閑話「朝」
今日は短いです
お見舞いやらなんやら、忙しい一日と成ります
ともあれ上げられたことに感謝
昨夜は結局あの後、ニノの手によって敷かれた布団に、三柱と一人頽れるようにパタリと伏し眠ってしまったのだった。
誰がどこに寝るのかというようなことで少しばかり揉めたようなのだが、最終的には雨子様、祐二、和香様、小和香様の順で床についたようだった。
多分かなり疲れていたのだろう、祐二は朝まで一度も目が覚めること無く熟睡した。
そして目を覚まし、うすらと目を開けてみると神様方はまだ眠っているようだった。
ならばと朝風呂に向かう祐二。そそくさと体を洗い、広い湯船に体を浸けてのんびりしていると、少し経った頃に静かな湯音がする。
「?」
ゆっくりと振り返るとそこには小和香様が居て、足先を湯にそっと差し入れているところだった。
彼女はそのままゆっくりと湯の中に滑り込むと、静かにさざ波を立てながら祐二の側にやって来る。
「おはようございます祐二さん」
「おはようございます小和香さん」
そう言う祐二に、小和香様は少し申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げる。
「昨夜は大変なご迷惑をお掛けしてしまいました」
おそらく彼女としては自分自身だけのことだけでは無く、三柱の神様方全員のこととして頭を下げているのだろう。
祐二としては、謝られるほどのことでは無いとは思っていたのだが、それをここで言っても仕方が無いとも思ったので、黙って頷いて見せることにする。
だがそれだけで無く、思うところも有るのでゆっくりと口を開く。
「ねえ小和香さん、僕たち人間はそれが普段のことだから別にそう苦にも成らないのだけれども、神様としては、あのような形で心が揺れたりするのはしんどくは無いのかな?もしかして僕は、あなたたちに期せずして迷惑を掛けていたりはしないのかな?」
祐二の語るのを聞いて居た小和香様、まさか彼からそのようなことを言われるとは思っても見なかったので、つい驚きの表情を見せてしまう。
「祐二さん…」
本当にこの人は。いつも思うのだが何と心優しい人間なのだろう。そう思う小和香様なのだった。
だがそんな重みを彼に任せたままにするわけにも行かないと考え、即座に自分の中に有る思いを告げ始めるのだった。
「あのね祐二さん。確かに時と場合によっては、ああ言った人間特有の感情に振り回されるのは、面倒なことも有るやも知れません。でもある意味、無限にも等しいような時を過ごしてきている私達にとって、ああ言った一時のことは、おそらく程良い刺激なのでは無いでしょうか?少なくとも私はそう思っています」
そう言い終えると小和香様は祐二の目を見つめ、穏やかに微笑んで見せる。
「そして私個人の思いを申し述べるとしましたなら、とっても楽しいのです。もちろん時には苦しくなるような思いも有るには有りますが…」
そう言いながら小和香様は、少し伏し目がちに祐二のことを見つめる。
「…でも、それもまた私には無くては成らないものになりつつ有ります。ですから祐二さん…」
「はい」
そう返事してくれる祐二に嬉しそうに笑みを浮かべる小和香様。
「祐二さんは今のまま、あるがままに居て下さいませんか?」
祐二が彼女の言葉を聞き、その意味をゆっくりと彼の心に溶かし込む間、小和香様は湯の中で幸せそうにくっと伸びをして、これまた違った形で人の身で有ることを楽しむのだった。
心の中にちゃんと言葉を落とし込めたのか、祐二は静かな口調で言う。
「分かりました小和香さん。でも何か有った時には言って下さいね?もちろん何もかもに対応できるかどうかは分かりません。でも、どんな時でも何かしら足掻いて見るつもりです」
そう言ってくれる祐二の思いを嬉しいと感じながら、お陰でまた湧き起こってしまう静かな熱い何かをぐっと飲み込むと、ほんの少しだけ文句を言ってしまう小和香様。
「もう、祐二さんたら、もうもう…」
だがさすがにそんな状態には、以前よりもかなり馴染んできているだけ有って、明るい笑い声を響かせることが出来る小和香様なのだった。
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