にどろりと塗してしまうのは、いささかの」
母さんが手間暇掛けて作ったものと言うことで、その思いを尊重してくれようとする雨子様の主張に手を叩きつつ、母さんは和香様に優しく言った。
「雨子様の仰って下さることもその通りなのですが、…ありがとうございます雨子様…唐揚げにタルタルソースというマヨネーズに似たソースを掛けて食べる手法もありますので、お気になさらずにお食べ下さいませ」
そう言う母さんに和香様は目を細めた。
「なあ、雨子ちゃん。自分ほんまにええとこに住まわせてもろとるな。めちゃくちゃ羨ましいで。なあなあ、うちも住んだらあかん?なあなあ」
大所の御祭神様という役どころなのに何とも可愛らしいそのおねだり姿に、僕達家族四人は下を向いて一心に笑いをこらえていた。
ねだられている雨子様自身も、必死になって笑いを堪えているのがありありと分かる、でも必死になって押さえて一喝。
「いい加減にせよ和香。そうで無くとも我のような居候を抱えて居るこの者達に…」
ああ、雨子様自分でそんな事言っちゃう?
「…更にお前のような脳天気な居候を抱えろというのか?それだけでは無い、小和香のことはどうすると言うのじゃ?」
そう雨子様に諭されると和香様は泣きそうな顔になった。
「あ~~ん、あかんの?むぅ、雨子ちゃんだけずっこいで!そやけど雨子ちゃんの言う通りでもあるし、でもええなあ。なあなあ時々でええから遊びに来させてくれへん?」
和歌子様のそのおねだり眼は今度は母さんへと向かう。どうやら我が家で第一の決定権を持っているのは母さんだと見抜かれてしまったらしい。
突如矛先の向いた母さんは、目を白黒させる。その母さんの肩をそっと叩いて頷く父さん。吉村家の危機に完全として夫婦で立ち向かう姿、なかなかの名場面である。
「わ、この二人ほんとに仲ええ夫婦やな」
「夫婦和合は良きことじゃからな」
神様二人がそんな事を小声でこそこそ言っている。
「こほん」
顔を赤くした母さんが咳払いを一つした。
「葉子のために加護を下さった方のご来訪を歓迎こそすれ拒んだりは致しませんとも」
そう言うと母さんは和香様に頭を下げた。
「聞いた聞いた雨子ちゃん、ちゃんと許しもうたで?」
「ああ、分かった分かった。母御よまた迷惑を掛けることになるがすまぬの」
しかしこうやって雨子様をお迎えしただけでも奇跡なのに、和香様まで迎えることが出来るというのは凄いことだと思う。
今回は少し短かったです(^^ゞ




