「いたずらっ子はだぁれ?」
お待たせしました
短いですが難産でした
こう言うのって文の長短では無いなあ・・・ほんとそう思う
「なあ雨子ちゃん、ちょっとええか?」
和香様が顔を赤くしながら仏頂面で言う。
凡そ何を言われるのか想像が付いている雨子様は、その顔に何の表情も浮かべずにするりと言う。
「何なのじゃ和香?」
「今、沙喜に言うた内容、えいやってまとめたら確かに雨子ちゃんの言う通りや、言う通りなんやけど、もうちっとなんか言いようあらへん?」
「何をどうせいと言うのじゃ?」
「だからもうちょっとなんて言うか持って回ってやな…」
「じゃからそれが婉曲に過ぎるというのじゃ」
「そうは言うけれどもいくら何でもやな、うちの立場って言うものがやな…」
だがそれに対して雨子様は平然として言い放つ。
「ええい、時間がもったい無いのじゃ、其方一人が赤くなる程度のことで済むのなら、それで良いでは無いか?」
それを聞いた和香様、がばりと立ち上がると目に涙を溜めながら言う。
「い、いくら何でも雨子ちゃんのうちに対するその扱い、酷すぎるんちゃう?」
そう言ったかと思うと和香様、顔を覆いながら「わぁ~~ん」等と言いつつ小和香様の方へと駆けていく。
なのでてっきり小和香様に泣き付くのかと皆が思っていたら、すっと小和香様を通り過ぎて、なんと祐二の胸元に飛び込むのだった。
「わぁ~~ん、祐二君!雨子ちゃんが虐めるぅ~~」
その祐二、まさかのこの事態を想像して居らず、どうしたものかと小和香様の方を見るが、彼女はいやはやと首を横に振るばかり。
小和香様に見放されてしまった祐二、そのまま流れに乗って和香様を抱きしめるなんて言うことも出来ずに、正に硬直して立ち尽くしているのだった。
さてそれを見ていた雨子様、当然のことながら怒髪天を突く勢いで怒り始め、わなわなと身体を震わせて居る。その頭上ではなんと無しに黒雲のような物が見え、え?雷?
「わぁかぁ~~~」
地獄の底から響くような低音でそう言うとつかつかと和香様の所へ歩み寄り、その身をぎゅうむと掴む雨子様。そしてなんとか和香様を祐二から引き離そうとするのだが、和香様も必死になってしがみついていて、祐二の身体を簡単には放さないのだった。
「放すのじゃ和香!」
和香様の後ろに回って必死になって引っ張る雨子様。それに抵抗する和香様。
そんな二柱の神々の有様を見ていた沙喜は、一体何が起こっているのか頭が付いていかずに、目を点にして固まっているのだった。
そんな沙喜に向かって、祐二の肩越しにぺろりと舌を出してみせる和香様。
「え?」
思わずそう口に出して驚いてしまう。
そこに来て沙喜と共にその舌の出るを見ていた小和香様が、やれやれと言った口調で和香様に言うのだった。
「和香様、おふざけはその辺で…」
小和香様にそう言われたのが丁度良い機会と思ったのだろう。
和香様はあっさりと手を放すと、祐二の身体から離れるのだった。
そんな和香様のことを見ながらぷりぷりと怒っている雨子様が言う。
「和香は一体何の了見が有って祐二のことを巻き込むのじゃ?我に文句が有るので有れば我に言えば良いであろ?」
そう言いながら雨子様、少し涙目になっている。
と、それを見た瀬織姫様、とととと走ってくると雨子様の前に立ち、そして和香様に向かうと言うのだった。
「今のは和香様が悪いと思います」
「ええ?」
まさかそう言う形で瀬織姫様が意見してくるとは想像もしていなかった和香様。
一瞬目を剥きながら瀬織姫様のことを見つめ、やがてそっと目を伏せると素直に雨子様に謝るのだった。
「ごめんな雨子ちゃん、ちょっと悪ふざけが過ぎた…」
そう言いながら頭を下げる和香様に、うんうんと頷いて見せる瀬織姫様。
その様子を見ながらぼそりと小さな声で雨子様も言うのだった。
「我も些か和香を軽んじて居った、済まぬ」
そう言うと恐らく照れ臭くなったのだろう、瀬織姫様のことをきゅうっと抱きしめると顔を隠してしまう雨子様。
一方和香様は、はぁっと溜息をつきながらそっと瀬織姫様の頭を撫でる。
そしてようやっと平静を取り戻しつつ有る祐二に向かって言うのだった。
「負うた子に教えられとはこのことやなあ…」
その言葉に苦笑しながら祐二が返答する。
「そんな子供よりもいたずらっ子なのですね?和香様は…」
その言葉に思わずきょとんとしてしまう和香様。
だが周りに居る者達は全てうんうんと頷きながら、口を押さえつつ笑いを漏らすのだった。
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