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天露の神  作者: ライトさん
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閑話「宮司の決断」

お待たせしました


短くて申し訳ないです。

しかしながら短くはありますが、どう書こうかともの凄く悩んだ回でした(^^ゞ


 一週間に渡る「夏越の大祓」を無事に終え、宇気田神社の神職にある者は皆一様にほっと胸をなで下ろしていた。


 以前ならここまで気を遣うことも無かったのだが、最近は神社に参る人の数が異様に増えているため、その雑踏の整理や、混乱に乗じて良からぬ物が入ることを防ぐためにも、非常に気を遣わなくては成らないのだった。


 通常であれば神社の結界はしっかりと閉じられていて、そのようなことは無いのである。がしかし、この行事は人々に付いた魔を祓うための神事でもある。

 完全に閉じてしまっていては、そう言った魔を負う者達が来ることが出来なくなってしまう。なので出入り口に限ってのことなのだが、大きく解放されているのだった。


 当然、これ幸いと侵入してくる有象無象の物も数多く居て、密かにその多くが祓われ、見込み有ると認められたいくらかの者達は、順次帰依させて小物として採用されるのだった。


 それら全ての諸事雑事が終わり、神社の結界が再び完全に閉じられると、この神社における神職達にとって、ようやっと息を抜ける時が来るのだった。


 そんな彼らの苦労を労うためにも、こういった大きな行事が執り行われた後には、屡々神社内で慰労会が行われるのだった。


 今回の慰労会は、結婚式等、特別な催事などの時に使用する大広間に皆が集められ、これまでに無く盛大に催されるとあって、会が始まる前から皆大盛り上がりなのだった。


 そして慰労会開催のための挨拶を、本神社の宮司である榊氏が音頭を取って行っている。


「今回もまた、これまで以上に大変な人手であったにも拘わらず、何とか最後まで無事大祓を行うことが出来た。これも皆の大いなる精進の賜物かと思う、本当にご苦労であった。ついてはその苦労を労うためにも、今回は全て本社持ちの慰労会となった。心ゆくまで楽しんで欲しい」


 何事も持って回ったことが嫌いな榊は、あっさりと言葉をまとめ、手に持ったコップを掲げると腹の底から響く声で言う。


「では皆さんお疲れ様、そして乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」

 

 乾杯の音頭の後は皆好き勝手に飲み食いを始めるのだが、今回は和香様が掛かりを持つと宣言しただけ有って、普段よりかなり豪華な飲食物が並べられており、お陰でその場は大盛り上がりだった。


 それだけで無く、普段こういった場では決して目にすることの無いような、カラオケセットまでもが持ち込まれている。


 さてそんな中、わいわいと皆で大いに飲食して会は進行していくのだが、そこそこお酒が回り始めるも、残念ながら誰一人としてカラオケの機器に近付いて行く気配が無い。

 流石に皆、いくら何でもカラオケまではと遠慮しているようなのだった。


 そんな様子を、巫女仲間に混じって見ている和香様、誰一人としてカラオケに近寄ろうとしないのを見ながらやきもきしている。


 因みに一緒に並んで飲食している巫女達は、その場に居る和香様のことを、たまに手伝いにやってくる臨時の巫女くらいに思っているのだった。

 もちろん神社の上層部はそうでは無いことを知っていて、遠目に見ながらはらはらしているのだが、それはまた別の話。


「小和香…、誰もカラオケを使おうとせえへんのやけど、どうしたもんやろね?」


 頭を抱えた和香様が、そう小和香様に相談すると、その小和香様は傍らにいる雨子様に水を向ける。


 結果、雨子様が仕方なしとばかりに案を告げるのだった。


「誰でも良いから先鞭を付ければ良いのじゃよ。」


 だがそうは言うものの、その先鞭を付ける者は神社のような階級社会の中だと、誰でも良いというわけには行かないのが現実だった。


「はてどうしたものかの?」


 そう言いながら雨子様は、傍らで頻りとご馳走に舌鼓を打っている祐二のことを見る。


「…?」


 雨子様の視線に気がついた祐二が、何?と言った感じで目を向けて来るが、いくら祐二でも答えを持っていようはずが無かった。

 だがそれでも祐二は、神様方とは違って、自分自身で出来ない時には自然に誰かに頼ろうと考えられるのだった。


 そこで食べていた物をごくりと飲み込むと席を立ち、榊の所に向かうのだった。

すたすたとこの場のトップたる榊の元へ向かう祐二。事情を知らない者達は何者とばかりの視線を向けるが、内情を知っている物は特に構おうとはしない。


「どうしたんだい祐二君?」


 やがてに辿り着いた祐二に、榊が優しい声で問うのだった。

そこで祐二は和香様達が困っていることについて、そっと耳元で告げる。


「あの、どなたもカラオケをやろうとされないものですから、例の試しを試すに試せないと…」


 もちろん榊には和香様の方から直接、今日のこの慰労会の掛かりは全て持つという話と共に、試してみたいことがある旨しっかりと伝えられていた。 


 すると祐二の話を聞いた榊は早速に行動に移すのだった。

矢庭に席を立つと、ゆっくりとした足取りでカラオケ機器の所に向かう。


 宮司の突然の行動に静まりかえる会場。

榊は平然としながらカラオケマイクを手に取ると、朗々とした声で昭和の演歌を歌い始めるのだった。


 一旦はしんとしたものの、直ぐに会場はどっと沸き返る。

まさかあの榊宮司がトップを切ってカラオケを歌い始めるなど、誰も想像していなかったのだった。


 やがて三番まで歌いを終えた榊、にやりと笑みを浮かべながら全員を見回しつつ言う。


「今日は特別に無礼講とする。ところでせっかくの慰労会なのだ、音曲が無いのは寂しいとは思わないか?これからの君たちの活躍に期待する!」

 

 さてそれからである、まさか宮司自ら先鞭を切ってカラオケを歌い、その場を大いに盛り上げるなど、一体誰が想像しただろう?


 それなりの地位にあるものは宮司の顔を立てるためにも、その他の者は元々のお祭り好きの思いが一気に溢れ出て、以降、次から次へと途切れること無く、それこそ奪い合うが如く、皆が歌声を披露し始めるのだった。







いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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