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天露の神  作者: ライトさん
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「祐二の敗北」

誰に負けた?


「ところでさ、雨子さん」


 尚も楽しそうに節子と会話し続けている雨子様に、若干気押されながら話しかける祐二。


「む?何なのじゃ?」


 一体この場で何を発言するのかと、ちょっと楽しみな風に見える雨子様。


 そんな雨子様の様子に苦笑しながら祐二は言う。


「先達てこのブレスレットの形にした、龍のなれの果て?を預かったのだけれども…」


 そう言いながら祐二は手に填めたブレスレットを掲げて見せた。そこには綺麗な青い色をしたリングが美しく輝いていた。


「ずっと気を通わせることをやって来たつもりなんだけれども、何だか最近微妙に脈動?するんだよね?」


「む?何じゃと?どれ貸してみるのじゃ…」


 そう言うと雨子様は、祐二の手に有るリングにそっと手を差し伸べた。

その繊細で柔らかな手に触れられると、祐二の胸の内でトクンと鼓動が音を立てる。でもこれは祐二だけの秘密なのだった。


 目当てのリングをするりと祐二の腕から外し、手に持ってみる雨子様。

目を凝らすようにしてそのリングを見つめているのだが、やがてにゆっくりと口を開いた。


「ふむ、こやつそろそろ目を覚ましそうじゃの…」


 そう言いながらリングを掲げる雨子様の、その手元を覗き込みながら節子が言う。


「あらそうなの?だって…、無尽ちゃん?」


 あの堂々とした巨大な青龍たる無尽も、節子に掛かればちゃんづけなのだった。

そのせいか、節子の腕に嵌まっている、どちらかというと青よりも蒼の腕輪が、、心なしかピンクになっている?


 無尽の気持ちを察してか、思わず笑い出しそうになっている雨子様。

だがそれを敢えて口にすることは無く、節子に言うのだった。


「もう一日二日も経てばこやつは目を覚まし居る。そうなれば一旦無尽に預けたいのじゃが良いかの?」


 その問いに節子はにこやかに答える。


「良いかも何も、そうしなくては成らないのでしょう?ならそうしなくては…」


 そう言う節子に少し嬉しそうに言う雨子様。


「まあそれはそうなのじゃが、やはりお母さんの都合を聞かぬ訳にも行くまい?」


 何故という顔をしながら節子が問う。


「あらそうなの?それはまた?」


 すると雨子様、意を得たりと言った顔をしながら答えるのだった。


「それがの、この子…と言って良いのかどうか分からぬのじゃが、こやつが目を覚ました時暫くの間、龍の姿に戻った無尽を側に尽かせてやる必要があるのじゃ。その間お母さんが無防備になってしまうので、出来たら我から余り離れんで欲しい、そう言うことなのじゃよ」


 そう雨子様が言うと、節子はきらりと目を輝かせる。そしてむんずと雨子様の腕を取ると、早くもべったりとひっつき始めるのだった。


「いやその、お母さん?今からで無くて良いのじゃが、その?」


 雨子様が困り切った表情をしながら祐二のことを見つめる。

その様子が余りに真に迫っているので、目をぎょろぎょろさせた挙げ句、明後日の方向を向いてしまう祐二。


「祐二!其方一体どこを向いて居るのじゃ?」


 節子を腕に付属させたまま祐二にしがみつく雨子様。そのまま顔の向いている方へと回り込んでくる。


 これはもう仕方が無いとばかりに答えるのだが…。


「だってさ雨子さん、なんとかしろと言っても僕が母さんにかなうと思う?」


「むぅ!」


 言われて即気が付く雨子様。そのまま頭を抱えて「うんうん」言っているのだった。


「冗談はともかく、多分万一も無いとは思うのだけれども、どこか出掛けるときには雨子さんが付くか、僕が付いていくからそのつもりでね?」


 祐二がそう言って釘を刺していると、頬をぷっくりと膨らませながら節子が言う。


「なぁにそれ?小さな子供じゃ無いんだから?」


 その言葉に対する反論は自分がするよりもと思って、雨子様のことを見る祐二。

勿論雨子様は、あうんの呼吸で言葉を発するのだった。


「お母さんの気持ちは分からんでも無いのじゃが、こと相手が当たり前の人間では無い可能性もあるからして、こればっかりは仕方が無いのじゃよ。この通りじゃ」


 そう言うと雨子様は節子に向かって、丁寧に頭を下げて見せるのだった。


「あん、雨子ちゃんに頭を下げられたらもう…言うこと聞くしか無いじゃ無いのよ?」


 と、それを見ていた祐二。


「ふ~~ん、母さんは彼女の言うことなら聞くんだ…」


すると節子は平然とした顔で言う。


「あのね祐二、良いこと教えて上げる。女親と娘の間柄って他の何物にも代えられない特別なものが有るのよ!」


 そんな話を聞いたことの無い祐二は、本当?と言うような顔をしながら雨子様に問うのだが、残念ながら彼女だって初めての母娘の関係。はて?と言う顔をするばかりで肩を竦めてお仕舞いなのだった。


 尤ももう少し突っ込んで考えれば、母娘とは言っても、嫁姑の関係なのだが。

まだまだ人生経験の浅い祐二には、そこまで頭が回らないのだった。




まあ祐二君、そう言うことも有るのだと、覚えておくのも良いかも?










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