「小龍との会話」
小龍。。シャオロンだっけ?
さて、祐二の腕にあった腕輪、ゆっくりとその形を解いて小さな龍の形に戻った。
雨子様曰くなれの果て?は、龍の形に戻りながらも、何だか妙ジタバタしている。
そんなジタバタしている小さな存在に、より目になりそうな程顔を近付かせた節子が問う。
「この子一体何をこんなに暴れているのかしらね?」
もしかして節子の目には、上手く身体を動かせなくて、もどかしがっている赤子の姿とでも見えたのかも知れない。
それはもう、そうすることが当たり前の自然であるかのように、そっとそのちび龍を雨子様の手から受け取り、手の平に載せて優しく撫で付けて上げる節子。
その思いの籠もった優しい愛撫が、もしかして龍の心に届いたのだろうか?
ジタバタと暴れ続けていたその龍は、やがてに静かに落ち着きを取り戻し、もそもそと節子の手の平の上でとぐろを巻くと、つぶらなその小さな目で静かに皆を見上げるのだった。
そしてきらりとした物がその目から一粒二粒こぼれ落ちる。
「雨子ちゃん…この子泣いている?」
余りに小さな光の粒だったので、果たして本当に零れたのか零れていないのか、確信を持って問うことが出来ない節子なのだった。
雨子様はそんな節子の手に自らの手を添えながら言う。
「うむ。泣いて居るの…、ちと尋ねてみるかの?」
そう言いながら、龍の間近まで顔を近づける雨子様。小さく細く口をすぼめるとちちちちと甲高い音を発し始めるのだった。
「雨子さん何を?」
不思議に思った祐二が問いかけると、少し照れくさそうに笑いながら雨子様は言うのだった。
「こやつのような龍族の類いはこう言った極小の頃、エネルギーの受容器がまだ良く出来ておらず、念話を受け取ることを苦手として居ることが多いのじゃ。かといって鼓膜の形成もまだ良く出来ておらぬ故、高い音しか聞こえ難いと来て居る」
そうやって説明していたところ、雨子様は祐二の何とも言えない視線に気がついて動揺する。
「…?祐二?何故にそのように我を見るのじゃ?」
不安そうな口調でそう言う雨子様に、祐二はゆっくりと頭を横に振り、温かな笑顔を浮かべて見せながら言うのだった。
「勘違いしないで雨子さん。僕はさすが雨子さんだなって、感心していたんだよ」
「そ、そうなのかえ?」
雨子様は嬉しそうにそう言いながら、もじもじと少し身を捩る。
普段はとてもえらそうな風なのに、時折こんな風に可愛くなるのだからと、きゅうっと胸を締め付けられた節子が、後ろに回ってその雨子様を抱きしめる。
「な、何なのじゃ?」
「ほんと、良い子ね?雨子ちゃん?」
「そ、そうなのかえ?」
節子の行動原理も、その言葉の意味も、未だ良く分からない雨子様だったのだけれども、それでも節子の身体の温もりが心地よく、少し身を預けてしまう雨子様。
そうやって節子に甘える姿を見せる雨子様に、軽く苦笑しながら祐二は先ほどの続きの言葉を語る。
「さすが思兼神だって思ってしまったんだよ」
そう言う祐二の言葉に、ほんの少し嬉しそうにする雨子様だったが、直ぐにふくれっ面をする。
「え?そこでなんでふくれっ面?」
訳が分からないと言った感じで、驚きを持って言葉にする祐二。
それを見た節子が雨子様の背後でくすりと笑っている。
「馬鹿ね祐ちゃん、色々な多面性を持つ雨子ちゃんだからこそ、祐二に見て欲しい部分があるのよ、でしょ?雨子ちゃん」
思わぬ形で自らの心の奥に有る思いを、するりと祐二にばらされてしまった雨子様は、顔を真っ赤にしてしまう。
「お、お母さん…余りそのように赤裸々にばらしてくれるでない…」
そう言うとくるりと振り返って、節子の胸元に顔を埋めて、今のその顔を祐二に見られないようにとするのだった。
「ところでさ、そのちっこい龍、それ、大丈夫なの?」
心配そうな祐二の声に、慌ててその様子を見ようとする節子と雨子様。
あろうことか節子の手ごと雨子様に握られていて、そこからはみ出した小さき龍が必死になって藻掻いているのだった。
「ああ、これはしたり…」
慌てた雨子様がその手を開くと、節子の手から抜け出てきた小龍が、何やら甲高い声で頻りとちーちーと抗議の声を上げているようだった。
「すまんすまん、……」
当たり前の様にしゃべりかけていた雨子様、途中から気がついたのか甲高い例の謎の音に変更する。
するとその小龍、明らかにそんな雨子様に向かって返事をし出した。
相変わらずちーちーと言った感じだったのだが、途中から急に、普通に聞き取れる言葉へと変化していくのだった。
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