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天露の神  作者: ライトさん
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閑話「祐二の着替え」


昨日気力体力精神力が尽きた状態でアップしていたので、色々とやり残していたところがありました。

今一度色々チェックして加筆修正しております。

なので大分文調が変わっているかもです、ご面倒でなければ読んでやって下さいませ





所用があったお陰で大変遅くなってしまいました

申し訳ありません


時間がなくて文の精査が不十分なので、後でまた少し調べます、が今はこれで・・・


 和気藹々とお喋りに興じながら食堂に移動し、仲間内だけでのこぢんまりとした朝食だったが、それでも大いに楽しく、満たされた時を過ごすことが出来た。


 お腹がくちくなって元気が出たという事で、いよいよ神事の為の準備に入ることになる。


 まず最初は禊ぎ。今日の主役という事で雨子様達に先に禊ぎを勧め、二柱がすっきりとした表情で戻って来たところで、今度は祐二が向かう。


 尤も禊ぎとは言っても、浴室で水のシャワーを浴びると言った簡易のものなのだが、山間の簡易水道から引いている水とあって、目が覚めるように冷たく、鮮烈な経験だった。


 震えながら浴室を出ると、そこにはそれまで着ていたパジャマではなく、洗いざらした風合いの、丁度宿で着るような寝間着が置いてあった。


 用意してくれたのだなと袖を通すと、さらっとした肌触りの良さが有り、それがとても心地好いことに感心してしまう。そして今更ながら、雨子様達も同様の衣類を身に着けていたことを思い出すのだった。


 禊ぎのお陰で、身体が冷え切った状態で部屋に戻った祐二。見ると既に布団は片付けてあり、宇気田神社からの荷物をあれこれ検分していた雨子様が、今や遅しと祐二がやって来るのを待ち構えているのだった。


「結局これを着るんだね?」


 気乗りしなさそうに言う祐二。これを着れば涼しいからと聞いて居るからまだしも、それでも何とも大仰な感じがして、自然気後れてしまうのだった。


「まあこれくらいは我慢するのじゃ、お役目の為ぞ?」


 何となく慰める様にそう言う雨子様。けれどもそう言いつつ、一方でどこか面白がっている様に感じられるのは気のせいなのだろうか?


「分かったよ、守り役だろ?もう…どうとでもして…」


 祐二としてはここまで来たら、後は野となれ山となれと言った思いでそう言ったのだが、

さて一体どう言うことになるのだろう?なんだか妙に不安な思いで一杯になってしまうのだった。


 まずは一番に祐二が着替えるという事で、彼の衣類を手にした雨子様が、傍らで控えている瀬織姫様や沙喜の方を向く。


 彼女達は何か手伝えることが有れば、直ぐに手を貸すつもりでその場に控えているのだった。


 だがそんな二人に対して雨子様が言う。


「これより先、祐二を着替えさせるが故、申し訳ないが二人には暫く退室しては貰えぬか?手伝いが要る時は呼び出すが故」


 そう言う雨子様の言葉に、反対する理由が有る訳でも無く、二人仲良くお喋りをしながら部屋から出て行くのだった。


 さてそれを見送った雨子様、着替えを手に早速に祐二に言葉を掛ける。


「して祐二よ、急ぎこれに着替える訳なのじゃが…」


 それを見て初めて、雨子様に着替えさせられるのだと理解した祐二。はぁっと溜息をつきながら気の乗らない言葉を吐くのだった。


「もしかしてって、もしかしなくても雨子さんが僕の着替えを手伝うのだよね?」


 そう言いながら、なんだか挙動不審に陥ってしまう祐二。


「あの…、着替えくらい自分で…」


 そう言いかけた祐二の前に、どうぞとばかりに雨子様は、狩衣を含めた衣類一式をひょいと差し出す。


「…ん、無理だ…とほほほ」


 観念した祐二を見て、雨子様は静かに笑いを漏らしながら言う。


「くふふ、いずれ我らは夫婦と成り、子を成す仲なのじゃ、恥ずかしがってばかり居らずに少しは我慢するのじゃな」


 すっかりと意気消沈した祐二を見て、思わず苦笑する雨子様。


「そう悄げるでない祐二。我が手ずから手伝うてやろうというのじゃ、少しは喜ばぬか?」


 雨子様の言うことも分からないではない。しかしいきなり好きな女の子にひん剥かれるのだ、それって男の子としての矜持はどうなのよ?すっかり落ち込んだ祐二はぼそりと言う。


「一体、何を喜べば良いと言うんだろう…」


 何ともやるせない思いをぽろりと口に出す祐二。


「ええい、煮え切らぬの?」


 痺れを切らした雨子様が、祐二の腰に巻き付いている寝間着の帯を、力任せにぐいと引っ張る


「あ~~れ~~~」


 何だか妙な声を出してくるくると回る祐二に、呆れ返った様に言う雨子様。


「祐二?そなたは一体何をやっておるのじゃ?我にはさっぱり分からぬぞ?」


 すると祐二はそんな雨子様のことを見つつ、がははと笑いながら言う。


「中学の修学旅行で宿に泊まった時、就寝時寝間着だったんだよ。それで朝、着替える段になって、誰始めるとは無しに皆でこれをやってたんだよ」


 祐二の説明を聞いて、その場の光景を思い描く雨子様なのだが、何とも呆れて言葉に成らない。小うるさい中学の男子生徒達が、集団で揃ってあ~れ~等と言っているところを想像すれば、誰でもそうなるだろう。


「一体何をやって居るのやら、時折そなたらのやることは訳が分からぬは」


 そこで祐二は、その発端となる事柄について説明を試みるのだった。


「僕は時代劇については余り良く知らないのだけれど、元々はこれ、悪代官とかが女性の帯を剥ぎ取る時にやる、お決まりのパロディらしいよ?」


 だがそう言う話を聞いてはいそうですかと分かるほど、簡単な話では無いのだった。

けれどもそう言った裏話があるとなると、俄然好奇心が湧いてくる雨子様なのだった。


「此度の仕事が終わったら、一度その時代劇を見てみねばなる無いな」


 そんなことを小さな声で言っているのだが、祐二としてはその様な時代劇を見ている雨子様をこそ、見て見たいなと思うのだった。


 と、そんなことを考えていた祐二に、突然雨子様が言う。


「其方の後に我も着替えるのじゃが、試しに祐二も我の帯を引いてみるかや?」


 一瞬寝間着姿の雨子様を見つめるも、慌てて首を横に振る祐二。


 だが当の雨子様は実のところ、どうやらやってみたかった様で、何だかしょんぼりしている。女の子はと言うか雨子様は分からないと、思わず頭を振る祐二なのだった。


 さて帯紐を取られた祐二、寝間着な上、帯を取られているので下手をすると前がはだけてしまうのだが、日々同じ家で一緒に暮らしているので、さすがにそれ位では二人とも動じることは無かった。


 屡々節子に怒られることになるのだが、拓也でさえも偶に下着姿らうろうろしているのだから、況んや祐二くらいでは驚くことも無い雨子様。


 だが対する祐二の余裕もそこまでだった。雨子様が何やら紐の付いた手ぬぐいの様な物を手に、至って真面目な顔で祐二に言うのだった。


「狩衣の下はこれに着替えるのじゃぞ?」


「え?何それ?」


 ぎょっとして祐二が聞くと、何を当たり前のことをと言った感じで雨子様が答える。


「何じゃと?知らぬのかや?下帯じゃな、俗に言う褌か?」


 祐二の目がこれ以上ないかと思うくらい見開かれる。


「フ・ン・ド・シ?」


「そうじゃ、何を驚いて居るのじゃ?」


「履かなきゃ駄目?」


「うむ、だめじゃ」


 その言葉を聞いてげっそりとした顔つきになる祐二。


「じゃあ貸して…」


「手伝おうかの?」


 血相を変えてぶるると頭を横に振る祐二。そして褌を受け取ると部屋の隅に行き、雨子様に背を向けて隠れるようにしてそっと履き替えるのだった。


 そしてすっかりと生気の失せた顔で戻ってくると、後はもう雨子様に為されるがまま。手を上げろ下げろ、足を上げろ下げろと、丸で人形の動き宜しく狩衣を身に着けて行くのだった。


 全てを着せ終わり、その出来映えを一歩下がって眺め見る雨子様。


「うむ、なかなかによう似合って居るぞ!」


 そう言いながらにこにこしている雨子様。そこで脇に下がる紐を指しながら祐二に言う。


「最後の仕上げじゃ、神威を出してくれるかの?」


 言われるがままに、「出て」と言って神威を別空間から呼び出し、雨子様に手渡す祐二。

すると雨子様、その鞘に入った神威を持って、先程指差した紐に結わえ始めるのだった。


「これは本来刀で有るが故、帯に差して帯びるというのが正しいのじゃが、生憎とこの狩衣は太刀を佩く様に成って居るからの、取り敢えず太刀と同じように取り付けることにするのじゃ。普段の使い勝手とは些か異なるから手を切らぬ様にの?」


 そう言い終えるのと同時に刀の取り付けが終わった様だった。


「一度抜刀して具合を確かめてみるが良い」


 雨子様の忠告にこくりと頷いた祐二は、緩やかな所作で静かに抜刀し、何度か小さく丁寧に刀を振ると、再びそっと鞘に収めるのだった。


「うん、少し違和感が有るけれども、刀身も鞘も良く馴染んでいるから、これくらいの差違なら何でも無いかな」


「むう、そう見えるの。部屋の中であるが故、其方の取り回しがちと心配じゃったのじゃが、まったく問題無い様であるの。よう鍛えてきたものじゃ」


 そう言うと雨子様はひょいと手を伸ばし、祐二の頭をくりくりと撫でる。


「ねえ雨子さん、そろそろその頭を撫でるのって止めにしない?」


 照れ臭そうにそう言う祐二に、丸で何のことやらと言った表情で雨子様が言う。


「何を言っておるのじゃ、我にとっては其方など、幾つになっても洟垂れ小僧の様なものなのじゃぞ」


「あ、そう?」


 さすがに洟垂れ小僧と言われて腹が立たない訳がない。だがそこでただ当たり前に腹を立てても芸がない。そう思った祐二は、悪戯っぽそうな笑みを浮かべると、隙を狙って雨子様の頬に軽く唇で触れる。


「むぐぅ?」


 忽ち顔を真っ赤に染め上げる雨子様。


「いきなり何をするのじゃ?」


「別に?洟垂れ小僧にこれくらいの悪戯をされたところで、雨子さんなら全然平気でしょう?」


 さすがにこの様な言われ方をするならば、返す言葉も上手く見つけることが出来ない。

だが転んでもただでは起きない雨子様。


「むう、分かったのじゃ、洟垂れ小僧と言うたのは訂正するのじゃ。しかしそうやって意趣返しする辺りが…子供じゃの!」


 と言うなり雨子様もまた隙を突いて祐二の頬に唇をぶつける。お返しを喰らって思わずあっと驚き、顔を赤くする祐二。


 反撃の口付けをまんまと成功させ、してやったりとにまにま笑っていると、部屋の入り口の方から息を飲む音がする。


 ぎぎぎと音がしそうな首で振り返って見ると、瀬織姫様と沙喜が目を丸くしながら二人のことを見つめている。


「仲がよろしいのは良いことで御座いますとも…」


 急ぎ落ち着きを取り戻しつつそう言うと、沙喜はにこにこと笑みを浮かべながら平静を装う。


 だが一方、事の次第をしっかと見られた雨子様達は、二人揃って顔を赤くしながら必死に言い分けようとする。


「違うのじゃ沙喜」

「違うんです…」


 二人揃ってそう声を上げるが、沙喜はただただ、にこにこ顔を続けるのだった。

そんな沙喜に瀬織姫様が問う。


「ねえねえ沙喜、違うって、一体何が違っていると言うの?」


 さすがに安易に答えるには色々と微妙な要素が多いと、答えに窮してしまった沙喜は雨子様に向かって言う。


「申し訳ありませんが、これについてのご説明は、雨子様の方でよしなにお願い致しますね?」


 仕方なしに渋々頷く雨子様。些か調子に乗りすぎてしまったと、今更ながら後悔する羽目になるのだった。


 だがそれはさておき、狩衣に着替え、颯爽と刀を佩いている姿の祐二は、なかなかに格好が良い。


 瀬織姫様だけで無く、沙喜もその出で立ちを見て感心すること頻りなのだった。


「格好良いです祐二さん!」


 そう言う瀬織姫の言葉に相好を崩す雨子様。その流れで先程の問いは忘れて貰えるかと思って居たのだが、どうもそうでは無い様だった。


「それで雨子様、先程の違うというのは…」


 と、問うて来る瀬織姫様に雨子様はげっそりとしながら言う。


「あれは単純に祐二とじゃれ逢うて居っただけなのじゃ、そう言うことにして置いてたもう」


 そう言う雨子様に、何となくでは有るが空気を読んで、それ以上聞いてはいけないと思った瀬織姫様、うんうんと頷くと尋ねることを止めにするのだった。


 こういうところ、実は瀬織姫こそが一番大人なのかも知れない、内心そんなことを思う沙喜なのだった。


 さてそうやって些かダメージを受けるようなお喋りをしながらも、雨子様は自分の荷物を解き、儀式の為の衣装を取り出していた。


「あのう、雨子様?中に入っているものと荷物の大きさが釣り合わないのですが…」


 訝しげな顔をしながら雨子様に問う沙喜。


 雨子様が携えてきたのは小さなボストンバッグの様な鞄。そこから衣装を取り出しているのだが、衣装だけなら未だ良い。


 だが履き物やら何やら、末に神鈴まで出て来るに至って、明らかに量が多すぎるのだった。


「くふふ、これは鞄に見せかけて、一部別空間に繋がって居るのじゃ。今回の接続先は我の社の衣装箱じゃな。そこに在るものが我の呼びかけに応じて、この中に転移してくる様になって居るのじゃ。尤も転移させるにしても重量によっては、かなり力を遣う故、無闇と簡単に使う訳にはいかんのじゃがな」


 すると傍らで話を聞いていた瀬織姫様が静かに聞いてくる。


「それを使って行き来したりはしないのですか?」


「神変すればの。実際、瀬織姫は少し種類は異なるが、同様なもので和香のところに顔出ししたではないか?」


 すると瀬織姫様はそう言えばそうだと自ら納得する。

だがここに来て雨子様の以前の説明を思い出すのだった。


「ああ、それでは雨子様は駄目なのですねえ…」


「うむ、そう言うことなのじゃよな」


 そこまでの会話があったところで、沙喜が言いにくそうに祐二に言う。


「すいません祐二さん、そろそろ雨子様にお着替え頂こうと思うのですが…」


 一瞬祐二には、沙喜が何を言っているのか分からなかった。

だが雨子様がにっと白い歯を見せて笑った途端に理解するのだった。そして脱兎の如く部屋の外に逃げ出していく。


 それを見送りながら沙喜は雨子様に言うのだった。


「本当に良い方ですね?」


 沙喜に祐二のことを褒められた雨子様、お陰でこの後終始ご機嫌なのだった。




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この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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