「がっこ茶っこ」
お待たせしました
本文中にある「がっこ茶っこ」と言うのは、とある地方の風習なのです。
もちろんその地方の方には釈迦に説法とは思うのですが(^^ゞ
なので本来で有れば沙喜や瀬織姫様の話し言葉は、その地方独特のお国言葉となっているはずなのですが
生憎と筆者の能力では全く追っつかず、現在の文体にての物語の展開となっております。
なのでもし地元のかたらいらっしゃるなら、何でしたら脳内にて
翻訳してお読み下さいませ
稲刈りを終えてから後、米作についての全ての作業を終えたところで、次は冬ぞなえに向かうところなのだが、それには今少し時間がある、そんな頃だった。
「郵便でーす!」
いつも来る顔見知りの郵便配達員が、勝手口から声を掛けると、急ぎ中から沙喜が出て来るのだった。
何か水仕事の最中だったと見えて、エプロンで手を拭き拭きの登場だった。
「こんにちは、わざわざこっちに回ってくれたんですね。何だったら玄関先に放り込んで置いてくれたら良いのに」
そう言う沙喜に配達員は手に持った封筒を見せながら言う。
「残念ながらこれ、書留なものですから、そうはいかなくて…。だからこっちに回ったら多分、沙喜さんが居られるかなって思って」
「ああそう言うことだったの、ちょっと待ってね判子とって来るから…。でもその前に少し中にお入りなさいな」
「いやでも…」
そう言う配達員に拝むようにしながら言う沙喜。
「多分判子探すのに暇が掛かると思うのよ。だからがっこ茶っこしといてくれると有り難いのよ」
そう言われた配達員、そこまで言われて沙喜の言葉を無碍にすることも出来ず、中に入って上がり框に腰掛けると、その前に特急で盆に載せた漬け物とお茶が出される。
「ちょっと待っててね」
そうやってがっこ茶っこに配達員を無事招いた沙喜は、判子を探すと称して部屋の奥へと戻っていく。
勿論普段からきちんと部屋の中を片付けている沙喜、判子を探すというのは口実だ。
余り自販機の数とて無いこの辺りのこと、遠く離れた家々を配達して回る配達員に、一時の休息を与えて上げたいと思う、彼女なりの配慮なのだった。
だからと言って余り長い時間居らせても逆に迷惑になるとも思い、凡そ五分ほども経ったろうか、探してきた判子を携えて配達員のところに戻っていくと、何やら明るい笑い声が聞こえてくるのだった。
勝手口に行くとそこには配達員と、楽しそうに話をしている瀬織姫様の姿があるのだった。
「あらあら姫神様、配達員さんのお相手をして下さって居られたのですね?ありがとう御座います」
すると瀬織姫様は照れ臭そうにはにかみながら言う。
「お相手と言うようなことでも無いの。なんて言ったら良いのかしら、沙喜の家にお世話になるようになってから少し経つのだけれど、まだまだ色々な人とお喋りすること、そのこと自体が楽しいの」
そう言う瀬織姫様のことを見ながら配達員が頭を掻き掻き言う。
「いや~~、まさか姫神様にお相手して頂けるなんて、とっても有り難いことです。今日は何か良いことでもあるかも知れません」
そう言って嬉しそうにしている配達員に、瀬織姫様は更に顔を赤らめながら照れているのだった。
「うふふふ、それは良かったわね」
事実この辺り近郊に住む人たちは皆、瀬織姫様のことを幸運の存在として捉えている。
だから配達員のこう言った言い様もまんざらでは無い、沙喜はそう思うのだった。
「ところでお待たせしたわね、はい判子」
そう言うと沙喜は、配達員の差し出す紙にぽんと判子を押して上げる。
その印影をちらりと見て確かめた配達員は、封筒をはいっと手渡すと、空になった皿と湯飲みを載せた盆をそっと押し返し、頭を下げながら言う。
「ごちそうさまでした、沙喜さん」
そして緩んだ顔を引き締めると勝手口から、外の世界へと飛び出していくのだった。
後に残されたのは沙喜と瀬織姫様。
「さてさて、書留だなんて一体どちらからなのでしょうね?」
そうやって差出人のところを見ると、宇気田神社内小和香とだけ記されている。
「はて?確か姫神様が時折文を出して居られるのは和香様と有ったように…」
沙喜の覚えている範囲では、その名に「小」の字は付いていないはずなのだった。
そして時折戻ってくる文も、瀬織姫様宛であって、決して沙喜宛などでは無いのだった。
ところが今回ばかりは沙喜宛となっているのだ、一体どうなっているのだろう?
そんなことを考えながら、ふと瀬織姫様のことを見ると、何ともわくわく顔で待ちきれないと言った表情で、沙喜の手に有る封筒を穴の開くほど見つめている。
「あのう姫神様、もしやこの封筒、宛先を間違えて私の所に来ているのでは無いでしょうか?」
沙喜がそう尋ねると、瀬織姫様は確信を持った風にはっきりと頭を横に振るのだった。
「その差出人は和香様の妹神様でらっしゃいます。あの方に限ってそのような宛先人間違いなどと言うことは考えられません。間違い無く沙喜さんのところに出されたものだと思います」
瀬織姫様はそうきっぱりと言い切るのだった。
彼女にそうまではっきりと言われてしまった沙喜、意を決して封を切ることにする。
すると一通の書状と共に航空券、更にはいくらかのお金が同封されているのだった。
「あらまあ…暫く前に和香様からお電話を頂戴して、姫神様を連れてこちらに来るならいつ頃位なら空いてる?と問われたので、まさか本当に招かれるとは思って居らずに日にちを述べていたのですが…」
そう言うと航空券の日付を瀬織姫様に見せる沙喜。
そして早速文の方へ目を通し始める。
「どうやら最前より姫神様の方から、田笹湖の方で妙な気配がするとお伝えしていた件、姫神様ご自身であちらにお出で頂いて、その上で直接話を伺いたいそうですよ?それに当たって、私に引率して欲しいと…。まあ確かにその頃なら身が空いているとはお話申し上げたのですが、でも本当に私でよろしいのでしょうか?」
すると瀬織姫様、きゅっと沙喜にしがみつきながら言う。
「沙喜、この身にて旅をせねばならないのだとしたら、一人は嫌です。それに一緒に行って貰うとしたら沙喜が良いのです。沙喜以外の者とは行きません」
そう言う瀬織姫様に嬉しい思いと、ほんの少しだけ困った思いが綯い交ぜになる沙喜なのだったが、表れた表情は喜び一色なのだった。
そして更に読み進むと、沙喜は何とも申し訳なさそうな表情になる。
「あらまあ、前回どうして雨子様達、時間の掛かる新幹線でお出でになられたのかと思って居たら、夏休みで航空券が取れなかったのですね」
沙喜がそう言うのだが、その意味が今一良く理解出来ない瀬織姫様、頭をこてんと傾げて言う。
「新幹線というのは私がこちらに戻る時に乗ったあの乗り物のことですよね?」
その通りなので沙喜が頷いて見せると、瀬織姫様は驚いた顔をされるのだった。
「あの乗り物、物凄く早かったのですけれども、もしかして更に早い物があるのですか?」
真顔でそう聞いてくる瀬織姫様に、沙喜はほんの少し苦笑しながら説明するのだった。
「先程私が航空券と申し上げましたように、今度の旅は飛行機に乗ってのものとなります。ですからあっと言う間にあちらに付くことになりますよ?」
「ひこうき?」
「はい、空を飛ぶ乗り物で御座います」
まじまじと沙喜のことを見つめる瀬織姫様。
「もしや人間は何か大きな鳥を使役して居るのですか?」
瀬織姫様のまさかの問いに、束の間呆気にとられた沙喜。
瀬織姫様がこの家に来られてから、早二ヶ月余り。その間人間界のことについて色々と口頭で、或いはテレビやネットを使ってお教えしたりはしていたのだけれども、どうにもお伝えしてきたことに偏りがあるのかも知れない。
そう考えた沙喜は、今後の瀬織姫様の処遇について、少し考えなければならないと反省するのだった。
さてそれはともかく、瀬織姫様に飛行機について伝える為に、沙喜はパソコンのある部屋へと彼女を誘った。
そして種々の飛行機の写真や動画を見せ、近々これに乗るのですよと説明すると、大きく目を見開く瀬織姫様。
その様が余りに可愛らしいので、思わず抱きしめたくなってしまった沙喜なのだが、いくら慣れ親しんできたとは言っても、そうそう気軽に神様を抱きしめることは出来ないと考える。
しかし考えることと思うことは別なこともある。今の場合がそれに当たると言っても良いだろう。
曰く言い難い顔つきをしながら、ついつい熱い眼差しで瀬織姫様のことを見つめてしまう沙喜。勿論、瀬織姫様もそんな沙喜の様子に気が付かない訳が無く。
「どうしたの沙喜?」
と無邪気に問うてくるのだった。
そこで沙喜は大きく深呼吸をすると…、正直に言うことにした。
「姫神様が、余りに、余りにお可愛らしいのでついつい抱きしめてしまいたくなりまして…。申し訳ありません」
沙喜がそう言いながら頭を下げると、瀬織姫様はくすりと笑う。
「沙喜がそうしたいというのであれば、そうして下さっても良いのです。それに私は沙喜に抱きしめて貰えるの大好きですから…」
そう言うと、自ら沙喜の元に飛び込むように抱きついていく瀬織姫様。
沙喜はこの時この姫神様の為なら、どんなことでも出来る、そんな風に思ってしまうのだった。
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