閑話「雨乞い三」
ちょこっと短いですが、今日はこの辺で……
ところがである、雨子様達の帰宅に従って同道しようとしていた瀬織姫に、いきなり和香様から待ったが掛かるのだった。
「待った待った、待ってんか雨子ちゃん」
そうやって声を掛けられた雨子様、一体何事と振り返ってみれば、あーだこーだと小和香様に指示をしながら泡食っている和香様がいた。
「はて、一体何が有ったというのじゃ?」
何故に呼び止められたのか、とんと見当のつかない雨子様は、首を傾げながらそう和香様に問うのだった。
すると指図を受けた小和香様が、物凄い勢いで部屋から飛び出していくのを尻目に、和香様が大苦笑をしながら言うのだった。
「ごめんごめん、うっかりしとったわ。そこの瀬織姫が思いっきり当たり前に居ったもんやから、すっかりと見逃し取った。なあ瀬織姫、いくら何でもその格好で街中には出かけられへんで?」
一体何をと思って互いに目を見合わせる雨子様と祐二。そしてその次に瀬織姫様を見るなり二人して言う。
「「あぁ~~」」
宇気田神社に来ることも多く、余りに和香様や小和香様の姿で見慣れ過ぎていたせいか、瀬織姫様が神様衣装のままであることを、二人揃ってすっかりと見逃していた。
可愛い女童姿でもあるので、百歩譲ってコスプレとしてでもいけないかと、一瞬考えはした祐二なのだったが、屋外の暑さを思い即時考えを却下した。
「やれ、仕方の無いことじゃな?」
瀬織姫が祐二の家に行ってみたいと言いさえしなければ、この様なことで足踏みすることも無かったのにと、思わないでも無かった雨子様ではあるが、なべて雨子様は子供に優しいので、それを口にすることは無いのだった。
その瀬織姫様、どうやら自分の衣装姿で迷惑を掛けていると気付いたらしい、大いに恐縮しながら何度も周りの者に頭を下げている。
そうこうする内に、手に何やら衣装を持った小和香様が駆け足で戻ってきた。
「瀬織姫様こちらへ」
そう言うと瀬織姫様を引き連れて別室へと急ぎ去って行く。
その様を何となく呆気にとられながら見送っている一柱と一人。
二人とも何も言いはしなかったのだが、そこはちゃんと和香様が説明してくれるのだった。
「ああ、あれな?うちんところは神社だけやのうて、写真館なんかもしとるやんか?そこに置いて有る衣装やねん。それだけやあらへんで、祝詞上げてる間に粗相する子かって居るから、着替えを幾つも置いておかんとあかへんねん」
「成るほどの、今言うて直ぐに子供の衣装が出てくるところを見て、一体何をやっておるのかと勘ぐってしもうたの、いやすまぬ」
「ちょっと待ってんか?雨子ちゃんの頭ん中では、うちらがなんや怪しいことに、手を染めてることにでも成っとったんかな?」
和香様にそう突っ込みを入れられた雨子様、目を泳がせながら言い分ける。
「い、いや、その様なつもりは全く無いのじゃがの」
「なんやほんまかいな?なんか知らんけど妖しいなあ、まあええけどな…」
二柱の神々がそう言い合っている間にも、早くも着替え終わった瀬織姫が部屋に戻ってきた。
涼しげなTシャツに膝丈のズボン、加えて可愛らしいバケットハットと言う出で立ち。
「うわ、なんや偉うかわいなってきたんやなあ?」
そうやって褒める和香様の言葉に、瀬織姫様は顔をほんのりと染めている。
「小和香、ええの見つけてきたなあ?」
そう言って小和香様のことを褒める和香様。
「それが和香様、先達て、子供ファッションブランドのエイムとのコラボが御座いましたでしょう?その時の物が一揃い、そのままこちらの写真館に置かれていたので御座います」
「それは今のこのことを考えたら渡りに舟やったなあ」」
「はい、他にもいくつか御座いましたので、こちらのリュックに入れてきております」
見ると、可愛らしい意匠の子供用リュックが小和香様の手に有った。
それを見た雨子様は手早く引っ手繰ると和香様に言う。
「ならばこれは我が預かっていく」
雨子様はそう言うなり、瀬織姫の手を取りながら祐二に言うのだった。
「思わぬ所で時間を食うてしもうたのじゃ、疾く行くぞ?」
そして足早に部屋から出て行くのを、慌てて追いかけながら祐二は和香様に向かってぺこりと頭を下げる。
そんな祐二に向かって和香様は、祐二だけに聞こえるように言葉を掛けるのだった。
「雨子ちゃんにはああ言うたけど、祐二君、雨子ちゃんのこと宜しゅうにな?」
そこで声に出して返すと、おそらく雨子様に知られてしまう。だから祐二は笑みを答えに変え、和香様に向かって手を振りながら部屋から出て行くのだった。
見送る和香様は、笑いながら小和香様に言うのだった。
「ほんまにあの子はええ子やなあ」
和香様同様に、祐二達のことを見送っていた小和香様も、大きく頭を振りながら同意する。
「本当で御座いますよねえ」
ぷっくり頬を膨らましながら和香様が言う。
「あんなええ子、他に落ちとらへんやろうか?」
和香様の言いようが可笑しく、小和香様は口元を隠しながら笑ってしまう。
「ほんま雨子ちゃんだけ狡いわ…」
「本当に、仰るとおりで御座いますよ…」
そう言いながらなんとはなしに寂しげになる小和香様。
二柱はその後揃って、大きな、大きな溜息をつくのだった。
いいね大歓迎!
この下にある☆による評価も一杯下さいませ
ブックマークもどうかよろしくお願いします
そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き
楽しんでもらえたらなと思っております
そう願っています^^




