閑話「雨子様と祐二」
お読み下さりありがとうございます
前回分なんですが加筆修正しております
ご報告まで
瀬織姫の祠を過ぎれば、村長の家まであっと言う間だった。
未だしっかりと雨が降り続いている中、誰一人傘を差そうとする者も居ないままに、互いに手を握りあったり、抱き合ったりして今日の喜びを今一度確認し合うのだった。
そしてそれも一巡した頃、一旦はと言うことでこの場は解散することにしたようだった。
だが当然というか何というか、今夜は間違いなく宴会になるようだった。
そのことは男達の期待に満ちた嬉しそうな表情から容易に見て取れるし、そんな男性達のことを見る、女性達の生暖かい目から見てもまず間違い無いことだろう。
尤も女性達もその実、楽しみなようではある。
村長宅にて居残り組になっていた女性達と、雨子様に付き添って儀式の場にまで出かけていった沙喜が、顔を綻ばせながら抱き合い、まるで少女のように飛び跳ねて喜びを表しているのだった。
だが沙喜のそんな姿を見ることが出来たのはそこまでで、皆を眺めつつ濡れそぼっている雨子様達の姿を認めると、転がるような勢いでやって来て屋内へと導くのだった、
「申し訳ありません、余りに喜びが大きくついつい…」
そう言って何度も頭を下げながら、雨子様達の居室にてバスタオルなどを渡してくる沙喜。
だが雨子様は逆に気を使いながら、沙喜に言うのだった。
「沙喜よ、何も問題無い、で有るから左様に謝らんでも良いぞ?嘗て我が村で雨を降らした時も似たようなものじゃった。作物を作る者達が如何に真摯な思いでその仕事に挑んで居るか、その現れでもある。それにの、我はそんな風に喜んでくれる其方らを見ていること、それ自体が本当に嬉しいのじゃよ」
そう言うとにっこりと笑みを浮かべながら目を細めた。
祐二はその目の隅に微かに涙が滲んでいるような気がしたのだが、その思いは心中に秘すことにするのだった。
バスタオルを借り受けたお陰でそこそこさっぱりとした雨子様達。
実を言うとあの雨にもかかわらず身体の方は、特別な機能を持った衣装のお陰で、ほとんど濡れずに済んでいる。ただ頭だけはそう言う訳にも行かなかったので、ふわりと乾いたタオルが本当に有り難かった。
勿論きちんと呪を施せば、その頭も濡らすことなく過ごすことも出来たのだが、他の者達全てがびしょ濡れなのに、「自分達だけのうのうというのはちとな」と言う雨子様の思いも有り、そのまま露天に晒していたのだった。
だがそんなこととは知らない沙喜、急ぎ神様達を浴室へと送り出す。
悪戯心で雨子様が、祐二も共にと手を引っ張る。しかし内心興味津々と言った沙喜の視線の有る無しに係わらず、ぶるぶると震え上がって必死になって辞退する祐二なのだった。
そんな祐二のことを呵々大笑しながら、既に子供の姿に戻っている瀬織姫様の手を引いて浴室へと向かう雨子様なのだった。
そう言った雨子様のからかいを受け、ちみっとばかり膨れっ面になる祐二。
それを見ていた沙喜、さすがに少し気の毒になってしまうのだが、掛ける言葉を思いつけない。
それで仕方なしにそっと祐二の肩をぽんぽんと叩き、静かに頷いて見せるのだった。
その何とも曰く言い難い表情をした沙喜に、祐二は思わず笑いを漏らしてしまう。
「沙喜さん、別にそんなに気を使わなくっても良いんですよ?こう言ったからかったりからかわれたりって言うことは、普段からしょっちゅう何ですから…」
祐二本人の口からそう説明されるも、矢張りどうしても気になってしまう沙喜。
そんな沙喜に祐二は更に説明するのだった。
「それにそう言うことが出来るような間柄でないと、この先一緒にやっていくことも出来ないじゃ無いですか?」
そう説明された沙喜は、おずおずとで有るが、胸の内で思って居たことを述べるのだった。
「別に疑っていた訳ではないのですが、祐二さんが将来雨子様の御夫君に成られるというのは、本当のことだったのですね?」
真面目な表情をした沙喜の言葉に、祐二は少しばかり顔を赤くしながら真面目に応えるのだった。
「そうですね、僕は彼女のことが大好きですし、彼女もまた。今の僕に理解出来るのは、あくまで人間の部分位でしかないのだけれども、一生懸命修行して、いずれは神様としての彼女も理解出来たらなって、そう思っています」
祐二の話を聞いた沙喜は感心したように言う。
「凄いですね祐二さん。男女の間柄って、同じ人間同士であったとしてもなかなかに思いや言葉が通じなかったりもするのに、それどころかもっと遥かに高い難易度であるはずなのに、ちゃんと向き合っていこうとして居られるの、大したことだと思います」
そう言って褒めそやす沙喜に、困ったように頭を掻く祐二。
「ただ僕達の場合は以前、有ることがきっかけで直接に互いの心が混じるような経験をしていますから…。その時混じったものって言うのは、残念ながら僕の持っている言葉では説明のしようが無いものなんですが、それでも理解出来たって言うか、あくまで感覚的なものなのかも知れませんが、この人…まあ神様なんですけれどもね、彼女は信頼して自分を預けるに足る存在なんだなって、ね」
そこまで言うと少し考え込み、やがてくすりと笑いながら言う祐二。
「雨子さんってね、あれで結構可愛いんですよ?」
すると背後で息を飲む音がする。一体誰がと思って振り返る祐二。
そこにはバスタオルをしっかと巻いた雨子様が居て、顔をこれ以上ないと思えるくらいに真っ赤にさせているのだった。
「か、髪留めを忘れての…」
どうやら何故今ここに居るのか、と言うことを説明して居るようなのだが、いやそれよりバスタオル姿を突っ込みたくなる祐二。
互いにそれ以上何の言葉も交わさず、髪留めを手にした雨子様は急ぎ浴室へ、残された祐二は顔を真っ赤にしたまま黙りこくるのだった。
そんな二人の様子を目にした沙喜、青春だなあと思うのだけれども、祐二のことはさておき、神様も案外変わらないものなのだなと、内心何故か少しほっとしていることに気がつくのだった。
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