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天露の神  作者: ライトさん
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「執務室」

お待たせ致しました


「ようこそいらっしゃいました」


 丁寧なお辞儀をしながら、そう言って雨子様達を迎えてくれたのは小和香様。

見掛け黙っていれば、本当に良く和香様と似ているはずなのに、小和香様の方が必ずおっとりとしているように見える。


 小和香様の今日の出で立ちは、薄い茶のシャツワンピースに白のトップス、ゆったりとワイドな感じのするパンツスタイルで、柔らかな感じがしてとっても可愛いかった。


 それを見た雨子様、自身の濃い紺の制服と見比べ、眉の隅を少しひくつかせている。

尤もこれは通学スタイルなのだからどうしようも無いことなのだ。


 そんな小和香様の案内に従って、いつも和香様が執務を行っている部屋へと案内される。

 

 神様が一体何の仕事をとも思うのだが、昔から常にとあるルートを通じて、時の政府との間に繋がりがあるらしく、どうしてもその時々、折衝が必要に成ることが有るのだそうだ。


 部屋に入ると和香様は、丁度そんな仕事を行っている真っ最中だった。

ちらりと視線を上げて手で拝む素振りを見せると、直ぐにまた目の前の仕事に没頭する。


 その間雨子様達は小和香様の勧めで近くにあるソファに腰掛け、優雅な手つきで淹れられたお茶をご馳走になるのだった。


 その茶を二口三口啜った所で雨子様が感嘆の声を上げる。


「これはまた美味い茶じゃの?」


 傍らで祐二も大きく頷いて見せる。彼もまた、美味しいお茶には目がないのだった。


 そうやって淹れた茶を褒められた小和香様は、目を細めて嬉しそうにしながら言う。


「これは八重垣様の所の椋爺から頂いた物なのです。お裾分けが御座いますので、後ほど用意致します、なので祐二さん、お持ち帰り下さいね」


 小和香様の話を聞いた祐二は、ふと脳裏に、跳び上がって喜んでいる節子の姿が思い浮かんだ。椋爺、そして節子は、何を隠そうこの小和香様のお茶の師に当たるのだった。


「母が大喜びするのが目に浮かびます、ありがとう御座います小和香さん」


 礼を言う祐二の柔らかな言葉が胸に浸むと、小和香様はほんのり顔を赤らめながら嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。


 二煎目のお茶を小和香様に勧められ、それもまた美味そうに飲み干した雨子様は、つと席を立つと、和香様の隣に行った。


 そして和香様の今書いている書類を覗き込むと、苦笑しながら言う。


「何じゃ和香、其方そんなことまでやって居るのかや?」


 すると唇を尖らせた和香様が言う。


「せやねん、何でうちがこんな事せなあかんねんと思うんやけど、今のこの国の政府言うたら、政教分離やろ?かと言って人間側の神道トップに居はる人に、こないなこと頼むのもちと違うんちゃうか言うて、面倒になりそうなこと皆こっち持って来るんや。なんかもうたまらへんで」


「くふふ、それは何とも大変なことじゃの?じゃが其方がある意味、人の思惑やしがらみと一線画した所に居るからこそ、敢えて頼んで来るのでは無いかの?」


「まあそうやろなあ。折衝しとる中、例えあっちに気に入らんことがあったとしても、ものほんの神さんに直接剣突訳にもいかへんやろからな」


「まあ上手く利用されて居ると言えばされて居る訳じゃの?」


 雨子様のその言葉に、渋い顔をした和香様が言う。


「まあそうなんやろなあ…。でもこうやってうちが入ることで、少しでも平和になるんやったら、これも神様の仕事や思て頑張るしかあらへん」


 そう言いながらも次々と書類を片付けていく和香様のことを見ていた雨子様、ちょいちょいとソファに座っている祐二に手招きをする。


「何です雨子さん?」


 すると雨子様は、近くにやって来た祐二の手首を掴むと、その手を使ってくりくりと和香様の頭を撫でるのだった。


「ふへ?」


 素っ頓狂な声を出しながら驚く和香様。


「な、何してるん?雨子ちゃん?」


 そう問うてくる和香様。一方祐二は手首を掴まれたかと思うと、いきなり和香様の頭を撫でさせられ、今は石のように固まっている。


 そんな一柱と一人の様子を見ながら、おかしそうに笑っている雨子様。


「いやの、和香がように頑張って居るのを見て、褒めてやろうと思ったのじゃ。しかし和香の場合、我が褒めるよりも祐二に褒められた方が効果が有るであろ?ま、そう言うことじゃ」


 雨子様の説明を受けた和香様、顔を真っ赤にしながら頭から湯気を出しつつ、机の上に突っ伏してしまう。


 その様子を見ていた小和香様、側にやって来て和香様のことを見ながらそっと呟く。


「良いな…和香様…」


 ほとんど聞こえない位の小さな声での呟きだったのだが、人間はともかく神様には確りと聞こえる。


 赤い顔のまま、がばりと身を起こした和香様、唐突に立ち上がると、固まっている祐二の手首を掴み、ぐいぐい引っ張って小和香様の頭を撫で始めるのだった。


「ああっ…」


 もちろん小和香様の反応も和香様と似たり寄ったり、盛大に頭から湯気が出ている。

祐二はと言うとますますかちこちになって固まっているのだった。


「祐二も気の毒にの?」


 そんな祐二の有様を見てぽつり言う雨子様。


「雨子ちゃんがそれ言う?」

「雨子様がそれを仰います?」


 真っ赤の顔のまま雨子様に詰め寄り、叫ぶように言う和香様と小和香様なのだった。



いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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