閑話「夢の中へ」
お待たせしてしまいました
なんだかんだとある中やっとこ書き上げました。
明日は親戚の家に行かなくては成らないため、一応お休み宣言です
部屋まで戻って、そっと雨子様の体を下ろした祐二、小さな声で「おやすみ」と言うとその場を離れようとしたのだが、急に引き戻される。
何事と思って見てみると、寝ているはずの雨子様の手が、祐二の腕をしっかりと握っているのだった。
「もしかして狸寝入り?」
そう言って雨子様に問うと、こくりと頷きながら目を開ける雨子様。
「随分正直な狸寝入りだなあ」
祐二が呆れてそう零すと、雨子様は少し頬を膨らませながら言う。
「今日、我はもう十分頑張ったのじゃ。少しくらい労われても良いと思うのじゃがの?」
そう言う雨子様に苦笑しながら祐二が言う。
「だからこそご馳走して貰ったり、ああやってカラオケの場を設けて頂いたりして、十二分に労われていたのじゃ無い?」
祐二がそう言うと、雨子様の頬は更に膨らむ。
「それは確かにそうなのじゃが、そうなのじゃが…。其方の言うように皆に労うて貰うのは嬉しい。しかし違うのじゃ、我は其方に労われたいのじゃ」
最後迄そう言うと、恥ずかしそうに下を向く雨子様。
まあ確かにここしばらくの間ずっと誰かと一緒の時ばかりで、二人だけの時間というのが余り持てないで居た。蛍を見に行ったときなど、僅かな時間ではあるが二人きりの時を持つことが出来たのだが、それだけでは足りないというのが雨子様の言い分だった。
祐二の思うに、見知らぬ他人が多く居る中にずっと居る性なのか、普段よりも余計にストレスを感じているのでは無いだろうか?お陰でちょっとやそっとのことではなかなか解消されないと言うことなのだろう。
「例のメドレー曲とか歌っている時は、随分楽しそうだったのだけれどもなぁ」
祐二が笑いながらそう言うと、それについては同意する雨子様。
「まあ確かにの、あれは楽しいものじゃなとは思うて居った。しかしのそれは実のところ前半までなのじゃ」
「え?前半?それって一体どう言うことなの?」
「うむ、説明せねばならぬの…」
そう言うと雨子様は、布団の上でころりと転がって一方に詰め、出来た空きの部分を手でぽんぽんと叩いてみせる。
「何それ?」
実のところ何が言いたいのか分かっている祐二なのだが、あえて聞いてみせる。
「話をするから、ここに寝転がれというのじゃ」
「え~~、だって狭いよ?」
幸いなことにこの地は、夜とも成ればひやりとした風が通り、薄手ではあるがしっかりと布団を掛けないことには寝冷えするほどだった。だからそう、たとえ間近にひっついたとしてもそう暑くは無い。がしかしそれとは別に、シングルサイズの布団に大人二人はやはり狭い。
祐二のこの狭いという一言に、たちまちにして雨子様は大いにむくれ始める、
その様子を見た祐二は頭を抱えてしまった。そして思うのだった、雨子様に対して本当のことをきちんと言うべきなのでは無いだろうかと。
実際心の中で思っているのは、その布団の広さでは祐二が分別を保つのには、狭すぎると言うことなのだった。
「あのね雨子さん、僕だって男なんだから、その…好きな人に対して自分を抑えるのはその、大変なんだよ?」
その言葉を聞いた雨子様、自分自身は只もう祐二にひっつきたい、甘えたいと思うばかりだったのだが、その更に向こうにあるものについて気が付くのだった。そして祐二が何を感じているのかと言うことに理解が及ぶと、はあっと大きく溜息をつくのだった。
「成るほどの、すまぬ祐二。男と女ではそう言った思いに対する衝動も異なるのじゃな…。本来であれば直ぐにでも、其方の腕の中に飛び込んで行きたくもあるのじゃが、我の立場でそれをやってしもうたら節子に申し訳が立たぬの…」
そう言ってしゅんとしてしまう雨子様に祐二が言う。
「まあ分かったよ、その辺は僕自身が少々自重すれば良いことでもあるのだし、時間限定で良いならお出でよ?」
そう言うと祐二は雨子様の指し示した布団の部分に、どっかと腰を下ろすのだった。
それを見た雨子様、ちょっと見られないくらいに嬉しそうに目を細めると、どんと突き倒す勢いで祐二の胸の中に飛び込むのだった。
「おっとっと…」
雨子様は祐二の首っ玉にしがみつくと嬉しそうに笑い声を上げる。
「くふふ、どうしてなのじゃろうな?自然に笑えてしまうの?我はその、馬鹿にでもなってしもうたのじゃろうか?」
真面目にそんなことを言って、少し心配そうな表情をしている雨子様に、祐二は思わず吹き出してしまう。
「大丈夫だよ、雨子さんは雨子さんだから」
祐二のその答えを聞いた雨子様は呆れながら言う。
「何じゃ祐二、それでは全く答えになっておらんでは無いか?」
「でも良いんだよ、なんて言えばいいのか分からないのだけれども、僕にとってそれはそれで雨子さんらしいって言う感覚なのだから…」
「感覚とな…」
そう言うと雨子様は少し不安そうに祐二のことを見つめる、が、直ぐに頭をそっと横に振ると言うのだった。
「まあよい、量れぬから不安にも成るが、考えてみれば量る必要も無いことなのじゃからな。我は只其方を信じれば良いのじゃ、うん、そうじゃそうじゃ」
一人で悩み、一人で解決したような感があるのだが、それでもなんだか晴れ晴れとした顔になった雨子様。再び幸せそうな顔になると、祐二の胸板に顔をぐりぐりとこすりつけるのだった。
そんな雨子様のことを抱きしめながら祐二が問う。
「それでさっきの話なのだけれども…」
そう言う祐二のことを腕の中から見上げるようにしながら、改めて説明のために口を開く雨子様なのだった。
「うむ、先ほどの説明じゃな。実はあのカラオケで、皆の前ではっちゃけて居った訳なのじゃが…」
「はっちゃけてって…」
そう言いながら祐二は思わず吹き出してしまう。だが雨子様は、そんな祐二のことをちらりと見るだけでそのまま説明を続けるのだった。
「元々我らがこの星で生きるのに、人の祈りを通じて精のエネルギーを得て居ることは、言うまでも無く心得て居るよな?」
「うん、もう今更だけれどもね」
「人が祈り願うことで精というエネルギーは発生するのじゃが、我らはその精を受け取ることで命を長らえてきた。しかし一方通行で我らのみ利益が受ける様な形では長続きしないし、自然と有る形で見ても歪じゃった。じゃから我らは精を受け取る代わりに、人の願いの内の幾ばくかを叶えると言うことで、互いに持ちつ持たれつという形を築き上げてきた訳なのじゃが…」
「うん、それって前に聞いた通りの内容だよね?」
「うむ、そうなのじゃ。しかしの、今回はそれとは少し異なると言うか何と言うか…」
どうにもはっきりとしない雨子様の言いように、僅かにじれったい思いをしながら更に祐二は聞く。
「だから一体何があったの?」
「それがじゃな、我と塔子で先ほど歌って踊ってとやって居ったら、普段の祈りでは有り得ないほど大量の精を得てしもうたのじゃ」
「大量って?」
好奇心一杯の顔で祐二が聞く。
「そうじゃの、下手をすると通常得られる精の量よりも二桁ほど多いかも知れぬの」
「そんなに?」
「うむ、これはここから戻り次第、和香と良く話をしてみなくてはならんの」
そうやって後半殆ど独り言のように呟く雨子様。
確かにこの差は実に大きく、場合によっては些か神々の有り様にすら影響を及ぼし兼ねないものなのだった。
と、そこまで考えていて雨子様ははっと気がつく、未だに祐二の腕の中に居ることを。
思えば最初想定していた以上に、長くその腕の中に居ることになる。
見上げると祐二は、今ほどの雨子様の言葉に気を取られて、熱心に何事か考え続けている。
これ幸いとばかりにその胸に頬を押しつけると、祐二の心臓の鼓動が聞こえてくる。
どくどくどくと正に命を奏でる音。それを聞いていると雨子様は、少し波立っていた自分の心の中が次第に穏やかに、凪いでいくのを感じるのだった。
心地よい、幸せ…。そんな思いで心と体、全てが満たされていく。
と、雨子様はその温もりの中、静かに微睡み、いつしかゆっくりと夢の世界へと滑り込んでいくのだった。
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