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天露の神  作者: ライトさん
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雨子様の憂い二

蝋梅の咲いているのを見つけました。梅とは付いているのだけれども梅の種ではないそうな。

とても良い香りがするので香りで見つけることが屡々

 夕食を終えて部屋に戻ってきた僕は、次に何の本を読むかなと本棚をあさっていた。

しばらく立ってそこへパジャマに着替えた雨子様が戻ってきた。


 夕食の後、しばらく葉子ねえとだべった後、そのまま風呂に行っていたらしい。何だか随分ほっこり感があるのだけれども何故?


 僕の表情にその質問を読み取ったのか雨子様の方から話してくれた。


「葉子と一緒に風呂に入ってきたのじゃ、大儀そうじゃったから頭を洗ってやったのよ。時に腹に触れたら子が動きおった。可愛がってやるが故、元気に生まれて来いよと諭したら、ポンポコ蹴ってきおったよ」


 そう言う雨子様の表情は本当に穏やかで嬉しそうだった。

だがその雰囲気が矢庭に一変する。


「何かあったのですか雨子様?」


「ふむ、今何かがあった訳では無いのじゃがな」


そう言うと雨子様は何とも思わしげな表情をした。


「今日我は、簡単なじゅを施し言葉を心に刻みつけることで一人の女に掛かっている呪い(まじない)を解いた訳なのじゃが、病院とやらゆうたかの?あの場所」


「ええ、そうです」


「あの場所には未だ欠けた部分が多く、呪いにも成り切れて居らん様な式が数多くあったのよ」


「げっ!」


「正にそうよの、我もそのげっ!の状態なのじゃ」


「大丈夫なんですかそれって?」


葉子ねえが出産する場所だけあって余計に気になってしまう。


「うむ、未だ式にも成って居らん未熟な物ばかりじゃったから、我が払うことで皆雲散霧消し居ったからそれは良いのじゃが…」


「良かった」


しかし雨子様の表情は未だ晴れなかった。


「雨子様?」


「そなたらは感じておらんのかもしれんのじゃが、人の住まうこの世の中、そう言った欠けた式が多すぎるのじゃ」


「多すぎる?」


「むう、本来そう言った未成熟な式は経時とともに淡雪のように消え去っていく物なのじゃが、何分にも人が多すぎるのよ。故に消え去るのが間におうておらん」


「間に合わないとまずいのですか?」


「そこなのじゃ、普通であれば欠けた式がいくら存在しようと問題にはならぬ。じゃがの今の状況はあまりに欠けた式が多く、密が高すぎるのじゃ」


穏やかで無い雨子様の発言に背筋に冷たい物が走る。


「これだけ多くの欠けた式がひしめき合って居ると、それぞれが重なりおうて居る内に何かの拍子に式の欠けが埋められ、全くの呪いに変質する可能性も生まれてくるのじゃ」


僕は問題の大きさを想像しきれず、ただじっと雨子様が言葉を継ぐのを待った。


「大方の式は完成して呪いになったとて意味が通じん物じゃから問題ない。じゃが先達ての女に付着していたような呪いとなると、明らかに人の生きる道を妨げて居る。これは大いに問題じゃ」


「そう言う問題って昔は無かったのですか?」


「まあ、一つにはこれほどの密度で人が住まうところが少なかったと言うこともあるし、また人々が多様で明確な思考を行い、更には発散すると言うことも少なかった。加えて言うなら概念の規格化というか、共通化されると言うことも余りなかったからの」


「概念の共通化?」


「そうじゃ、人はどうやって物を考える?」


「えっとえっと、言葉で人は思考する…で良いのかな?」


「うむ、正解じゃ」


そう言うと雨子様は僕のところにやってくるなり、ぐりぐりと頭を撫で付けた。


「痛い痛い雨子様、撫でてくれるのは良いけれどもグーで撫でるのはよして下さい」


「おお、すまぬの」


そう言いながら雨子様は笑っている。


「かつては同じ日本語とは言ってもそれぞれに方言があり、はたまたその意味するところも皆微妙に異なって居って、精密な意味で同じ式を形成することはなかなか無かった。じゃが言語を共通化し、更にはネットのような物で一般化を推し進めると、かつてはばらばらだった部品が今はすっかりと画一化されてしまい、ほれなんと言ったかの?れ・れ…」


僕はとあるおもちゃを思い浮かべた。


「レルブロックですか?」


「そうじゃ、そのレルブロックのように画一化されたお陰で、ぎゅうぎゅう押しつけ合うと偶然にも部品が当てはまり合うことがあり得るようになってきたのじゃ」


「何だかやっかいだなあ」


「全くもってその通りじゃの」


「それでどうなさるおつもりなんですか?」


「うむ、本来この様に些末な念の塊のような物は、その地域に根ざした神の施す呪、あるいは呪を施した札のような物で消し去って居るのじゃが、どうもそれが上手く機能して居らん様な節がある」


「なんと、神様はそんなこともされているのですか?」


そう言うと雨子様は苦笑した。


「残念ながら我のような卑小な神は、そのような力は持ち合わせてはおらんがの」


「雨子様…」


「別に慰めてなんぞ貰わぬで良いぞ?我は我であるからの」


「ではこのあたりの神社だとどこなんだろうなあ」


「確か宇気田神社が在ったのではないかの」


「ああ、あの大きいところかあ」


「我と違って多くの信仰を集めて居る強き神じゃ。そこに行けばおそらく何か分かるじゃろう」


「いずれにしても明日ってことになりますね?」


「うむ、今日は色々あって疲れたの。正に精も根も尽き果てたという奴じゃ」


「雨子様頑張りましたものね」


「じゃな」


そう言うと雨子様は布団を広げ、僕のベッドの真横まで寄せた。


「雨子様?」


「消費した分を補わねば持たぬ。ならば少しでも近くに居った方が効率的というものじゃ」


「はぁ…」


雨子様は僕の気の抜けた返事を聞くと、さっさと布団に寝っ転がった。


「早う寝ぬか?」


「え~~?未だ宵の口ですよ?」


「そなたがちゃんと寝てくれた方が質良く精を貰えるのじゃ。おそらく雑念がない分良いのじゃと思う。じゃから早う寝るが良い」


仕方なく僕も眠ることにする。


「雨子様?」


「なんじゃ祐二?」


「お休みなさい」


「むぅ、お休みじゃの…」



雨子様と葉子はとても仲よさそう

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