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天露の神  作者: ライトさん
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閑話「雨乞い十一」

 大変遅くなりました


短いです、短いですがその短さに比例すること無く、苦心惨憺。

お楽しみ下さい


 さて多少の珍事は有ったものの、達彦の信用を勝ち取ることが出来た雨子様達一行は、彼の車に乗せて貰うと、無事鮒川駅を離れることが出来た。


 しかし些か時間を取ってしまったおかげで、日はすっかりと沈んでしまい、いつしか夜の帳がゆっくりと降りて来るのだった。


 だがそう言う悠長なことを言っていられるのも初めのうちで、山間の隘路に入って行くと、山陰に隠れてたちまち真っ暗に成って行く。


 だがさすがに地元の道を走るとあって、周りに全く明かりの無い路を、少なくともかなりの速度で飛ばすのだった。


 ほとんど真っ暗と言っても良いような道を、こんな速度で走っても大丈夫なのかと、密かに危惧し、思わず口に出てしまった祐二。

 がしかし、相手が車で有れば互いのヘッドライトの光芒があるし、そもそも人はこんな時間に出歩かないと、達也は笑いながら言うのだった。


 事実それから半時ほど走るのだが、一台もすれ違う車は無かったし、ましてや歩く人影など全く無かった。


 だがそんな夜道なのであるが、結構な頻度で何やら光るものが有る。


 そこで祐二が「あれは何?」と聞くと。達彦は珍しくも無いと言った感じで、平然として言うのだった、


「ああ、あれはね、狐や狸と言った獣の類いですよ。猪のこともあるし、たまに鹿なんかも混じっているなあ」


 それを聞いた祐二、根っこが都会っ子なことも有って、なんだか急に目を輝かせたかと思うと、無我夢中になって窓に顔を押しつけ、外の景色を見始めたりもする。


 ところが雨子様はおろか、これまで暇さえあれば必ずと言って良いほど、列車の車窓から、外を眺めていた瀬織姫までもが全くの無関心。


 なんだか自分一人がまるで子供の如く振る舞っていることに、何とは無しに気まずさを感じてしまった祐二。


「雨子様はともかくとして、あの好奇心の塊みたいな瀬織姫様が、ぜんぜん無関心でいるなんて…」


 そうぼやくように言葉を口にしていると、それを聞いていた雨子様が笑いながら言う。


「何を不満げな顔をしておるかと思うたら、その様なことを思うて居ったのかや?」


 普段少し大人びているところが多い祐二の、思わぬ様子に、雨子様はどうしようも無く嬉しそうに笑う。


「くふふふ、何ともういの?」


 そう言うと雨子様は、祐二の頭に手を伸ばして、くりくりとしきりに撫でようとする。

それを嫌がって祐二が避けようとするのだが、狭い車内のこと、どうにも逃げようも無く、とうとう諦めて、されるがままに撫でられることになるのだった。


 そんな様子に瀬織姫様はなんとも羨ましそう。

だが運転中の達彦はそれどころでは無いのだった。


 痩せても枯れても相手は神様。姫神様、姫神様と、確かに童女のような女神様ではあったが、そこは神様と人。明確な区分けを持ってお付き合いしてきていた。それだけにあたかも丸で人同士か、もしくは正に恋人同士のような関係の守人で有る祐二と、雨子様の様子を見て、実は肝を潰しているのであった。


 だが言っても相手の内の一人は神様で、その神様が自らの意思で、人で有る祐二と相対しているのであるから、何も言える訳が無いし、言えようはずも無いのだった。


 そしてこの事はおそらく誰にも言えないなと思う達彦。一人でこの秘密を抱えなくては成らないのかと、少し気が重くなってしまう。


 勿論雨子様達の立ち振る舞いは、今日のこの限りでは無く、翌日以降も何ら変わることはないのだった。だから達彦のこの思いも、ある意味杞憂なので有るが、その様なことは今の彼にとって想像しようも無いのだった。


 雨子様達に聞こえては拙いと、努めて抑えながらはぁっと重い溜息を吐く達彦。

そう言えば同じような状況に置かれた者の話が、何処かの神話か何かで有ったなと思うのだが、何の話だったろう?


「王様の耳はロバの耳」


 思い出した達彦は小さくそう呟く。

残念ながらか、幸いなことなのか、その言葉は雨子様や祐二の耳に届くことは無かった。


 だがその二人の仲睦まじき様を見ていた瀬織姫の耳には、何やら意味ありげな言葉として聞こえていたのだった。


「ねえねえ達彦、その王様の…ってなあに?何のこと?聞いても良いのかな?」


 運転中の達彦の下、後ろの座席から身を乗り出すようにして、そう聞いてくる瀬織姫様。


 しまったと思うも覆水盆に返らず、目をきらきらとさせて好奇心一杯の瀬織姫様のことは、どうやっても止められる物では無いと、既に良く知っている達彦。これはもう止む無しと、先程の物とはまた違った溜息を吐くことになる。


「聞きたいですか?」


 恐る恐るそう言う達彦に、うんうんと大きく頭を振りながら、今か今かと身を揺する瀬織姫様。こうなるともう話さないという選択肢は無くなるのだった。


 暗闇の中、山間の細道を車を駆りながら、見目麗しくも可愛い幼神にせがまれ、話すのがアラビアンナイト。


 気がつけば雨子様や祐二までもが耳を澄まし、静かになって、彼の語る物語を聞いているのだった。




いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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